旅人、覚書。
土曜の、続き。
その夜の、自主映画上映とは・・・
多摩美術大学、映像演劇学科<夢は夜ひらく>2007年度末発表会。
そういう、タイトルなのだ。
なつかしの藤圭子がなぜ、上野毛の地に?誰がつけたんだろう。
先週木曜から、日曜まで開催中。
期間中の再度上映もあって、
プログラム的にはありがたい組み方、なり。
しかも、無料。
すぐ隣近所では、演劇の発表も、複数行われている。
実は、上野毛(かみのげ)訪問は、おそらく初めてである。
高校時代までは、「うえのげ」だと思っていた。
動物園に毛深いゴリラが居る、そんなイメージで。
(単純だよ!の声・・・)
それはともかく。
Bコース、夜の部、映像スタジオにて4本、鑑賞す。
小粒ながら、なかなかにユーモラスな作品が揃っていた。
ここが今年最初の自主上映見物で、結構、ラッキーだった。
だって、1本目に観たのが・・・
柳沢陽志監督の、「中野モラトリアム」。
(キター!の声)
実は、<シネマ健康会>の松本氏が、出演しているというので、
とっかかりにと、観てみたのだ。
ほぼ、オール・中野区&中央線沿線での、DVロケ。
中野に武蔵野ホールがあった頃から、よく来ていた地域で、
今も中野ZEROや野方の上映会、ラピュタ阿佐ヶ谷等へ行くついでに、
沿線に寄る事があるので、
映画ファン(&ライダーファン、他・・・)的には、お得感がある。
最初のうち、あるヒロインが、
主人公の大学生青年の周囲を、頻繁に出没、助言をするので、
世話女房な同居人とも見えるな、という気もしたが、
やがて、友人や新恋人の前にもいながら、
周囲が意に介さない様子などから、
7~8ヶ月前に別れた元彼女の、記憶に基づいた<幻>らしいと、
徐々にわかってくる様に、なっている。
そういう趣向で、主人公の内心を描く手法は、
ウディ・アレンの映画などでも、おなじみ。
男女3人、内心の声を流すシーンも、ちゃんとある。
主役が映画館のバイトをしている設定なので、
男女間でも洋画・TV方面の深い話が、ついつい、出てくる。
よく、わかるぞ。
会話中に、ドラマとしての「スタートレック」シリーズの深さ、
<カート・ラッセルのミュージカル映画>の話などが、出る。
(あるの!?観てないかも・・・の声)
前半は、基本的には普通の、前の彼女を忘れ得ぬまま、新しい恋人候補と付き合い始める主人公の、過去ひきずりドラマなので、
ここら、中野ロケの必然性あるの?と、多少気にはなったのだが。
後半、ややおせっかい気味な、
半ば脳内?<助言者>達。
その一人が、占い師と並んで、
ひときわテンジョンの高い、スーツ姿の松本氏。目立つ。
彼らのありがたい応援、
あるいは批判、通せんぼ等を受けとめて、
迷いつつも、意を決して、
元彼女の住む吉祥寺まで、各駅停車?で、
あっという間に、猛ダッシュする、障害物リレーのごとき展開に、
なるほど、それで中野だったんか!と、直ちに納得。
小道具やコスプレ人物達の登場には、まことにふさわしい展開。
これ、あの沿線を年中歩く人なら、よくわかるかも・・・?と。
他の地方の人たちには、地理的にピンとこないかもしれないが。
「ここから先は、中野じゃないわ!」なシスターには、笑った。
ラストが、甘いといえば甘いが、
ま、こういうオチも、ほっとするかも?と。
正月1本目、いいものを、見せていただいた。
2本目、小松いつか監督「今日もそうして秋は行く」。
カラー、8ミリフィルム作品。
それ自体、いまどきの新作では、珍しい。
しかしながら、ミストのかかる画面をフルに生かした、
昭和ノスタルジー路線の短編・・・などではまったく、ない。
これは、何というのか、PVに近い感じで・・・
説明が、ちょっと難しいのだが。
