旅人、覚書。
11月13日、夜21時前。
東京国際映画祭では、チケットをとりそこねた上に(注1)、
登場人物2人のみ、長めのナレーション入り、93分、
と聞いては、
果たして、場が持つんか?
観に行ったもんか、どうか?などと・・・。
渋谷・ユーロスペースの公開終了、ぎりぎりまで悩んだのだが、
どんな賛否両論なんだ?と、その噂をずっと、気にかけていて、
結局レイトショー最終日に、しっかり足を運んでしまった、ある映画。
観ないで批判するよりは・・・との心境も、作用しての鑑賞、だった。
松村浩行監督の、「TOCHKA(トーチカ)」。
荒れる海、風の音。
今はもう使われぬ、コンクリートのトーチカ2つ。
古い写真機を持った、表情の固い女性と、
大きめの旅行鞄を持った、コートの中年男性が、いるっきり。
二人が、殆ど憂い顔で、互いのある身の上話を、する。
やがて日暮れ時、一人が道を帰り、もう一人は残る。
そして、朝・・・。
本当に、それだけの、
静かなる、寂しき風景が続く、映画。
だが、不思議にも、人が言うほどに、退屈はしなかった。
むしろ、主役人物の、ある過去と決意、ある怯えの心情を、
途中からなんとなく、察せられつつも、
監視カメラのごとく、半強制的に、
じいっと、見つめ続けさせられる、
その、己が観察行為自体を、じっくりと味わっている、
という感じに、だんだん、なっていったのだった・・・。
小生自身の、理性と裏返しの心理を、ひっぺがされているような、
そんな気分にすら、なってくる。
そういう感じの、観察キャメラ状態を、要求される映画を、
昔、吉祥寺のバウスシアターで、観たなあ、と。
そう、園子温監督の、「部屋 THE ROOM」(注3 )。
これは、いわばあれの、21世紀版なのだ。
一言で云えば、
主演俳優・菅田俊(注2)が長年体現してきた、
ハードボイルド・ライバル役の、なれの果てを、
少し早めに観てしまった、というような印象だった。
かつて「う、後ろに回るな!」とのたもうておられた、
あの恐怖を覚えている、老いたるゴルゴ13、というような。
だからこそ、ゆきずりの、見知らぬ若い女性(「犬猫」藤田陽子)に、
ああいう話を、あえて、語っておきたかったんだろう、と解釈している・・・。
そして彼女は、なんとなくだが、
遅まきに、その思いを、悟ったのだろう、と。
哀しき話。
何も知らぬだろう、犬がいるのが、
一層、わびしさを、募らせる・・・。
車の兄弟は、アクセント、かな。
というような風に、あれこれと、
複雑な心境には、なったが。
秋から冬へ、季節の変わり目には、合っていた映画かも。
やっぱり、観ておいて、結果的には良かった、
と、とりあえずは思っておこう。
以上。
注1:
買う時期が来たときは、毎年こうなので、
もう、投げている・・・。
注2:
TVの仮面ライダー・スペシャルで、主役ライダー・ZX(ゼクロス)役の後、
「ブレイクアウト 行き止まりの挽歌」の殺し屋、
アクション系のVシネマ(レンタル向け)等で、
どすの効いた、悪役専門に転じて、ブレイク。
佐々木浩久監督の「実録外伝 ゾンビ極道」、という珍作にも、出演す。
高橋亨監督の、「極道忍法帖」にも・・・。
注3:
1993年公開。麿赤児・洞口依子出演。
故意か偶然か、これも又、93分。ただし全篇モノクロ。
ドラマチックな要素を、あえて排し、
主役の2人を、観客にじ~っと見せるべく?大胆なる手法を採用。
カンヌで上映禁止、ベルリンの映画祭で乱闘!等、
賛否両論だった、と当時から報じられた。
今年はシネマヴェ-ラの、<洞口依子映画祭>にても、上映されていた。
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- 2009/11/15(日) 01:34:47|
- 劇場用映画
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