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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

ビーグル警部の迎春

主水日記。


結局、年末年始は生放送やドラマスペシャル(以下SP)が目白押し、特に時代劇が各局ラッシュなのでいやでもそっちに目が向く。

以前恒例だった「ザ・ベストテン」SPが無くて金八先生SPなのが少し不満だったのだが・・・。あれはエンタメじゃなくて<教育>番組だからニュアンスが大分違うのだ。

日テレ系の「女王の教室」?
秋ごろ賛否両論で噂になってるんでSPだけチェックしたけれど、先生があまりにもお説教くさい。
子供達の叫び、嫌そうな表情。ああいうのは長時間観たくない。気分が悪くなる。
ただ子役達には演技の勉強になるんだろうなあ、と。
(天海祐希は「必殺!三味線屋勇次」のほうがいいです。できれば仕事人側を演じてほしかったけれど・・・。)


日テレ系「河井継之助 駆け抜けた蒼竜」は東北・長岡藩が舞台のやや複雑な幕末異聞ものだが、かなり見応えがあった。
昔、大河ドラマで「花神」(かしん。幕末偉人達は明治開花のはなさかじいさん、位の意味)を観ていたのと、高校時代に学校の個人課題がらみで「峠」を読んでいたのが幸いした。

「花神」では河井役が高橋英樹だった。豪快かつ大胆な印象があった。それが今回は十八代中村勘三郎。(松竹京都映画だから、まあ割と自然な流れ、というべきでしょうか。)
河井には気まじめで軍人家老的な印象があったので「えっ、勘三郎でいいの?」と最初びっくりしたが、この人が演じると飄々たる軽みが出て、行動半径の広さと長岡庶民の人心説得シーンに不思議と好感が持てる。
攘夷派時代の坂本竜馬と河井継之助が劇中で一瞬すれ違うのだが、後の彼と同様の発想を河井が少し先にもう考えていたとしたら(いや、だってドラマでそう云ってるもんですから・・・竜馬だって薩長同盟や新政府発想はあの状況では偉いですよ、ほんとうに)大した頭脳だ。

それだけに後半の<板ばさみ>状況と対官軍激闘が、歴史としてはわかってはいるものの、何とも気の毒になってくる。
要するにこの人、本当はできれば長岡藩は幕府方にも官軍方にも就かず、スイスみたいに自主防衛、対等交流する独立した<共和国>にしたかったのだ。多分皆兵制だが。
うちの藩を今余計な喧嘩に巻き込むな、うちはうちで独立独歩でやってゆく。日本の中同士で争っていると外国勢力に乗じられ二分されていいようにされるぞ、両者で早く一致団結しろ、という本音。
その自主防衛強化のためには派手なガトリング砲すら外国武器商人から購入した。しかし戦況とともに独立の夢は破れた・・・。
農村のシーンが多く画面が明るいのは、この題材においては救いだった。陰影がないと時代劇らしくない、という意見も当然あるだろうが。
歴史学者ではないので厳密な<史実>まではわかりようもないが、こういう立場の人物もおそらく居た、ということで。



ドラマ版「電車男」は後半から観れた。1話以降観てなかったので途中を知らずにいたのだった。
主人公の周囲にサブキャラを数名投入して、フジ得意のドタバタ状況コメディに料理されていて、まあ面白いんだけど「映画とムード違うじゃん・・・」と。
でも、ああしないと3ヶ月間も引っ張れないですよね。
あの中で最も株を上げたのは<対男性好感度>をかなぐり捨てて?熱演した白石美帆と豊原功輔でしょう。いやでも笑わされるシーンが多かった。この2人が主役の2時間コメディードラマを是非観てみたい。サスペンス寄りじゃなく。
しかし最終回、なぜあの古風な喫茶店が?謎だ。
正月だからお子様達も家で観てたんだろうか。つなぎで追加のマラソンパート、あれ、男の子にはウケそうだよなあ。


「古畑任三郎」SP3本と「女王蜂」「里見八犬伝」(2夜連続)まではさすがに手が廻らなかった・・・。どれも終わりのほうだけちょこっと。
しかも、「古畑」の1本と同じ三谷幸喜脚本作品がバッティング。
集中して観るほうだから、きびしい。

