主水日記。
今週は、フィルムセンター通い。
<発掘されたフィルム2008>特集。
戦前・戦時中の映画フィルムは、
古い可燃性フィルムの、発火による火災や、
戦争による焼失・紛失、
国情による他国没収、などが多く、
いまだに、相当多くの作品が、行方不明である・・・。
ごくたまに、そうした<幻のフィルム>が、
個人所蔵のフィルムコレクションや、
海外上映向けに、プリントされたものなどの中から、
発掘・再発見され、センターに寄贈され、
デジタル修復作業等を経て、公開上映されることが、ある。
今回は、その中のごく一部。
資料としては、大変貴重なものである。
2本とも、上映前に、発掘・復元に携わった研究員氏が、
フィルム修復、デジタル処理等、復元工程の簡単な解説を行なった。
こういう地道な努力の積み重ねが、
貴重な作品群を、現代に蘇らせているのだ。
(1)入江たか子主演のメロドラマ映画、「月よりの使者」。
(2)市川右太衛門主演のリメーク時代劇、「薩摩飛脚」。
とはいえ・・・作品や上映形態に関しての評価となると、これはまた別物で。
この2本、白黒サイレントで、各90分前後あるのだが・・・
2本とも、終盤の劇的盛り上がりに至るまでの過程が・・・長い。
本来ならば、1000円くらいになっても、活弁士を入れるべきなのだが・・・。
あれは途中で、観ているほうはかなり、ダレていた。
ビデオと違って、飛ばせないのは、もどかしい。
いずれも後方の席で、たまにいびきが聞こえて、困った。
なにしろ、(1)に関しては、
ほとんど型通りの、動かぬ芝居と、
文字説明のみが、延々と続くのだ・・・。
画面の、動きらしい動きが、
海辺の荒波で、ヒロイン心理的ショック!の表現をするシーン位で、
映画としての<動き>に乏しく、
弁士抜きでは、どうしても、ダイナミックさに欠けてしまう。
上映後のロビーでも、
「波ばかり、印象に残った・・・」との声が、目立った。
なお、白樺林の高原病院シーン、
シスター風の看護婦(現・看護師)衣装や、
ごっつい頑丈そうなレントゲン機など、
現代と違うデザインは、興味深いものがある。
看護婦(現・看護士)に惚れる、男性患者達、
その気持ちはなんとなく、察せられるのだが・・・。
そんな、映画のようなドラマチックな展開は・・・
そうそう、無いだろうと・・・。
手紙や人形、あのような伏線に・・・。
強引な位の展開、これぞドラマ、だなあ。
(2)については、本来もともとトーキーだったものなのだが、
なぜか、サウンドトラックが、無いバージョン。
アメリカ在住の日系弁士向けに、
サイレントでプリントしたものと、推測されているそうで。
筋への理解を深めるため、上映前ロビーで、
500円支払い時に、解説書のプリントが配られた。
これも本来は、活弁士が必要なのだが・・・。
その資料によると、全体の大筋は、
薩摩へ密偵に入って、一人帰ってきた男が、
「お前、相棒の密偵を見捨てて、逃げてきただろ!」
と、仲間達から責められ、
濡れ衣を晴らし、人質状態の相棒を取り返すべく、
再び薩摩と江戸を往復して戦う、というもの。
篤姫にはお気の毒だが、この話、
薩摩側の密偵が、悪役扱いである。
薩摩藩と江戸幕府は、関が原以来の因縁で、
幕末の一時期を除くと、互いに警戒しあっていた。
したがって、薩摩行きの飛脚に化けて、
幕府の密偵(忍者、スパイの類)が情報活動に潜入すれば、
九分九厘、まず生きては帰ってこない、
というのが、歴史上の定説。
だからこそ、生還した主人公は、
仲間からあらぬ疑いを、かけられたのだろう。
これまた、職務とはいえ、お気の毒な・・・。
これがそのまま、タイトルの由来なのだが、
終始武士姿の主役御大は、あいにく飛脚姿では、ない。
<薩摩飛脚>という呼称自体が、
<密偵>自体の代名詞となっているためだろう。
字幕によると、西郷吉之助(隆盛)役も、出てくるという。
どうやら後半の、準洋館風屋敷で、
座っている人が、それらしき様子。
すると、幕末近くなのだろうか?
こちらの映画に関しては、一部とはいえ、
さすがは御大右太衛門、とうならされるシーンが、あった。
途中の、海岸シーンでは、
まず軽く、小手調べ的チャンバラ。
脇役男のおびえた身振りが、ちょいと愉快。
ここはウケていた。
殺陣ではないが、
人物達が次々と、ザンバラ頭となるシーンも、反応が良い。
断崖シーンでは、斬られた者達が転がり落ちる。
でも、主役にとっては、
なおもまだ、軽いウォーミングアップの印象。
旅の宿らしき屋内で、
敵とばったり、遭遇しての立ち会い?では、
着替えるまで、ちょっと待て!みたいな芝居で、
いかにも御大らしい、シーンともいえるが・・・。
(そんな暇ないだろ!の声・・・)
が、ラスト10分程、江戸の薩摩屋敷へ斬り込んでのチャンバラ、
これが文句なく物凄く、力強い。
右太衛門、寝たままの殺陣、
刺されても尚、ぎりぎりまで持ちこたえ、
のたうち回りつつ、斬る、という・・・
ありなんだな、これが。
あれを観れただけでも、十分、来た甲斐はあった。
助っ人の出方には、ちょい笑った。
ちなみに、篤姫は、居ない模様・・・。
と、いうわけで。
ひとまずフィルム・マラソン、終了。
以上。
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- 2008/05/15(木) 01:37:06|
- 劇場用映画
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