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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

ガルスは駆け出す、君と一緒に!

秀の、日記。


引き続き、東京藝術大学大学院、2期生作品を、一部見物中。

連日、結構、おもしろく観れる作品が、並んでいる。
学生映画らしく、過去の洋画や邦画の、胸を借りた形で、
単なる律儀な再生から、半歩ほど踏み出したシーンも数多く見られ、
そこには確かに、豊かなる実りのきざしが、
ほのかに、立ち上がってきている・・・。

つまりは、先人達の手法を踏まえた上で、
ちゃんとミニ・エンタメ・シネマとして、観れるように、仕上げているのだ。

気まぐれなる、一観客としても、
映画館へ足を運んで、新作映画を観る、という行為が、
いかなる豊かな時間と、楽しみとをもたらしうるか、といった、
観客の原点に返る意味でも、
なかなか、いい試金石の、機会となっている。



船曳真珠監督「錨をなげろ」(16mm・60分)

・・・は、「嵐が丘」がベースの、<恋と執着>のドラマだが、
毛色が少し、変わっている。

前半が、異母兄妹家族のいざこざと、少年少女の逃避行。
ここでは、2人の間にほのかな恋が芽生えかけているが、
少年には、外敵の手を瞬時に怪我させる、特殊能力が発動しているため、
やがてついに、血まみれの悲劇が起き、別れの時が来る・・・。

後半の成人篇が、サイキックSF調強化。
少女から成長した女は、
既に夫がいて、なおかつ妊婦でありながら、
不気味な国営?超能力研究所から逃亡中の、
少年が成長した姿の、青年の存在に気づくや、
途端に、彼への愛、いや執着を、あらわにしてしまう・・・!
男性的にはあまり、考えもつかない、
とんでもなくすさまじい、執着状況、といえる・・・。

前半、港とバンド音楽のシーンなどで、
急に画面つながりが、フッ、と飛び、人物が消えたり、急に出たりする。
フランス・ヌーヴェルヴァーグあたりの発想、だろうか。

後半でも、さっきまで手前に立っていた青年が、
すぐ後から、かなり遠くに、スッ、と現れる。
おそらく、同じ服装の人を待機させているのだろう。

又、別な場面では、
夜中に女性が、青年と対話しながら、
右を向いたり、左を向いたりして、
目前にいる青年が、素早くジャンプ・リープする様を、器用に示す。

前半から連発される、サイキック・シーンは、サスペンスフル。
からんでいる人物の、片手ないし両手が、
一瞬で、真っ赤に染まり、人物が痛みに絶叫するが、
あまりにも素早過ぎて、動きが何も見えない。
いったい何が起こったのか?と、戸惑わされる程に、速いのだ。

また後半では、三代目?登場前後のシーンで、
これは、夢かうつつか?という程に、時空が急速回転する。
そこだけ、筋がごちゃごちゃしていて、混乱させられる。
おそらく、迷宮世界の表現にしたいのだろうが、
あそこだけどうも、すっきりしない感じで、落ち着かない・・・。

総じて、各シーンを、器用に演出・処理し、
かつ編集で、なかなか面白く、つないでいる。

そのシーン処理が、いちいち唐突なのと、
演出や処理の手法自体が、時折、筋よりも前で出ていて、
目立ってきているのが、少し、気にはなるが・・・。
本筋とは無関係そうなシーンでも、
画面がふいにフッ、と、飛ぶ様につなげられる瞬間に、
結構、魅かれるものがある。
画面や人物の動きはまずまず良く、おもしろく観れる。

ラストが、ああすべてが終わった、という。
ちょっといい余韻を、残す。


吉田雄一郎監督「second coming」(35mm・35分)

・・・は、女子高生のヒロインがのっけから、派手な銃撃戦シーンを、見せてくれる。
次には、ヒロインの叔父(佐野和宏!)がいきなり、ジャンプ・落下のアクション。
実に、動きで引っ張る導入部。