NHK「新撰組 土方歳三最後の一日」は近藤勇が既に居なくて、函館・五稜郭に立てこもってる旧幕府軍側が北海道建国の夢破れて戦略会議している話。
奇襲戦法、というと敵味方双方、桶狭間と<ひよどりごえ>が出るのがいかにも実戦派のつわもの達らしい。
もっぱら土方と榎本武揚の対話劇に特化して、死に場所ではなく生きる事を求めるのだ、という話に持っていったのが成功。
最後の武士2人、対照的性格がくっきり浮き出ている。
ただ、この人たちの頭の中では地元に以前から住んでいたはずのアイヌ人達や旧函館藩士達の扱いはどうなっていたんだろうか?と気になった。酪農や商人の話は出ていたが。


フジ系「女王蜂」は角川ブーム時代に原作読んだし古谷一行版も観てるから展開は大体わかっている。(推理小説だから詳細は一切書きませんが。)
警部じゃなくて原作者が現場に同行(!)するのと江戸川乱歩風の<絵描き>をしてるのがちょっと、目を引く見世物。その辺に二十面相が居そうな雰囲気がまことによろしい。
「古畑」3連投、かなり視聴率良かったらしい・・・あれは始めから観ないと筋がよくわからないし。ゆえに保留。(イチローは今、最強の初心者?)

TBS系「里見八犬伝」は「西遊記」や「三国志」「水滸伝」を意識したのか、すごく大陸風な伝奇チャンバラ。NHK人形劇のあれを広々とした大地と大空に開放すると、こうなるのだな、と。
バタバタした深作欣ニ版に比べるとひんやり、クールな印象。
お城の中が暗いのがちと気になるが、まあ昔の城だから。
一人女優(山田優)入れたのは悪くないアイデア。女性で八犬士みたいなバトラーになりたいっていう人、絶対いると思う。
菅野美穂の<幽玄>悪女怪演に、一目でとどめを刺される。もう、こういう役ではドラマ界の追随を許さなくなってきた。
その台詞の通り、ほんとに、人類っていつまでも争い続ける生き物なんだよね・・・。つくづく。
(なお、安房の館山城は現在、内部が歴史博物館になっています。天守閣から展望もできます。いい眺めですよ)




一番ハマッたのがテレビ東京系の3部構成、10時間ワイド時代劇「天下騒乱 徳川三代の陰謀」だった。

例年ならば「いずれ昼の再放送枠で分割放映するから、一時間ずつ観よう・・・」で済ませてしまうのだが。
今年は幕府の影の中心人物・土井利勝(西田敏行)、柳生十兵衛(中村獅童)、荒木又右衛門(村上弘明)の3人が主人公。
で、これに大奥・春日局(片平なぎさ)と将軍家光の母・お江与の方(かたせ梨乃)の対立、知略派の重臣・柳生宗矩(柄本明)の策謀などが加わり、巻き込まれた者たちが振り回され続けてある<決別>、あるいは<決闘>に至るまでの大筋が構成される。
見始めてからたちまちその筋立てに引き込まれ、もうTVにくぎづけ。

「四十七人の刺客」の池宮彰一郎原作、「特捜最前線」(と「キカイダ-01」!)の長坂秀佳脚本、「釣りバカ日誌」本木克英&山下智彦監督。
スタッフはオール松竹京都映画。
ゆえに展開は・・・甘くない。かなりの辛口。

第一部、御鷹狩り中に雷に打たれて倒れた(そうだっけ?ふぐの天ぷらに当たったんじゃ・・・?)大御所・家康(山崎努)が、信頼する家臣・土井利勝が実の子(!)である、と本人およびニ代将軍秀忠のみに明かし、兄弟に「良いやつも悪いやつも、徳川家と天下の妨げになる芽はすべて、鬼となって除け」と遺言して死ぬ。関が原の合戦で大阪方についていた外様大名達の反乱、政権奪取を防ぐためである。
このとんでもなく厳しすぎる遺訓を発端として、政治の実権を握った利勝は春日局や将軍家指南役(つまり武術の専任コーチ)・柳生宗矩と相談しつつ、これをまっすぐに実行してゆく。
徳川家親族の松平忠輝、外様大名の大物・福島正則らが次々と見せしめの的に挙げられ、断罪されてゆく。
大名達のみならず徳川家身内や譜代大名たちまでが土井の政治断行に恐れおののく。

