主水日記。
7月10日・土曜。
例によって午前中は、仕事。
午後2時より、高田馬場・BABACHOP。
この日は、通称マシューさんこと、
故・立花修一監督の、一周忌上映会。
最新作「アネモネ」を完成せぬまま、
彼は唐突に、事故により、
天国へと、旅立ってしまったのだ・・・。
(付記:「アネモネ」は現在未完成のため、
予告篇のみが2回、上映された。)
ここの上映会の常連にして、
彼の友人・周兵衛氏が、司会。
故人の奥さんや、作品複数出演の星野佳世女史、
ドキュメンタリー作品に出演の、劇団メンバー、
BーDASH他の常連客・スタッフに加え、
多くの関係者が、彼を偲んで、既に集まっていた。
作品鑑賞中や、現場の思い出話などでは、
涙する者も・・・いた。
作品内容の一部が、彼の死生観らしきものに、リンクしていて、
なおかつ、遺影写真を前に、では、無理もない。
泣いている人に、どう声をかけてあげればいいのか、
と、戸惑う気持ちが、
観客の小生にも、やはり、ある・・・。
彼が周囲の人々に、好かれていたのは、間違いないのだ。
小生にとっては、まず、
軽いドタバタ・コメディ、「誘うっP」?の監督であり、
次に(野方で?)観たのが、風景撮影の綺麗な「紅葉」だったので、
両者のギャップに、不思議な感じがしたのだが。
周囲の自主映画関係者にとっては、叙情と風景画の要素がメインの、
「夏の終わり」シリーズ3部作の印象が、深かった模様。
せめて、上映される作品を観、
皆と献杯する事をもって、
氏への追悼に、代えたい。
以下、当日上映された、監督作品群。
(注:司会の説明によると、
監督当人の意向により、封印された初期作品群が、ある模様。)
「Concert(コンチェルト)」:
監督当人が、実質的デビュー作、と位置づけていたという、
30分弱の、ファンタジー・ミニドラマ。
昼間の公園で一人、
自主映画をVHSビデオ撮影している、監督(演・太田文平)。
そのカメラのファインダー越しに、ありえないものが、映っている。
自主映画撮影の途中で、事故(車らしい)で急死したはずの、
出演女優(女子高生?)が、
今、動いて、こちらに話しかけている・・・?
マイクで音声が拾えるので、ようやく、
その場に彼女の幽霊が、笑っているのを、納得した監督。
彼女は後一週間で、成仏して、消えてしまうという。
自分の映画が未完成なのが、この世での心残りなのだ・・・。
そこで、共演者の男性を呼び出して、彼女と<共演>させ、
映画シーンの残りをすべて、演出・撮影することになって、というお話。
カメラ前でおかしな顔をして、
ほらほら、いるよ~!とふざけてる、幽霊女優。
幽霊にもマイク越しで、ダメ出ししている監督。
ちょっと、笑える。
しかしながら、その後の現実経過を考えるに、
今やこれは、泣けてくる内容なのだった・・・。
「紅葉」(再見):約30分。DV。
上映前の説明によると、
音楽家・神宮寺司氏との、実質的共同制作作品。
監督好みの、<姉妹の絆>もの。
回想シーンに白い枠を付けて、過去と現在を交互に見せるので、
なんだか、昔の松竹文芸映画風にも見える。
妹役女優の、可愛らしさと、いじらしい演技が光る。
隣の青年を入れて3人で、ラブコメ的回想譚?と思いきや、
姉の恋人出現と、男の子の死により、
たちまち、何か抑えていたものが、表面に出始めて・・・
ああ、そうなるか~、と。
とにかく、女優を伴っての紅葉ロケが、綺麗に取れている 。
マシュー作品の多くは、映画イメージの作り方においては、
叙情入りの風景写真家、というか、
心のきれいな、キューブリック?みたいな印象が、あるのだ。
「ドロー・ザ・カーテン」:
劇団<インプロモーティブ>の公演準備状況を記録した、
20分位の、DVドキュメンタリー。
実は今回、この作品が、特に面白かった・・・。
背景と人物とをイメージ的に、きっちりかっちり合わせた劇映画とは、
また、まったく違った、映画の魅力。
俳優・女優達や女性演出家の、いきいきと弾む、
動きと表情の魅力を、垣間見せてくれた。
舞台衣裳も含めて、観ていてじつに、楽しい。
こういうのも、撮っていたんだね・・・。
この線の映画作品も、もう少し、やってほしかった気がする。
そして、彼の路線ではメインの、三部作。
「夏の終わり ~幻影~ 」(再見)
二人の大人女性が、幻影のように、
山地の川を、歩く。
それを見た、小さな男の子が、
