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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

もしも映画がイカ墨だらけだったら

主水日記。


ようやく、劇場で、映画を観れた・・・。
「トンマッコルへようこそ」と「おじさん天国」。


「トンマッコルへようこそ」は池袋での公開が終わっているので、何年ぶりかのキネカ大森(ミニ・シネコンのはしり的劇場)まで足を運んだ。
「プルガサリ」観たのもここ、その後は工藤栄一監督最後の現代やくざ映画。中条きよし氏の舞台挨拶を観に来たことがある。

公開から大分経っていることもあり、入りは中年男女や若年カップルを含めて、約20人位。
でも、皆、観れてそれなりに喜んでいる様子だった。

一言で云うなら、韓国エンタメ映画流の、コミカル反戦ドラマ。(注1)
昔、東京12チャンネルで放送された洋画に「史上最大の脱出作戦」とかいうのがあって、あれの応用にやや近い感じ。(注2)

殺伐、凄惨、緊迫した朝鮮動乱の真ん中で、南軍・北軍・米空軍の生真面目な少人数の兵士達がばったり、出くわしてしまう。
すわ、一大攻防戦!

だがその場所が、激戦地からは程遠い、山奥の平和でのどかすぎる位の農村。
村人達の大半は、銃も英語も戦況も、知らない。
村に迷い込んだ南北両軍の兵士たちが互いにののしりあっている横で、淡々と、ミツバチやイノシシ対策の話をし、普段の日常生活を続けている。
村一番の能天気少女は近代兵器の金具で遊びつつ、蝶々を追っている。

それらの有様が余りにものんきで、滑稽さの印象すら与える。
(勿論、いい意味で。)
両軍側とも次第に張り合うのに疲れ、やがてとんだ形での<共同作業>に入る。
かたくなな心が徐々にだが、ほぐれてゆく客人一同。

だが戦況の悪化とともに、痛ましいトラブルが訪れる。
残った者たちは村を救うため、捨て身の戦術に出る・・・。
これがもう、涙、涙。
恩人たちの為にここまで出来る者達が、どれだけいるだろうか。

蝶々の群れ、ポップコーン(!)、イノシシ退治などのファンタジーCGと爆撃機、落下傘部隊、火薬等の特殊撮影とが程よくミックスし、リアリズム一辺倒の戦争映画とは又違った、豊かなる融合の力を見せつける。

「硫黄島の手紙」やリメーク版「犬神家の一族」(両方、予告篇を観た)なんぞよりも、いっそこれを正月映画にもってくればいいのに・・・と心底思った。
(動員しやすいのはわかるんだけど、の声)

南軍側兵士役の一人が何となく、とある若手歌舞伎俳優氏に似て見え、思わずニコニコしたのは小生だけだろうか。


さて一方、ポレポレ東中野の2週間レイトショー。
「たまもの」「かえるのうた」を撮り上げたいまおかしんじ監督の新作、「おじさん天国」。
(タイトルだけで、ぷっ、と吹き出す。)

これ、ピンク成人系枠で最近公開されたばかりの、ホヤホヤ作品。
初日舞台挨拶ということもあって、場内は業界関係者やサインを求める俳優ファンまで老若男女入り混じり、超満員となった。

漁港周辺の町を舞台に、イカ釣りに興じる水産工場の青年と美女、
その青年の伯父らしき中年男性(べテラン・下元史朗)。
この3人が、悪夢と日常生活、現世とあの世を軽々と?往来するだけの、これまたのどかなファンタジー。

以前、亀有名画座があった頃だったか、「デメキング」なる巨大怪獣をいきなりピンク映画の画面に放り込んだいまおか監督の、面目躍如たる奇天烈ファンタジーが展開。
正直、筋をそのまま説明してもあまり意味が無い、そういうおもしろさを含み持った劇映画。(そういう脚本を書く人の感性も、摩訶不思議だが。)

勿論「トンマッコル」よりもずっと小規模の映画で、お説教色も無く、しかしナンセンス度が高くてかなり面白いよ、といっておく。
規模の大小に関係なく、ユニークな作品は存在している。

水産会社の暢気な社歌合唱、イカで一杯の冷蔵庫、イカ墨だらけの風呂、謎の妖怪?女性、クモ(何でそこに?)、閻魔大王(??)・・・

・・・などなどが、幻として、あるいは生者の世界の延長のように、唐突に次々と現れ、観るものをあれっ?と混乱させ、シーン展開のばかばかしさに大笑いさせる。
そこでは虚実の区別など、半ばどうでもよくなってくる。

しんねりむっつりした説教垂れるばかりが、劇映画じゃない。
これ、観ないと損、なり!
(ただし、18歳になってから・・・ってことで、の声)

誰か、「いかレスラー」(未見だが、ばかばかしそうな発想なのはまずわかる)の河崎実監督といまおかしんじ監督を、一度対談させてあげてほしい。
両者におけるナンセンスなシーンの作り方を比較してみるのも、楽しいのではないか?


リアルとファンタジーの境界線を軽々と超越しつつ、しっかりエンタメしてみせる、大小2本の一見対照的映画、案外底部で連関しているのかもしれない。
その<超越>表現自体が、映画というものの、ひとつの存在理由であり、何かを観客に訴えかける力に違いないのだから。



以上。




注1*一時期、南北の融和ムードがあったことも、あるいは制作に関係しているのかもしれない。
いずれにせよ、戦前の日韓併合、戦後の米軍景気特需、と何かにつけて日本社会と南北動乱との様々な関係が時代背景にあるので、複雑な気持ちではあるが・・・。


注2*ジェームズ・コバーン出演の「史上最大の脱出作戦」。
「史上最大の作戦」とはまったく別な、大掛かりな戦争コメディー映画。勿論<プロジェクトX>の同名ドキュメントとも無関係。

第二次大戦中、連合国軍側の米軍兵隊が独・伊軍側のとある村に進軍するが、イタリア軍側はとうに戦意喪失、米軍側ともども村人や村の女たちとお祭り騒ぎを始め、遊びほうける。そこへ米・独両軍本隊の偵察が来ると聞き、一同大慌てで戦争してるフリ芝居を始める・・・
というものだった記憶が。
どこかにソフトないかしら?
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  1. 2006/12/10(日) 00:44:39|
  2. 劇場用映画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

ときはたつ

いつの間にか、短篇「ニワトリ」「プレリュード」の日向朝子監督がプロデビューし、広末涼子出演の「合い鍵」を撮り上げていたのだった・・・。
  1. 2006/12/12(火) 21:59:56 |
  2. URL |
  3. アWorker #-
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