以降、叔母の奇行、謎の少年、電波遮蔽解除キー(なぜかロシア人形)、
宇宙人の人間界支配、ヒロインの隠された秘密、
ダミー死体、生き別れの姉、などのお膳立てが、
テンポよく、アクティブに進行。

それこそ、東映セントラル・フィルムあたりで撮ったような、
ガン・アクションと、SFドラマの魅力を、小品ながらもきっちりと、見せつけている。
解放抗争の果てに、宇宙人支配からの自由を得た途端、
人類の平和がめちゃくちゃになる、というのが、なんとも、皮肉・・・。
痛快作。


瀬田なつき監督「彼方からの手紙」(HD・85分)

・・・・・何というか、その・・・。
鈴木清順&木村威夫美術監督コンビで、撮ったかのような、
かなり奇妙な、劇映画。

しょっぱなから、いきなり故意にピンぼけた、
バスの中の少女を映す、キャメラ・・・。

不動産屋で、物件の案内をする仕事をしている、渡辺篤郎?風の社員青年。
少しおっちょこちょいで、ドジな振る舞いが目立つ男。

コンビニでは、レジに人の気配が無いと、
途端に、無茶を始めたりもするるのだが・・・。
(やばいこと、してるな~、の声・・・)
自宅のアパートには、同居中らしき女性と、大きな亀が居る。

この青年がある日、勤め先の受付で、
リュック背負って家出中らしき、くだんの少女に出会う。
かなり高額な、ある物件を見たい、という。
昔、父親と居た家だった、というのだ。
その日は都合で、その家には行かなかった、2人だが・・・。

別な日、朝からバスに乗り遅れ、
クサって仕事を休んで、ほっつき歩いていた彼は、
外で例の少女に再会。
急遽、2人で、ロードムービーな道行きに。

店からこっそり、合い鍵を持ち出し、
アパートの彼女もほっぽらかして、
夜通しで、あちこちと寄り道しつつ、
例の物件へと、車で向かう2人・・・。

苦労の末にたどり着いた、その建物の中には、
奇妙な塗装の、部屋が。
しばらく、室内でふざけていた2人だが、
やがて、青年が、部屋のTVとビデオに気づくや、
さらに奇妙な光景が、眼前に広がりはじめ、彼は混乱する・・・。

いかにもドジで、気分屋な青年の、そして少女の、
全身で見せる仕草や言動が、
いきいきとしていて、なかなかに魅せる。

青年がバス停へ突っ走ったり、
少女をコンビニで、半ば巻いて逃げるときの、パタパタした走り方。
彼がかんしゃくを起こし、
川原で草を払う、やけっぱちな行動の様子。
2人が羽田付近で、はしゃぎあう光景。
異常事態に気づいた青年が、
やけっぱち気味に、部屋で、少女と踊り狂うシーン・・・。
青年が自転車を盗んで、逃げる下り・・・。
とにかく、よく動く。
これぞ、<アクション>の原点。


一部にファミリー・ドラマ的な部分を含みつつ、
赤い帽子は時空を超え、
魚は泳ぎ、雪は降り、
バスは宙を飛ぶ・・・。
少女と友達はゲーセンではしゃぎ、
自転車で逃げる青年のシーンすら、
まるでゲーム内世界?のように、見えてくる。
坂道の階段シーンなどでは、
次第に昼夜の区別すらも、あいまいにされてゆく・・・。

時空を超えた迷宮化が目指されており、
二度の雪降りで、
ある種の<納得>が、ようやく訪れる・・・。


家族、というテーマをも、
やや特異ながらも美的に、
アクティブ、かつファンタジックに、表現してみせた、佳作。


以上。




2本だけ、観れなかった。
できれば、又の機会に・・・と。
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  1. 2008/05/28(水) 00:58:10|
  2. インディーズムービー
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