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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

ビーグル警部の帰還

政の日記。


先週は、シネコンで公開中の、犬童一心監督の「眉山」、
フィルムセンターでは、黒木和雄監督の「原子力戦争」を観たが、
いずれも十分には、芳しい出来とはいえなった。


医療献体と、親子二代の恋愛模様、
および徳島名物・阿波踊りをテーマにした、
ほぼオール徳島ロケの劇映画、「眉山」。

江戸っ子そのままな母親役の宮本信子が、
べらんめえな飛ばしっぷり、
娘との思わせぶりな対話シーン等に関してはすばらしく、
故・伊丹十三監督作品のときよりも引いた、ちょうどいい距離感で撮っているのも、プラスになっている。

だが、それ以外の場面が、やや平板な印象。
それと、娘役女優が・・・。

都会でキャリアウーマンする姿はまだ、それらしく見えるのだが。
幼少時より徳島育ちの役でありながら、
少しも、阿波踊りが好きそうな女性に、見えないのはなぜだろう。

劇中では一応、
かつて皆と遊ばず、一人で過ごす子どもだった、
という設定がなされてはいるのだが、それでも違和感は拭いきれない。

実質主役の母親をはじめ、周囲は、
「踊りたい!」「せめて踊りを見たい!」オーラでいっぱいの人々だらけなのに、
この娘役女優一人がいっこうに、そういう素振りすら見せず、
ひたすら冷めていて、
ただ、しれっと立っているようにしか見えないのは、
ちょっと、まずいのではないか。
この1点で、山場が、がたっと失点してしまうのである。勿体無い。

へたでもいい。
笑われても、いい。
地元の踊り専門サークルの、所属でなくても、いい。
そこでこそ、万感の思いを込めて、踊れ!と叫びたくなった。



「原子力戦争」は、
問題意識の有る題材の割りに、
画面全体にリズムが無く、意外にだらだらとしていて、ゆるやか。
映画表現的魅力は、あまり、感じとれない。

事件を調べる原田芳雄のヒモ男が、
あまりにも喧嘩に弱すぎて、何ともさえない役。
女たらしぶりは、見事なんだが・・・。

死んだ技師の女房役一人が、やや舞台劇風で、
居なさそうなキャラなのが、妙な感じだった。

原発の玄関で、原田氏が無断侵入しようとするシーンのみ、
突然、セミ・ドキュメンタリーと化してしまう所だけが、
一時、心揺さぶられる。
ここのみが、手持ちキャメラの存在があからさまになっており、
ちょっと全体から浮き立っていて、
かつ、前後との連結上、破綻もしているのだが、
そのほころびゆえに、ユニークなり。
いっその事、この感じで、全篇を撮ったほうが、よくないだろうか・・・?


これら2本に比べると、
その又前週(17日)、フィルムセンターで観た、今村昌平監督のドキュメンタリー作品、
「にっぽん戦後史 マダムおんぽろの生活」は、
はるかに<映画>らしい顔を、観客に対し、思いっきり見せつけている。


戦時中に精肉業の実家生活から出発し、
戦後は米海軍の街・横須賀でバーを運営し、金銭の事で悩みつつ、
何かと恋に落ちては又、を繰り返す、
主人公女性の悩ましくも強烈なキャラクター。

その生い立ち、妹や娘との生活感覚の違い、
ベトナム戦線報道と自分との感覚的距離感、などなどを、
あっけらかんと、ケロッとした調子で語りまくる、その語りっぷり。
それをとらえるキャメラの運動性、などが渾然一体となって、
徹頭徹尾、画面が勢いと挑発力に、最後の最後までみちみちている。
つなぎの急速ズームも含めて、疾走。
端から端まで、すこぶる面白い。

ここにこそ、問題意識とは同時、かつ別次元に、
モーション・ピクチャーたる<映画>なるものの魅力を、
確実に、はっきりと、感じ取れる。
そこにはいわゆる<鈍感力>、などというものは、無い。


かくて、あの作品のすごさを思い出しては、
もっともっと、躍動感あふれる<映画>を観たい、
という意欲が、又もよみがえり、
フツフツと、わが内部宇宙に、湧き上がってくるのだった。


以上。











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  1. 2007/05/28(月) 23:58:14|
  2. 劇場用映画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

たてつづけ・・・です

映画は「若者たち」で、
ぱあっ、と笑顔になる青年役。

その後は、NTV系や大映のドラマ出演が多かったなあ。
「おくさまは18才」、「パパと呼ばないで」、
「気になる嫁さん」、「雑居時代」、
「水もれ甲介」、「気まぐれ天使」。
「秘密のデカちゃん」の親子?刑事、
「噂の刑事トミーとマツ」の相模管理官、
「田原坂」では、西郷隆盛だった・・・。

石立鉄男、享年64歳。合掌・・・。
  1. 2007/06/01(金) 23:54:07 |
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