はっきりいって、心理葛藤的ドラマなんて、な~んにも、ない。
あるのはただ、音とリズムの効果への、いい意味での、偏愛。
水音・足音・雑踏の音声・音響などが、
かがんだり歩いたりしている、人物達の動きにかぶさり、
絶妙なる効果を、あげている。
人物の、イメージフォーラムっぽい?印象を含んだ、反復運動、
それらがただ、あるのみ。
テンポとリズムが、ほぼすべて。
ただそれだけの作品が、じつに、面白い。
終盤では、それらのリズム感の果てに、
淡い主題歌の流れる中、
イチョウの葉とともにはしゃぎ、時折キャメラ目線?になり、
能天気な印象のまま、独特のリズムをとって動く出演者達が、
半ば苦笑させられつつも、
どこか、いとおしくすら、感じられてくる・・・。
これ、ワンシーン、出たかったかもなあ・・・などと。
そういえば、犬童一心監督のPFF時代の作品、「気分を変えて?」を、
BOX東中野(現・ポレポレ東中野)のPFF関連上映で、初めて観たときにも、
自分としては珍しく、素直にそんな気持ちに、なったものだった・・・。
あの現場には、ちょっと、一日だけ、居てみたかったかもな・・・と。
若さのエネルギーと、コワさ知らず?の無茶と、
前向きな明るさの入り混じっていた、あの世界・・・。
「よっちゃんロシア/残りもの」に、やや近いタイプの、
軽快さ、愉快さ。
是非、「よっちゃん・・・」の玉野真一監督と、
小松監督は一度、対談をしてみていただきたい。
結構、話が合いそうな予感が、する。
3本目、今井甲介監督「泣く理由」。
「太陽にほえろ!」にただ1話、
事件らしい事件のない、七曲署の一日を描いた回があったが、
これはちょうど、そんな感じの、DV短編。
普通の、広告デザイン会社事務所の1日を、
朝の出勤挨拶から、夜番の時間まで、
社員同士の対話や、電話応対の様子を、淡々と描いたもの。
事件といえば、今日が残業する若手社員の、誕生日であること、
ケーキ一切れに「合わねえよ」とぼやく。
あとは、先輩社員の妻の出産が早まる、くらいのもの。
それゆえにラスト、仕事人、いや社会人は、
ちょっとだけ、泣けるぜ・・・と。
4本目、井口友信監督「THE IGUCHEESE-旅の記憶♯1-」。
自らナイフを持ち、革細工を手際よく作ってゆく、主人公。
ボタンの模様も、ビーズでカラフルに、デザインする。
その世界では知られた、革細工の名人に憧れ、
いつか会う心積もりで、居る。
いずれはこの革細工で、本式に修行したい模様、なり。
キャメラは早回し、ハイテンポで、
それらの手作業を、細かく見せてゆく。
じつに、器用なものなり。
やがて、主人公は、
マカロニ・ウエスタン風?な服を身にまとい、
東海道を名古屋へ向けて、
バイクで進む、旅に出かけるのだった・・・。
と、いった監督自身の告白と決意、
そしてバイク旅の展開を、
字幕入りのドキュメンタリー方式で、
テンポよく、映写してゆく。
時折、旅先でしゃべっている音声も入っているが、
全体的には、サイレント映画に、音楽が付いている、という構成。
西部劇みたいな感じも出ていて、ちょっと旅情をそそる。
途中いきなり、でかい字で、
「さらば就活!」と出るのが、場内で大ウケ。
学生だなあ・・・。
観客側の小生とは、視点こそ違えども、
これも又、ひとつの立派な、シネマ旅、なり。
自らの道を自ら決めた、彼。
意欲的なる開拓者よ、人生の旅に、実りと幸あれ!
以上。
「よっちゃんロシア/残りもの」(玉野真一監督)は、
PFF、こと<ぴあフィルムフェスティバル>(通称ぴあフェス)の出品作として、
上映されたときに観た、衝撃の、ダンス?短編作品。
一度観たならば、あのリズム感は、当分覚えていることであろう・・・!
