はぐれ仕事人・弐の、日記。
舞台演劇と、劇映画。
その二者を関連付ける、やり方の一例としては、
先日、BS2でも放送していた、「Wの悲劇」という秀作映画が、あるのだが。
では、ドキュメンタリー&ミュージカル、というやり方の映画では、
果たして、どうなのだろうか?
1月27日夜、19時半より、
御茶ノ水・NEONEO坐。
カンパ・500円で、
随分久しぶりに、当所にての拝見。
ここはささやかなスペースで、
客席には、20人もいない。
今宵は、<ミュージカルの巻>。
約60分強の作品を、2本立て上映。
どちらも、日本生命・企画、劇団四季全面参加作品の、フィルム上映。
いずれも大分古いので、赤色化してはいるが、
無心で観てみると、
なかなか、楽しい!ものだった・・・。
まず、こどものための<名作劇場>・舞台公演記録映画、
道林一郎監督・「王様の耳はロバの耳」。
演出・浅利慶太、作・寺山修司、作曲・いずみたく・・・
という時点で、すでに贅沢すぎる。
振付・山田卓・・・は、よく知らんが。
相当いいセンス、とみた。
さる王国じゅうから、床屋が次々と、城に連れていかれて、いなくなってしまった。
ついに、街中で最後の床屋青年が、連れていかれて、
王宮で、見たものは・・・!
耳が延びて、ロバの耳になってしまい、
耳がやや遠くなっている、王様。
ご機嫌をとりながらも、戸惑っている、
王妃や、臣下(メークした、日下武史らしい・・・)や、詩人達。
秘密保持のため、牢屋に入れられている、父親床屋達。
国中から床屋がいなくなっては、皆、困るので、
父親を押さえている、王様と臣下は、
街で言うなよ!と言い含めて、青年を街へ帰す。
彼が口をつぐむので、街の住人達は、疑心暗鬼に・・・。
ついに我慢が出来なくなった、床屋と詩人が、相次いで、
聖なる森の、木の精達のいる前で、
本当の事を、叫び始めてしまう。
木の精達のこだまが、徐々に街にも、伝わり始め、
さあ、もう噂は、誰にも止められない・・・!
慌てた王様と臣下達は、
聖なる樹木を伐採に、出掛けるのだが・・・。
合唱、人間ドミノ倒し、歌合戦、舞い踊りと、
結構見どころ、満載。
正しいことを、ほんとのことを、
勇気を出して、いわなくちゃ、
王様にわかって、もらわなくちゃ・・・
と、美人の木の精達や、市民の大集団から、
何度となく、言われ続けりゃあ、
そりゃあ・・・誰でも・・・
真実を、白状する?!かもねえ。
(「バビル2世、出ておいで~!」みたいな~??の声も)
観客たる、当時の子ども達が、
小生らのこども時代?そっくり風。
客席に押し寄せる俳優たちに戸惑いながらも、
歌詞カードを見て、歌い出す姿が、おもしろい眺めなり。
ミュージカルの歌詞が、ちゃんと、
小道具係や照明等、スタッフに対しても、
敬意を評しているのが、ほほえましい限り。
2本目の上映。
昭和の日生劇場の、舞台劇を元に、
1975年に制作された、伝記映画。
河村治彦(かわむら・はるひこ)監督、
「ジョン万次郎 海を渡る」。
企画・浅利慶太、脚本・青井陽治、演出・水田晴康。
音楽はこちらも、いずみたく。
ナレーションによる、史実解説付き。
かなり省略が多い、駆け足の紹介、なり。
実際の、撮影当時の中ノ浜から、捕鯨船のある地まで、
ガードのある、アスファルトの道を、
陽光の下、5日間の道のりを、
江戸時代の主人公青年(菱谷紘二)が、漁師姿で、
てくてくと、早足で、進んでゆく・・・。
このオープニング一つで、ぐっ、と引きこまれる。
まさに、駆け足である事こそが、
この映画自体の、表現のテーマになっている。
そして漁師役一同、
砂のセットの上で、捕鯨の準備の芝居を行ない、
やがて船で、捕鯨に出かけて、荒海にこぎ出す・・・。
嵐と吹雪の中で、
彼らのうち5人が、漂流民となり、
鳥島で生活、
やがて、アメリカの捕鯨船に、拾われる・・・。
初めての英語に戸惑う、一同の中には、
市村正親・鹿賀才史らの姿も、見える。
(付:日下武史も、お奉行様で登場。)
以後、荒波の風景とともに、
さまざまな形のイメージ・シーンがはさみこまれ、
映画全体に、さらなるリズムを、与えている。
節目節目で、ぱっと出ては消える、
俳優の顔や、絵画・写真、
洋上の空のシーン等、頻発。
ドキュメンタリーと劇映画と舞台演劇の、
境界線などといったものは、
主人公の体現する躍動感、
視点方向の変化、場面転換のリズムなどとともに、
軽々と、踏み越えられていく。
そこらの眺めがじつに、おもしろい。
そして、困難をモノともせず、
劇中にも出てくる蒸気機関車のように、
前へ前へと進む、
主人公の、明朗さといさぎよさ。
観ているこちらも、心が、晴れ晴れとしてくる・・・。
捕鯨と、船舶建造の夢を求めて、
臆することなく突き進む主人公と、
撮影・仙元誠三(!)の自在なるキャメラワークが、
この映画を、きわめて魅力的な躍動感に、導いている・・・。
一見の、価値あり。
以上。
スポンサーサイト
- 2011/01/28(金) 00:36:39|
- 映画(全般)
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0