主水日記。
2月13日、土曜。
日本時間、午前11時より、バンクーバー冬季五輪が、開会した。
ワシントンのドカ雪とは対照的な、雪不足、
直前での、濃霧・悪天候の予報、
練習中の事故、
レゲエ風ヘッドの日本選手が、叱られる?など、
しょっぱなからトラブル続きなようで、
どうも、心配な様子だが・・・。
大荒れの予感が、している・・・。
この日は、午後、池袋の新文芸坐へ 。
<追悼・森繁久弥>特集。
「小早川家の秋」「ふんどし医者」の、2本立て。1300円。
「小早川家の秋」は、
松竹大船の名匠・小津安二郎監督が、
珍しく、東宝の宝塚映画へ出張って、撮り上げた作品。(注1)
京都の、老舗造り酒屋の話なので、
台詞が大半、やわらかく上品な、関西弁。
大手との合併話が出てくるのが、
いかにも、高度成長期らしい。
(つい最近も、合併話がこじれた、酒造2社があったな・・・の声)
森繁久弥は、子持ち未亡人・原節子との、お見合いを勧められて、
その気になりかかる、中小企業の社長役。
野球サインのシーンが、笑える。(注2)
小津映画恒例の、反復台詞、多発。
司葉子のOLは、台詞が少し、堅く感じるが。
宝田明や、「ちゃうちゃう」山茶花九の所では、
それがユーモラスな、味わいになっている。
実質的主役は、中村雁治郎(注3)の、大旦那様。
娘達姉妹が、
とにかく、この人の、のぺた~っとした、
だだっ子混じりの、人を食った言動を、
眺めているだけで、おもしろい。
新珠三千代や、藤木悠とのやりとりは、実に可笑しい。
こういう笑わせ方は、何となくだが、藤田まこと氏が浮かぶ。
終盤の葬送シーンは、我が年齢もあって、
いささか、感ずるものが、あったのだった・・・。
川辺と、煙突と、笠智衆。
これぞ、小津版家庭映画。
同時上映の、稲垣浩監督、東宝モノクロ映画「ふんどし医者」。
幕末、大井川の渡し場が舞台。
「青春とは何だ」・夏木陽介が、
博打場で、男尽くしの、イカサマ野郎の兄ちゃん稼業。
ある日、森繁扮する蘭学医と、博打好きの妻(原節子)に出会って、
彼の人生は、一大転換を、迎えるのだった・・・という話。
長崎帰り、江戸へ向かう途中、川止めを食らった事から始まって、
二人の蘭学医が、別々な人生街道を、歩んでいたのだった・・・。
後半、見識の遅れを悔やむ主人公に、涙、涙。
こういう課題は、多くの医師にとって、永遠の命題だろう・・・。
夜は、渋谷ユーロスペースのレイトショー。
隣の「おやすみアンモナイト」も、客入りがまずまず、良いようで。
こちらは、<日活ロマンRETURNS>1本目、
新作の、中原俊監督版・「団地妻 昼下がりの情事」。
DV撮影。
しかしながら・・・
この作品、脚本が、
あまりにも現代的で、シリアスなため、
全体に雰囲気が、寒々、冷え冷えとして、
寂しさ、侘しさ、物悲しさがいっぱい。
公団団地の過疎化、居住老人の孤独死、
失業、リストラ、主婦バイト先の不足、
ワル女子高生の、携帯悪用犯罪・・・。
初代・白川和子の出し方も、
ファン的には、果たしてあれで、いいのだろうか?
あまり、心うきうきする内容では、ない。
エロスの点では、申し分ない頑張りとはいえ、
いわゆる、心ときめく<ロマン>からは、ほど遠い印象を、
満場の観客に、作品が、与えてしまったようだ・・・。
ロマン路線の復活祭を観に来たら、
見せられたのは夕陽のレクイエム、みたいな感じすら、あった。
まあ、そういう人間社会の中に潜む寂しさを、表出した作品群は、
かつてのロマン路線にも、数多く見られたものだから、
それ自体は別に、間違いでは、ないのだが。
不景気・政情不安の今は、
そういう不安感のが初めから、世間の表に出てしまってるので、
ドラマが一層、暗い印象を与えているのだった。
唯一、溌剌とするのが、
エコ濾過機の販売員男性と、主人公主婦の、
赤ちゃんプレイ?入り、遊戯シーン。
ばかばかしいほど凝った、ここのシーンは、見どころ。
お互いに、それぞれの抱えた、甘えや寂しさを、
浮気で、まぎらわせている感が強く、
その辺では、二人の好演、胸に迫るものがあった・・・。
ラストなど、ちょっと、泣かせてくれる締め方。
だから決して、悪い出来ではないのだが、
これの1本立てだと、何だか、寂しさ気分が募ってきて・・・。
それと、ピンポンダッシュでいたずらする、少年が、
ちょっと存在感があって、面白いのだが、
つなぎ程度の活躍しか無かったのが、まことに、勿体ないのだった。
もうちょっと、女子高生達をひっくり返すとか、
近所の主婦をからかうとか、
折に触れて、他のキャラとからめて、
いたずらっ子として、ささやかにいろいろ、遊んでほしかったな・・・と。
あまり増やすと、全体のトーンが、変わってしまうのだろうが・・・。
というふうに、気になるところも、ややあるとはいえ、
これに引き続いて、このロマン路線が、
新しい血を注ぎ込まれ、まずは連続性を持って、
復活して行ってほしい、と願っている。
この次に、新版「後ろから前から」公開も、控えてることだし。
(それが狙いかい!の声・・・)
以上。
注1:
1961年秋、東宝公開。
大手映画会社による、監督や俳優の専属制、
いわゆる五社協定の力が、まだ強かった時代のはずだが、
当時東宝所属の、原節子と司葉子が、松竹映画へ出演していた事と、
東宝サイドのプロデューサーが、熱望した事とにより、
小津監督の東宝撮影が実現した、といわれている。
注2:
資料等によると、この映画の撮影時、
小津監督に「アドリブはいらないよ!」と言われた、
アドリブ名人・森繁氏は、
むきになって、アドリブ演技の芸を、
カットがかかっても、見せまくった、といわれている・・・。
注3:
後に、「必殺仕事人」初期、
将棋会館の元締として登場、藤田まこと氏と共演。
第二話の締め方など、
まさに雁治郎御大のために、あるようなシーンで・・・。
スポンサーサイト
- 2010/02/14(日) 09:52:33|
- 劇場用映画
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
はじめまして。同じ2本立てを観ました。思わぬ拾い物「ふんどし医者」はよくできた映画だと感心しました。見事な構成でした。
- 2010/03/13(土) 00:46:52 |
- URL |
- シーラカンス #-
- [ 編集]