驚いて、逃げる・・・
というだけの、DVなのだが。
何か、冷やした水のような、
ひんやりと、涼やかなものを、感じる。
「夏の終わり2 ~初恋~ 」(再見・既述)
形のいい山、田園や花畑、そこに姉妹を置く。
のどかな、夏の夕暮れの風景。
とにかくそれが、撮りたかったんだろうな・・・と。
「夏の終わり3 ~星の約束~」(事実上の遺作)
3作目は、監督に依頼されて書かれた、
河野亜紀女史の脚本を、映画化。
監督の好きな要素を、脚本で可能な限り入れた、という。
黒磯ロケ入り。
森林風景と別荘、星空の下、
元は3姉妹だった、妹2人が、
子供のころ病死した、姉の思い出を、語り合う。
妹の一人は、映画監督になっていて、
海外へ出掛ける前らしい。
姉が語っていた、流れ星を、
今、観に来ていた2人は・・・という、
ささやかな、お話。
バイオリンの、お姫様めざまし?シーンが、ちょっと愉快。
小生の職業上の事もあり、難病ものは、苦手なほうなのだが、
終盤が、心にくいまでの・・・ファンタジー。
泣かせてくれるじゃないか。
まさか、これが遺作になるなんて。
上映終了後、恒例の打ち上げで、
一同、献杯を行なう。
ここで、ある疑問が起こる。
議論のテーマ、というべきか?
素材がほぼ9割方、撮影済みであり、
予告編までは、出来たものの、
まだ編集が残っている、「アネモネ」本編を、
関係者一同は、なんとか、完成させたい意向。
その場合、編集をした人との、共同監督名義で、
完成作品、ということに、なるのだろうか?
あるいは、エイゼンシュタインの<遺作>のように、
撮影エピソード・記録等を、追加してつなげて、
<未完作品>として、お披露目するのだろうか?
撮影・編集中の映画の、全体像については、
毎回、終盤ぎりぎりまで、周囲にも秘密主義だったらしい、
マシュー監督自身の、最終的意向は、
最早、完全にはわからない、だろう。
できるだけ、近いであろう形に・・・
というのは、あり、だと思うのだが。
映画本来の脚本や、
結末の付け方や、まとめ方のプラン等、
細部についての、
自筆文章か、記事でも、残っていればいいのだが。
それと、追加撮影は、必要かどうか?
というのも、あるだろうし・・・。
う~む、これ以上は、わからん。
考え込んでいると、
だんだん、頭が、こんがらがってきてしまうので。
ここから先は、制作サイドの領分、
彼等の判断に、任せたい。
とにかく、予告編を観た以上は、
どのような形であれ、
ひとまず一つの作品として、<完成>された映画作品を、
ちゃんと、観たいものだ・・・と。
と、若干の議論の後、帰宅す。
酔いが早く回り、
ぐっすり、眠る・・・。
明日は、もう一人の、
小生にとっては大きな人物の、
追悼を、せねばならないのだ・・・。
以上。
付記:
黒磯には昔、小学生時代に、一度だけ行っている。
学習塾の冬合宿で、周囲は豪雪だったのを、覚えている。
なお、12日になって、昼のニュースで知ったのだが、
10日には、劇作家で演出家の、つかこうへい氏が、病没していた。
合掌。
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- 2010/07/11(日) 12:58:35|
- インディーズムービー
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| コメント:6
<内田美優様、
メッセ-ジ、ありがとうございます!
ごぶさたしております。
まあ、とりあえずは、元気です。ハイ。
読んでいていただいて、うれしいです!
今年の春にも、シネマ秘宝館、寄ってきましたよ。
又、ライブやイベントのある機会を、楽しみにしております。
お兄様にもよろしく、お伝えくださいませ!
- 2010/07/13(火) 01:01:35 |
- URL |
- アWorker. #-
- [ 編集]
ご挨拶が遅くなりました!
追悼上映会でお会いしたインプロモーティブのこざわです☆
飲み物でも少々お話させて頂きました。
「アネモネ」はどんな形であれ、世に出して欲しいですね。無かった事にはしてほしくないというのが正直な気持ちです。
ささやかですがマシューさんが繋げてくれたご縁だと思いますので、今後とも宜しくお願いしますm(_ _)m
- 2010/07/20(火) 18:12:12 |
- URL |
- こざ #-
- [ 編集]