政の、日記。
ちょっと戻って、20日、土曜。
昼間、再び京橋、フィルムセンター。
篠田正浩監督特集、最終日。
「乾いた花」。(注1)
1964年・松竹大船。
池部良・加賀まり子・杉浦直樹・他出演、モノクロ。
お勤め終えて出所した、池部の渋い中年やくざが、
賭場で派手に遊び、刺激を求める、謎の女・加賀に出会い、
意気投合、つかの間の交際をする、ロマンス。
そこに新興組織の、勢力進出がからむ。(注2)
教会や、洋風バーのシーンに、ジャズやクラシック調の音楽が重なり、
日本のやくざ映画にしては、フランスあたりの洋画の様な、現代的な雰囲気。
その分、後に池部が多数出演する、仇打ち侠客物と比べると、
カタルシスに、乏しい面もある・・・。
ああいう路線の映画をあらかじめ、裏返してみせたような印象も。
かつてのライバル同士だが、手打ちをして、
ギャンブルや洋食を共にし、世間話をする、
宮口精二(注3)と東野英治郎(注4)のシーンでは、
場内にいっぱいの高年齢層男性達から、どっと笑いが起きていた。
古風な親分達が、そういうのをやるギャップが、ウケていたらしい。
若き佐々木功(注5)が、
仇打ち野郎から、あっさり転換、
元・仇を「兄貴!」と慕い、調子良く交流し始める変節ぶりが、
いかにも現代的で、可笑しい。
加賀の正体は、終始あいまいなまま。
本業の暗殺で、しっかりとキメた主人公が、
スパッ、と置いていかれるようなラストが、クール。
「処刑の島」。
1966年、大映映画として公開。
岩下志麻・新田昌・佐藤慶・小松方正・三国連太郎・他出演、カラー。
いきなり、人が断崖から荒海へ、落ちる。
ある島の沖に、かつて流人島だった小島が。
そこへ20年ぶりに、訪ねてきた、
ミシンのセールスマンらしき青年(新田)。
地元の小学校教師や、土建業の社長らは、
次第に、彼の正体に気付け始め、慌てる。
実は彼はかつて、対岸の感化院におり、
罰則で渡らされた小島で、
三国の酪農場主に、牛馬同然にこき使われたあげくに、
長年、死亡者扱いにされていた、過去があった。
彼は今、あの頃の真相を確かめ、決着をつけるために、
再び、現れたのだった・・・。
この旧軍人調の農場主が、とんでもない、横暴な奴で。
小島では、誰も、逆らえないのだった・・・。
「釣りバカ日誌」シリーズや、皇潤CMの三国しか知らない人には、ショックかも・・・?
でも本来、こういう、独自演技派なんだよね、三国連太郎って。
こんな暴君親父でも、ひたすらかばう娘(岩下)が、不憫だ・・・。
難を言えば、
構成上、過去の重大事件が二つ、ってのが、ちょっと無理があったかも。
なら、何で二度目のとき、早めにそいつと、気付かなかったんだ?という。
しかし、離島ロケは迫力だ。旅情を誘うぜ。
篠田監督、すでに「スパイ・ゾルゲ」(注6)で、引退を表明しているが。
この日の観客の間でも、「再登板ないの~?」と、結構、期待されていた。
だからまだもう一発、何かやってくれそうな?予感も・・・などと。
終了後は、渋谷・ユーロスペースへ。
<桃まつりpresents うそ その弐>。
つづく。
注1:
同じ篠田監督作品のラインアップに、
「乾いた湖」という映画があって、
よく間違えられるが、これはまったくの、別な作品。
三上真一郎主演、岩下志麻も出演。
60年代、学生運動の嵐の時代に、
そんな周囲の学生達を、醒めた目で眺めて、
だらだらと遊びまわりつつ、
独自の野望を抱き、大物に接近するも、
挫折する青年が、出てくる。
しかし、「あんな独裁者かぶれの、運動家学生がいるのか?」などと、
批判される事も多い、やや理屈っぽい作品。
注2:
この作品以後、池部良は、
東映映画でおなじみの、古風な殴り込み侠客役が増えた。
注3・注4:ともに、黒沢明監督作品の常連。
東野は悪役スターから、TBS版「水戸黄門」の初代主役に。
その実子が、「ウルトラマンタロウ」副隊長や「あばれはっちゃく」父ちゃん役の、東野英心。
注5:
後に名曲「宇宙戦艦ヤマト」を歌う、
歌手・俳優の、ささきいさお。
注6:
2003年公開。
「おくりびと」の本木雅弘も、出演。
実写部分は悪くないんだが、
まだ技術開発途上だった、
「写楽」以来の、CG風景描写が・・・ぺったんこで。
「三丁目の夕日」の頃に、出してれば・・・と。
なお、岩下志麻は現在、篠田監督夫人。女優現役。
ドラマの傍ら、ときおり、魔法びんや炊飯器のCMで、ユニークな味を出していたっけ。
「極妻」シリーズの終盤頃、
とよた真帆出演作のとき、
銀座へ、公開舞台挨拶を観に行ったら、
壇上に立っていた。
目の前で、指を拳銃ポーズにして、「今、これもんです!」やってたよ・・・。
かっこいいぜ、岩下志麻。
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- 2010/03/21(日) 21:28:52|
- 劇場用映画
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