主水日記。
初日舞台挨拶つきの鑑賞は、しばらくぶりである。
渋谷ユーロスペースにて、レイトショー公開中の、
山岡大祐監督の劇場デビュー作、
「ロストガール」は・・・
ずばり、えぐい。
痛い。哀しい。
そして可笑しい。
ある食中毒?の件がきっかけで、
その後、過食症になったままの、女性コック。
(「愛のむきだし」子連れ妻・渡辺真起子)
同じくコックである、夫。
(「ばかのハコ船」赤汁売り・山本浩司)
夫の、かいがいしいまでの世話にもかかわらず、
妻はスナック隠し食い、
夕食の料理も、受け付けなくなっている。
本人の治療意思が、どうも弱いようで、
夫婦の心理状況は、今やドン詰まりに。
料理人としての、互いのプライドが高すぎるのが、
この状況では、かえってアダになっている。
観ていて、気の毒なほど。
これはかなり、シビアだ・・・。
妻コックは、職場本格復帰を強く望みながらも、
店を預かる男性コック仲間(またまた登板、石川謙)は、
冷静なる判断に反対により、果たせずにいる。
夫や、料理店のスタッフ、にわか友人の女性漫画家(田辺愛美)ら、
周囲の人々に、日頃から甘えきり、過度に依存しているのに、
言い過ぎを注意されると、すぐに当たり散らす、カンシャク持ち。
彼らに対しての、わがままが目に余る、困った御婦人。
折角、気遣いしてくれる彼らを、
毎度毎度、ブチ切らせてしまう・・・。あ~あ。
仮に過食症でなくっても、この女性は何かにつけて、
多分いずれは、こういう態度に、なっていたことだろう。
男女ともに、世間にはよく居るタイプで、
小生も、耳が痛い・・・。
(半ば、自省がてらも?の声)
かくて、こじれきった人間関係の、どうしようもない有様と成り行きが、
あけすけに、克明に、描かれてゆく。
自主映画で、<ダメ人間>キャラ達のやりとりを、
グロくかつコミカルに、描きこなしてきた山岡監督だけあって、
そこらは、お手のもの。
なにしろ、こういう話だから、
食通の人には、これはちと、つらい眺めかも・・・?と。
もっとも、観ているこちとらは、
最近、牡蠣(カキ)料理とか、食べてなかったもので。
「あ、あの料理、食いてえ~!」とか、
「ああ、もったいない!」とかが、内心、連発状態で・・・。
そしていつしか、観ているだけで、
だんだん満腹に、なってくるのだった・・・。
何ともえぐい、痛すぎる、夫婦のぶち切れ合戦を、
得意の<長回し・観察強要>システムでもって、
しつこ~く引っ張って描く、山岡監督。
夫婦の疾走シーンなども、皆、長廻しを多用。
こちらでは、それらの人物と光景を、
ただ、じっと見つめ続けているしか、なくなってくる。
それらの、ぶち切れ合戦の延長上では、
時として、夫婦の2人、ないしは友人らと3人で、
激しい取っ組み合い、あるいは、
サンドイッチ状態でのつかみあいが、始まったりもする。
傍(はた)からみると、それらの人物のもみくちゃな様が、
半ばドタバタめいて見え、時として笑いをも誘う。
各回、直前からの場面は、ドラマ自体とスムーズに連なっており、
実に面白い、眺めになっている・・・。
場内、大いにウケる。
(というか、監督が一番、そういうのを眺めたいんだな・・・
上映後トークでも、言ってたし・・・
その視点は確かにあって、ブレてないよな、の声)
また、人物達の移動の最中に、男性が突如、
ドラマ上、何ら必然性もないのに、おどけてみせる場面も、あったりする。
こういう、人物の動きを、じっと眺めさせられるが故の、
面白さが出てくるのが、いい。
実際、場内にても、随所で笑いが起こっていた。
(あそこらだけ、他作品でダメ男役やってる時の、
山本さん風だな・・・の声)
こうした筋だから、決して、全面的ハッピーエンドとはいかないのだが、
筋の展開自体から、はみだすような、
彼らのキャラクター、動きと勢い、ユーモラスな味わいなどには、
捨てがたい魅力があるのも、事実。
終盤も又、皮肉なユーモアを含みながらも、
不思議に明るい感じで、いい。
とりあえず、それで当分、やってみれば?というもので、
あの場合は、まあ納得かな、と。
と、いうわけで。
美食も、甘えも、どうぞほどほどに、
という人生教訓と、心得ておこう・・・と。
以上。
スポンサーサイト
- 2009/02/15(日) 01:26:46|
- 劇場用映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0