主水日記。
ついに・・・始まった。
藤原章監督、「ヒミコさん」。
ポレポレ東中野にて、2週間の、レイトショー。
異例だが今回は、
あえて若干、提灯持ちを、させていただくことにする。
今回の小生は、一観客であると同時に、
ほんのちょっとだが、一般公開作品のエキストラ出演者でもある、
という特殊事情がある。
こういう状況は、「映画監督になる方法」以来、なり。(注0)
(ただし、今回はノン・クレジットである。)
既に一度、試写会で公開バージョンを観ているのだが、
そのときは、
自分の登場シーンが使用されているかどうかを、確認する時点までは、
内心、ちょっとはらはら?していたのは、事実である。
まず作品全体が、ちゃんと出来ているのならば、
とりあえず、納得する心積もりではいたのだが、
確認できたときは、やはり、嬉しかった。
しかし、自分が出ていないシーンも含めて、
あらためて一観客として、通しで観てみても、
明らかに中規模の、自主DV映画のスタンスで制作された、
88分の映画「ヒミコさん」は、
すこぶるユニーク、かつ、間違いなく面白い映画である。
観ればそれがわかるのだ、と、はっきり云える。
町内会長に注目されていて(注1)、
手製の爆弾魔で、
秘密基地?めいた、ガスタンクの設備周辺に出没し、
死を綴る詩人で、(おいおい・・・!の声)
同時に陽気な一面を持ち、色っぽいフェロモンを発散するという、
かなりやばい感じな、謎めいた帰郷美女。
宮川ひろみ嬢が、コミカルかつ悩ましく、大いに好演している。
彼女と、地方都市の典型的男子高校生達と、
爆弾魔を追う刑事らをめぐる、物語。(注2)
うじゃじゃけた青春映画、兼、エログロ映画?としても、
勿論ちゃんと観れるのだが、それだけではない。
前半部では、
唐突な大爆発!事件シーンが出てくるものの、
その後しばらくは、意外にスタンダード?な、
うじゃじゃけ青春ドラマが進行する。
若き甲子園ピッチャーたちと、
零落した元プロ野球選手の<対決>シーンでは、
場内から軽い笑いが起きたが、
これもオーソドックスな手法。(注3)
決め台詞・ポーズとともに、ヒロインが見得を切って、
颯爽!登場するシーンは、なかなか格好いい。(注4)
ピッチャー青年と、病気の母親と、
金銭好きながら、熱くて人情派なドクターの対話シーンも、
ドラマとしては、かなりベタな位の設定。(注5)
無表情なナースがぶつかるシーンなど、
これも定番の手ながら、ちょっと笑える。
なぜ、野球部員の未来妄想シーンで、
女性スポーツ記者(注6)が、あの南洋くつろぎ系な衣装なのか?とか、
なぜ、母親のショック療法に、あの服装を?という疑問は、
若干、残るだろうが。(注7)
映画は<夢>だから、あり、ということであろうか。
他にも、あの小銭をしっかりせびる、
にわかコーチは、いったい誰なんだろうか・・・?とか。
高校卒業から10年目の警官が、怒り暴れるシーンや、
現役帰宅部高校生との対話シーンなどは、
ささやかながらも、サスペンス・アクション映画への愛に満ちていて、いい。
そうした、基本的には?ほぼ、<定番>展開の中にあっても、
時折、ふっ、とタイミングよく挿入される、
短いイメージ・シーン群の効果が、目を引くときがある。
ヒロインを逆光でとらえたり、
陽気な表情に光の球を重ねたり、
苦悶のシーンと音声を、
ふりむく人物や、外の景色の流れにつなげたり。
診察室のシーンで、ドクターの顔写真を、すっ、と横切らせたり。
ドキュメンタリー的場面が、一回り小さめになって、入り込んだり。
町名の標識が、急にズームになったり。
こういう、短いカットの、挿入や積み重ねこそが、おもしろい。
画面の流れに意味以上のものを加え、リズムを与えている。
この辺に、監督のセンスと技を、見る。
日時順には、過去か未来か、
すぐには、よくわからなくなりかける箇所も、ある。
「見たものは・・・」のナレーションなど、後でよく考えたら、
もっと後ろのほうでも、いいような気もするのだが。
観ている間は、未来の妄想シーンとあいまって、
時制トリップ感に、幻惑される。
シャッフルされたカード・ゲームのようで、それもまた一興、なりか。
野球部マネージャー女史の、あからさまな変貌には、
どきっとさせられる。
この周辺から、物語は加速。
宮川嬢をめぐる、狂気と悶えの世界が、炸裂。
さらには、「天才バカボン」などのギャグマンガを読むような、
奇妙なイカレた面白さが、