対立勢力候補の外様方・伊達政宗らをひそかにバックアップしているのはなんと、秀忠の正妻にして家光(池内博之。不良っぽい若様だ)・忠長(海東健。能天気キャラで「そ、そうかな?わはははは」が口癖)兄弟の母であるお江与の方。
次期将軍候補の家光が生みの母親から遠ざけられ、春日局に可愛がられた反動でお江与は、過度の忠長びいきになっていた。
旧大阪方の大名や子孫達はお江与と謀(はか)って忠長をおだて、かつぎださんと駿府(静岡)で密談し、何かにつけて家光擁立派をおちょくり続ける。
悪僧侶と赤い蝋燭の林を前に謀議を重ねるお江与、かなり気魄迫る。水ごりのシーンなど不気味。
冷静沈着で理性派の春日局が後から何を弁明しても、所詮は取って付けたる理屈にしか映らないほどに、あのお江与はコワい。
本質的には殆ど、駄々をこねてるだけなのに・・・。

将軍家や利勝に取り入って立身出世で柳生本家を守ろうとする柳生宗矩は、得意の策謀を駆使して反対派の者たちを次々と罠にはめ、落としてゆく。家光のスキャンダル?ですら綺麗に処理してしまう。
剣術の道を模索しつつ諸国を旅する息子の十兵衛に命じて、服部一族の子孫といわれるさすらいの浪人・荒木又右衛門(そうだっけ・・・?)の本心まで探りに行かせる。
だが又右衛門はまったく謀反を起こすようなタイプではなく、ひたすらストイックなまでに己の武士道に忠実な、生真面目な侍だった。感心する十兵衛。

父との手合わせをするはずが、柳生の<忍び>達に引き合わされる十兵衛。
その一人がキューティーハニー・佐藤江梨子の白狐(びゃっこ)。真っ赤な装束に白い狐の襟巻き、夜目にも目立ちすぎる忍び。
十兵衛は次第に、目的のためには自分をも翻弄し権謀術数ばかり行なう父のやり方に反発を覚え始める。

やがて又右衛門はさる大名に仕官し、柳生の里との縁で女・みね(ゴジラ退治・田中美里)と結婚、隣近所で同僚の指南役・河合甚左衛門(林隆三)や荒木家の女中(仮面ライダーファム・加藤夏希)、十兵衛らとしばしの暖かき交流が続く。(そして主人はスカイライダー。すばらしい)
だが、他所の大名家臣に起きたある事件をきっかけに、荒木家と河合家は突如、仇同士となる。
その事件を火種に一連の騒動は巡り巡って、土井利勝と外様大名グループ、お江与の方の対立状況に深き影響を与えており、天下騒乱のきざしとなりかねない一大事へと発展していたのだった。
何とか両者の果し合いを止められないか、と奔走する十兵衛だが・・・。

要するに宗矩・十兵衛親子の心情的対立が後半の軸になっているのだ。
自由すぎる息子をうらやみ憎む宗矩。策謀よりも自由に己が道を極めたい十兵衛。
この2人の対立構図、今の世の中にも十分、当てはまる節があるのではないだろうか?
小生は無論、十兵衛寄りに感情移入したのだが。

なお、長身にもかかわらず<鍵屋の辻>シーンで槍の名手を相手に素早く見せるべく立ち回る村上版・又右衛門の殺陣はなかなかにメリハリがよく、見ごたえがあったことを付け加えておく。
あれを見た直後だと若手にわか剣士2人のくんずほぐれつの立ち回りは・・・やっぱり、言葉は悪いがまるっきりガキの喧嘩だなあ、と。
無論そういう風に演出してるんだろうけれども。
総じて見ごたえたっぷり、まさにこの枠ならではのドラマ大作なり。
こういう意欲的な試みは、どしどしやっていただきたいものなり。


とりあえず年末年始視聴報告、以上。











「天下騒乱」は念仏の鉄・山崎努が家康、中村主水・藤田まことが大久保彦左衛門、政・村上弘明が又右衛門、「必殺仕事屋稼業」政吉・林隆三が甚左衛門、と必殺ファン冥利に尽きるキャスティングでもありました!
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  1. 2006/01/06(金) 21:34:55|
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