主水日記。
こ、これは、おもしろい!
けど、ちょっと困ったな・・・、
という、大いなる戸惑い。
それが、
完成した「人間椅子」を初日に観終わっての、感想だった。
舞台挨拶でも、佐藤圭作監督や、出演者一同が言っていた通り、
「人間椅子」は、明らかに、
江戸川乱歩の有名な短篇をベースにして、
実質的にほぼ、オリジナル・ストーリーのもと、
いわゆる<変態エロチック・ホラー>路線を、狙って製作された映画、である。
ただし、過去にも映像化されている原作だし、
何しろタイトル自体で、ベースは割れている題材だから、
それ相応の工夫を加える事が、必要になってくる。
じっさい、編集部の新任担当者と女流作家に扮した、
主演女優の2人(まんてん&牡丹と薔薇!)は、
<触感>の悦楽性をより強調した、業界秘話?的ストーリーと、
乱歩ファンで、ヘンタイ演出大好き(なのか?!)な監督のもと、
相当、大乗り気(なのか!?)な様子で、
このきわめて難儀なテーマに、あえて挑戦し、
まずまず、その不気味な世界に即した演技を、見せてくれている。
原稿が巧く書けない、と荒れては暴れ、
体を張って、自宅の椅子と戯れる、伝説の美貌女流作家。
他人の私物を収集する癖を持つ、元作家志望の担当女性。
都電の車内で、作家の自宅で、アパートで、女性記者を挑発し、
軽快に、とらえどころのない、飄々とした言動を見せる、男性編集長。
なかなか、キャラクターの立った組み合わせである。
都電のシーンで、編集長の動きが、ふっ、と飛ぶ画面編集も、
彼の軽みをより際立たせて、おもしろい。
作家の私物を、こっそり持ち帰って整理する、女性担当者。
禁断の愛?寸前に迫られる彼女。
失踪した、大御所男性作家の影。
監視カメラに映る、屋内プールと、殴打プレイ、
椅子と女性作家の間に身体を挟まれて、
いかがわしき夢想へと、導かれ、トリップしてゆく女性担当者、
椅子にまつわる<真相>を知らされ、戸惑わされ、
ある決断を迫られる、彼女・・・。
と、くれば、これは観る側も、
興奮と、描写への期待を、そそられずには、いられない。
が、しかし・・・。
それでもなお、
何かが、違う、
もう少し、ダメ押しが欲しい、
そんな印象が、幾分、残ったのも事実だった。
なぜだろう?
理由はおそらく、
脚本と編集の扱われ方、場面のつながり方に、有る。
いま列記した、それぞれのシーンは、
いくらかの緊張感を持続したまま、
直後のシーンへ連なるであろう、更なる盛り上がりを予感させるにふさわしい、
期待させる描かれ方が、着実になされている。
だが、そのたびに、
さあこれから、という盛り上げの途中で、
描写の流れは寸止めされ、次の場面へと、あっさり、移行する。
その直後に現れるのは、大体において、
ナレーションによる、某人物の心情説明が中心となり、
女優達の演技や、描写自体が醸し出すべきエロティック性とは、
やや違う方向性へと、ずらされ、はぐらかされてしまうのだ・・・。
なぜ、そこでこそ、しつこい程に粘り、
それこそ、女性作家が椅子と戯れるシーンに象徴されるがごとく、
過激な描写の暴力性、あるいは官能性へと向かうべく、シーンを繋がないのだろうか・・・?
何かがちょっと違う?と感じたとすれば、おそらくはそこだ。
要するに、
あのぐにゃぐにゃした、美女と椅子とのアメーバ?シーンを、
いわゆる、エロいシーンを、
もっと、たっぷり長く、観ていたい!のだ。
女性担当者の収集癖にしても、
もっと、収集家なりの、静かなる嬉しさをちらつかせつつ、
主題とよ有機的にからめて、
2人の心理状態のエロティック性と、繋げて生かしたら面白いのでは、と、若干、勿体無くも感じるのだ。
例えば、作家が逆に彼女の髪を、寝床で切って収集しだすとか、
本人を自室の奥の、でかい瓶に閉じ込めて、飼うとか・・・?
(そりゃ、「瓶詰め地獄」!の声・・・)
ああ、それは、夢想がちな観客ゆえの、
贅沢な悩み、なのだろうか?
と、夢見心地な、土曜の夜であった。
以上。
何はともあれ、
監督が映画を完成、公開したことは、大変喜ばしい事である。
石川謙さん、水戸ひねきさんも、
出演作が完成し、報われたようで、よかった。
スタッフロール中に、しかと見届けた、
<どんぱちプロダクション><シネマ愚連隊>等の、団体名。
公認、ということで、めてたき事かな?と。
そういえば、編集長の役名が、<小原>さんだ・・・。
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- 2007/07/01(日) 06:27:20|
- 劇場用映画
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