特に、CGやロケを多用した後半部に、充満している。
遺跡シーンへの、つなぎ方、など・・・。
過去作品群の一部シーン流用をも、うまく流れに取り込んで、
とにかく、むちゃくちゃな展開と描写の渦巻が、一気に、来る。
まだ観ていない、世間一般?の人には、
そのむちゃくちゃが故の、面白さについて、
適切な説明をするのが、やや、難しいのだが・・・。
理屈は考えるな、観て感じるんだ!という他はない。
(で、ジャッキーとジムは、どうなったんだ・・・?!の声)
ここらを感じるままに、乗って、楽しめるかどうかが、
初めて観る者にとっての、評価の分かれ目になるだろう。
小生は、一種のお祭りのように、たっぷり、楽しめた。
正式公開の客席で、もう一度詳しく観直してみよう、
と決めたのは、正しかった。
2度観た後でも、いまだに、
「あれ、あそこ、よくわからない・・・」が、残る。
細かくチェックしたくなる箇所が、フラッシュバックで、
幾つも思い出される。
こういう映画は、最近観た中では、
他に、「MILKMAN」シリーズ位のものだろう。
初日は、あいにくの大雨の後にもかかわらず、
17~18人程の観客が、来場していた。
初日舞台挨拶では、一同、
「今日来た人は、えばっていい!」
「とにかく、パンフを買って・・・!」「作っちゃったんです!」
と、アピールされているのが、
ちょっと笑えて、ほほえましくもあった。(注8)
実際、ちょっとお高いが、解説の文章が豊かで、中身が濃い。
お得感はある。
今回はなぜか、(注)でいっぱいに、なった・・・。
とにかく、すべては、観ればわかる!
いや、すべてを、わからなくても、いいんだ。
面白さの広がりを、探して試すバロメーター、
あるいは冒険として、
観ていただければ、幸いである。
以上。
注0:松梨智子監督作品。
今回は、きしくも公開劇場と形態が、
松梨監督の「レプリカント・ジョー」のときと、ほぼ同一といっていい。
期間中、ゲストトークや、ライブ・イベントもあるのが、お楽しみ。
注1:なぜか、Jホラーの脚本家・高橋洋氏。
注2:その高校生役の一人が、酒徳ごうわく監督。
エース・ピッチャー役は、<刑事まつり>の「寿し刑事」にも出演の、武川寛之氏。
注3:元野球選手役は、「紀子の部屋」の、園子温監督。
帽子は、80年代以降のトレードマーク。
シャツの模様で、ある怪奇漫画家を、思い出す人も・・・?
注4:そこまでよ!が、そこまでだ!になると、
ごうわく監督の、「頭脳戦隊クビレンジャー」。
注5:ドクター役は、切通理作氏。
昨年の、新宿サンタ服イベントの主催者にして、評論家。
ウルトラマン・ピンク映画等をはじめ、その守備範囲は大変に幅広い。
注6:コラムニスト・辛酸なめ子女史、演ず。
注7:自主上映会等で、
今回母親役の、吉行由実女史が監督した作品群を観れば、
なるほど、と納得されるであろう・・・?
注8:
出演メンバーズをよく知らない、という人も、
<イメージリングズ>&<現代映像研究会>を核に、総力を結集した、
この力作パンフを読めば、
企画とキャスティングのすごさが、実感できるであろう・・・。
スポンサーサイト
- 2007/10/28(日) 01:27:37|
- 劇場用映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
僕は、アWorkerさんが出ている事に気付きませんでした。一体、何処でしたか(`.0;)

僕はあの野球部のおにぎり、作ってきてあげると言ったのにそれが結局させずじまいで終わっちゃったのがちょっと不服なんですが、あの映画は細かい事きにしてちゃダメと野球部員後6人ウラス野球服を用意できなかっただなと内部事情と察知しました(^_^)(汗。
- 2007/10/29(月) 01:43:22 |
- URL |
- あいかわ こうた◎ #mQop/nM.
- [ 編集]
<あいかわ様、
先日は、おひさでした!
来てくださって、ありがとうございます。
あまり語る時間が無くて、すみませんでした。
今度もっと、ゆっくりお話をしましょう!
ハニーも、観てみますね。
ええと、小生めは、
ラスト近辺に、
<映像温泉芸者>の皆さんや、<かに三匹>さん達と混じって、出てますよ!
藤原監督には、大感謝!致しております。
ぜひ、もう一度ご確認を。
- 2007/10/30(火) 08:03:46 |
- URL |
- アWorker #-
- [ 編集]