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- 2008/01/27(日) 09:00:44|
- インディーズムービー
-
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-
| コメント:4
先日はご来場誠にありがとうございます!
「よっちゃんロシア/残り物」聞いた事があるとおもったら、しっかり授業で拝見した作品でした。
しかも、確か多摩美の先輩の作品で、凄い作品だ!と思っていたしあんな風に世界観をだせたらいいなと思っていたので、私の作品をみて連想して頂いただけでも光栄です。。
まだまだまだ未熟者ですが、今回の反省もふまえ、卒業制作に向かいたいと思いますで、是非その際もお暇がりましたらいらして下さい。お待ちしています。
ありがとうございました!
- 2008/01/28(月) 16:28:45 |
- URL |
- コマツ #-
- [ 編集]
< コマツ様、メッセージありがとうございます。
え、玉野監督は、先輩だったんですか!
授業で、ご覧になっていらしたんですね。
「よっちゃん・・・」。
それは大変な、幸運ですよ。
渋谷のイメージフォーラムでも、
玉野監督の特集上映で、かかったそうです。
あれは、衝撃的な作品でした。
テーマなし、筋無しでも、リズムとテンポ次第で、
面白い短編は出来る!という好例ですね。
<イケイケ秋山ァ~!>のリズムは、
おそらく小生、一生涯、覚えていると思いますよ・・・!
映画における、音響・音声の大切さを、再認識させる、コマツ監督作品でした。
卒業制作も、がんばって、完成してください!
- 2008/01/28(月) 22:03:18 |
- URL |
- アWorker #-
- [ 編集]
先日はご来場ありがとうございました。『中野モラトリアム』監督のグレート・ヨウジ(映画製作中だけこの名前でやってます)です。
批評の中でウディ・アレンの名前が出てきたことが嬉しいです。前半の部分は結構彼を意識しましたので…
それからカート・ラッセルのミュージカル映画というのはないです。ファミレスで見ていたパンフレットは実は私の前作、ミュージカル映画『SWEET MISERY SHOW』でして、それがアメリカでリメイクされてカート・ラッセルが出演しちゃう、という、私の小ネタでした。彼等はそれを見に行ったんですね。
ラストに関してはどうにでもなるんですが、アニー・ホールのラストでウディ・アレンが言っていたように「芸術上では理想的に事の運ぶように」を実践しました。やはり自分もハッピーエンドが好きなので。
シネ健つながりで来て下さったと言うことで、なんだか妙なうれしさです。最近の新作『男達の馬鹿~悪魔祓いの島変』にも出演していますのでよろしければそちらも面白くなってますので、お時間があれば是非。
まだまだ話の段階ですが中野で過去作品の上映会をしようとスタッフの中で盛り上がってますので、その際もぜひご来場くださいませ。
長々とすいません。ありがとうございました。
- 2008/01/28(月) 23:15:36 |
- URL |
- グレート・ヨウジ #-
- [ 編集]
< グレート・ヨウジ様、ようこそ。
あ、なるほど、そういう設定だったんですね。
その前作が、もしアメリカで・・・というネタで。
それで、「カートじゃねえ・・・」の台詞に、と。
いや~、わからなかったもんで・・・。
観てない未知の洋画って、まだまだ、いっぱいありますからね。
その前作を、是非一度、観てみたいですね!
なお、小生めは、
<おいしい生活>というキャッチフレーズの、SEIBUのCMでウディ・アレンを意識して後、
ウディ映画に向きあった世代ですので。
人生も、男と女も、いろいろ皮肉な事もあるけれど、でもまあ、いい経験で、
肯定的なところもあるさ、という、
ウディ映画の味・・・。
「アニーホール」は、まさにそうですよね。
そういうところが、小生も結構、好きですよ。
丁寧なるメッセージ、ありがとうございます。
シネ健方面でも、このところ、
いろいろ何かと、ご縁がありますので、
今後とも、よろしく、お願い致します。
- 2008/01/29(火) 00:20:21 |
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- アWorker #-
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