旅人、覚書。
今や全国区の地名となった、秋葉原のど真ん中。
真新しいUDXビルの4F・3Dホール。
普段は「ガンダム」をはじめ、通人系?TVアニメシリーズの劇場版がかかるので知られたホールなのだが・・・
なぜかここで2日間、デジタル実写撮影の<アート映画>がかかる、という。しかも企画が<愛知芸術文化センター>方面。
七里圭監督「ホッテントットエプロン・スケッチ」。
生演奏付き、2日間公開。
(付記*翌週水曜も、ライブ抜きでもう一回上映するそうである。)
シネマアートン下北沢などの映画スペースに置かれたチラシで知った。
え、なぜわざわざ、あのアキバの真ん中で?
なぜ隣駅の御茶ノ水の、アテネ・フランセじゃないんだ?
と、ややいぶかしく感じた。イメージ的にピンとこないのだった。
とはいえ。
3Dシアターは一般レンタルも、やや高額そうだがやっているらしい。料金表がロビー前に張り出してある。
まあ、デジタル・ビジネスで組む大手企業や自治体関係向きだろう。映りがきれい、というアピールにはなる。
そう考えれば、まんざらありえない企画でもない。(注1)
それにしても。
生演奏付きとはいえ、入場料2500円、前売りチケット2200円というのは、アート中篇映画の公開料金としては、ちょっと高い気がするのだが。
料金の2倍で、映画のDVDが一枚買える額!
それは・・・考える。ソフト店が密集するあの地区では。
1000から1500円位でないと、ちょっと気軽には・・・と。
一体どんなものを見せられるのか、わからないんだから。
HP等である程度の予習は、できるんだろうけど。
そういわれるのを見越して、なのか、いや別にそうじゃないとは思うのだが。
受付の内側ロビーには綺麗なシーン写真展、外側ロビーには一部シーンの3D映像体験コーナーがあった。これは、なかなかイイ。
そう、美術展に来たと考えればいいのだ。
女優と紅い色の意匠が目立つ、風景写真展。これらが映画のシーンとして、どうつながるのだろうか?
備え付けの眼鏡を掛けて観ると、前に突出して見えて、ちょっとおもしろい。「スパイ・キッズ」の3作目みたいな原理なのだろう。
うーむ、正面から撮ってる、煙草をふかすヒロインのシーン。
横方向から眺めても顔や煙草の側面は、見えないんだなあ。当たり前か。
やっぱりいわゆる<立体映像>とは別なんだな、と。
映像関係者やその知己・関係者らしき人々で、結構広いホール内は一杯に。知人の姿もちらほら。いわゆる試写会状態。
さて・・・。
ひとことで言えば、この作品は文字通りの、主演女優をモデルにした絵画展、だった。
台詞が一言も無く、たまにその心情を綴る短い字幕が出るのみ。
付き合っている男を送り出して、一人河川敷やトンネルをさまよい、野山で乳牛と歩き、あるいは掘っ立て小屋やアパートの一室で物思いにふける彼女の姿が、若干のアート系意匠・美術的セットとともに、延々と映し出される。
若干の自己愛?らしきものを垣間見せつつ、切なさそうにふるまう彼女の表情と仕草を描く事以外に、筋らしい筋は無いに等しい。
展開がゆっくりゆっくりなので絵画展としては美しいのだが、<映画>としてはどうしても、やや長めに感じられる。
(周囲の客層も、大半がそういう様子に見受けられた。)
恋人以外に登場する<他者>は、たまにすれ違う、フード姿の謎の笛吹き男?のみ。
まるで「ただひとたびの人」(注2)の無口な主役そのもの。
しかしいずれの男にしても、その存在感はきわめて希薄である。
むしろ存在感を見せつけるのは、彼女自身の姿を模した美術造形・・・
一体の等身大人形なのだった。
自身の影、陰画そのものである人形の下腹部には、本人のシャツの下にもあるとおぼしき、黒い大きな斑点が描かれている。
その斑点が、中途シーンに出る乳牛の模様に、イメージの連鎖として連なっている。
どきっとするのは時折、その人形と本人とがほんの数秒とはいえ、区別をつけにくくなる瞬間があること。
2体が同時に写るシーンの後、急に一方のみが布で顔が隠れていたり、水没しかけていたりする状態で映るシーンが出ると、そうなる。
やがて本人が現れると、ああ、こっちかと判るのだが、その間は確実に、両者がもしや入れ替わるのでは?という、ある種の心の揺らぎが生じかける。画面のつなぎ方がそれを誘発する。
その時のみ、昔のATG映画から臭味を抜いて見せたような、既視感にみちたこの映画世界から、わずかながら突き抜けた何かが映画的魅力として、明らかに現出する・・・。
画が動く、観る者の心にさざ波を生じる。
そこに、<映画>の基本を感じる。
以上。
注1: そういえばたしか「機動戦士ガンダム」って最初のは、名古屋の会社が作ってたよね・・・?
注2: 新宿の甲州街道下にかつてあった地下映画館・シネマアルゴ新宿(新宿にっかつ、ロッポニカ新宿と名称が次々に替わった)で公開された、最後の邦画。すごく地味だったなあ・・・。
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- 2006/11/17(金) 07:50:12|
- インディーズムービー
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