旅人、覚書。
下北沢トリウッドも、このところ、ついぞご無沙汰していたが、やっと戻ってきた。
何のために?
「虹色★ロケット」(伊藤峻太監督)を観るために。
去年観れなかった同所の<高校生映画祭>作品から、セレクトされたもの、と聞く。
トリウッドのロビーが星占いでもするかの様に装飾されていて、あれっ?と驚く。
モギリも看板が、学園祭のブースみたいで、いつもと少し変わっている。
貼ってある新聞記事によると、かなり真面目なテーマの青春映画らしい。
千葉市・幕張の高校生一同(当時)が<命>という、学校のテーマ表現課題作品として制作した1本、とのことだが、さて・・・?
ありていにいって・・・
展開上少々ご都合主義なところも散見するとはいえ、あれだけ真面目なテーマをよくぞ、エンタメ路線にきっちりまとめあげきっているな、との印象を受けた。
しかも台詞が概ね、はきはきして安定感があるので、良質の単発1時間TVスペシャル・ドラマを観ている感じになる。
編集もメリハリがいい。
これはミニ・ハリウッド調、と呼んでもいい。
オペ音声と、謎のむさいヒゲ男の「まだ生きるの?」発言で始まる、この劇映画。
そのデスノートめいた?黒い衣装の男はどうやら<死神>の類らしい、と次第にわかってくる。
前向きで明るい印象の女子高生が、とある高校の新設学科に転校してくる。
ただし、素振りこそ見せぬものの、ある難病を抱えていて、薬を呑んでいる。
そして、気まぐれな<死神>様から与えられた、ある小さな能力を持っていた・・・。
6人のクラスメート男女と担任に迎え入れられる主人公。
割に脳天気な雰囲気の中で、授業が始まる。
臆面も無き、ライトなギャグ&ポーズの数々にまず軽く笑わせておいて、保護者は女医一名以外オミットされた、少年漫画のごとく比較的のんきな世界観を構築。
自主時間(なぜかやたらと多い)にゴミ集め、昆虫集めのゲームをするシーン。
特に、それっ、と一同が両側へ散るシーン。
前半は生徒7人の動きが躍動感にあふれ、画面が弾む。
それらのコミカル・シーンと平行して、次第にクラスメート7人の各キャラクターが紹介されてゆく。
学科クラスが新設された理由と、各人参加までの回想エピソード。
薬物依存と自殺未遂のエピソード、人物の<揺らぎ>表現がハマる。
他にも、いじめられっ子が転じて順繰りでいじめっ子に、それが又別な人物に負けて、という村八分経験談、
<命>を考える授業への、周囲の無関心からくる不満・・・
など、かなり深刻なものもある。
クールに高校生同士を分析する目と、叱咤激励する台詞。
かなり痛いところを、突いている。
しかし、それらのエピソードの大半が長くは引きずられず、学科クラス新設へ向けて、回想内での状況は、次第に<プラス方向>へと軌道を転化されてゆく。
そこにはかつてクラスに居た、彼らの人生観を変えた、ある人物についてのエピソードが加わる。
触媒となったのは、この人物の言動なのだった。
更に、今の時点でなお、自殺しようか?と悩んでいる女子1名の存在。
その理由たるや・・・単純に個人的なものではない。
最早、人類への絶望、ともいえるレベルなのだ。
彼女の心の救済が出来ないか?と主人公とクラスの青年が奔走する。
ここで、主人公のジレンマの一因でもある、特殊能力が示される。
そして、主人公に課せられていたある<掟>と、涙の別れ・・・。
と、一通りのミニミニ・フルコースが、ピリリとスパイスの利いた名台詞の数々とともに、堪能できる構成。
エンディング・テーマと映像も、ライトでカラフルに、凝っている。詰めを怠っていない!
主人公役・松永祐佳、<当たり!>な女優。
結論。
同じトリウッドで観た<子どもの青春映画>たる「ゴーグル」よりは、肩のこらない劇映画。
東宝系のイメージ。
<準・明朗青春映画>として、気負わずにリラックスして観れる。
あなどれない出来。一見をおすすめする。
以上。
本当は、このスタッフ&主演でもう1本、撮ってもらいたいところなのだが・・・?
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- 2007/01/11(木) 00:45:07|
- インディーズムービー
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