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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

不評の謎を探ります

主水日記。


あんまり皆が「ひどい映画だよ!」「つまんないよ!」「本読まないとわかんないよ!」云々、周囲で酷評しているので・・・
「そんなにひでえのか?」と気に係り、結局、シネコンへ確認に出かけてしまった映画がある。
(ぼられてんじゃねえか、やっぱり!の声)


いわずと知れた、話題作「ダヴィンチ・コード」。


フジテレビの2時間特番を観て予習してから観に行ったので、思っていたよりややこしくはなかったし、トム・ハンクスやジャン・レノの(俳優としての)存在感はそれなりに魅せるのだが。
<映画>としての面白さについては、不満が多いのも事実。

冒険小説のセオリーを踏んだ、緻密かつ大胆なフィクション(原作はともかく、これは<劇映画>だから、それでいいのである)にしようとしているのは、よくわかる。
お宝探しにスパイや仕置人みたいな奴が次々に出てくるのも、途中であっけなく察しがつく<最大の秘密>も、冒険小説のお約束とみれば、どうってこともない。
だが・・・

まず、前半がずっと夜の逃走シーン中心で、長い。「必殺」シリーズ式の暗闇シーンが延々と続く。
追っ手や刺客達が、少々うっとうしい。(しかも結構間が抜けている。)
次に、台詞と字幕が、いちいち長い。シンボル群解釈をめぐる説明事項が、多すぎるのだ。
しかもそれらが、かなりせっかちに、どんどん進行する。
パズル解きの部分は「そこ、もうちょっと、時間とってよ・・・」と言いたくなる。
考える間を与えないから、こちらは置いてきぼりを食ってしまう。

歴史解説・再現シーンのパートも、編集がこまぎれに過ぎ、殆どが断片的<絵解き>扱いのみに終止する。
ダヴィンチやモナリザ、関連人物達のキャラ描写すら、言葉による説明ばかりで、さっぱり具体的人物像が浮き立ってこない。(人物自体を出さないでその意志のみを伝達する高等な手法もあるのだが、それにすらなっていない。)
「なぜ、そこらの劇中劇をもっと、イメージ的にふくらませないの?」と、じつに勿体なく見えてしまう。ある人物像に焦点を合わせれば、それは十分可能なはずなのだ・・・。

不評の理由はおそらく、そこにある。題材のキリスト教解釈論自体よりも。
イメージが飛翔する余地、情感を味わう余裕を、持たせていない。
本筋を追うのに必死なあまり、スピード展開の情報処理に腐心した為、ありうるべきイメージ、描写の豊かさが展開の高速度ゆえに、随所で打ち捨てられ、投げ出されているのだ。
そして観客の思考速度を置いて、ずんずんと先へ先へゆく。
まるで詰め込み教育の、スパルタ塾の授業。
そのわりに、<謎>の察しがつくのが、早い。
それらの果てに、とってつけたようなラスト。

題材の是非以前に映画の表現がこれでは、話題性につられて観に来た一般的観客は、2時間半の長尺を辛抱できはしない。
混乱と脱力、失笑を与えるのみ。
カンヌ映画祭でのブーイング続出は当然だろう。

せっかくの魅惑絶大なるパルプ・フィクション?の好材料を、料理し損ねたロン・ハワード監督。
<智>と<動>が邪魔し合って手に余った、と言う他なし。残念なり。
(興行的には成功?なんだろうけど・・・の声)


以上。
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  1. 2006/06/07(水) 20:53:03|
  2. 劇場用映画
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