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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

<第2部>若干追記篇・その10「猛牛」

梅安の、日記。


3月4日・土曜、夜。


リミッター無しの、猛牛。

園子温監督の「冷たい熱帯魚」は、
まさにそういう、手ごわい劇映画だった。


で、結論からいえば・・・。


たしかに、表現的にも心理的にも、
容赦なく残酷、エロ、血みどろ、
かつ、シビアな家庭崩壊劇の内容で。

何しろ、いわゆる<実録犯罪路線>の劇映画だから、
このどぎつい映画に、拒否反応を示す人々が、
大勢居たとしても、決して不思議ではない。
これはまず、今日の地上波TVでは、放送は無理だろう。


ただし、やや不謹慎とはいいながら、
作り手が意図したのか、否かにかかわらず、
思わず笑わされてしまうシーンが、所々にある分だけは、感心した。

一部類似した犯行内容を扱っていた、
別な監督の手による、「OUT」という映画よりは、
数段、ましだ・・・と見た。


あまりにも壮烈なグロさや、
欲望丸出し、人間関係のこじれの表現等が、
時として、ふっと力を抜いたときに、
傍から見て、ナンセンスな光景に、転じて見えることは、
往々にして、あるもの。

「OUT」では、
仕掛けられたはずのナンセンスが、まったく弾けぬまま、
ただの嫌な、痛々しい話として、
不快な画面の連続で、終わっているのが、いけない。

主役の女性達の、ヒステリックなキンキン声の大音量や、
DVシーンのきつさと長さ、等のせいだろう。
余裕というものが、ないのだ。

「冷たい熱帯魚」では、それらの要素が、
おっちゃん俳優たちの、なりきり怪演と、
芝居の間の空き方とにより、
結果的には一部が、ブラック・ユーモアの類に転化されている。

特に、茫然となるのは、
でんでん扮する、大型熱帯魚店主・村田。
何て奴なんだ・・・。

やりての商売人であり、従業員教育者であり、早口であり、
説教親父代りであり、人格を見抜く術にたけており、
なおかつ、尻軽であり、詐術屋?であり、
手慣れ過ぎた?犯罪者であり、
心の古傷持ちでもあり・・・。

もう、ほとんどこの人の、ワンマンショーに近くなっている。
膨大な台詞の大半は、でんでんが、しゃべっているのではないか。

主人公・社本(吹越満)の、
静かなるおびえっぷりや、途中よりのキレっぷりも、
村田の女房(黒沢あすか)の、節操無き色情狂ぶりも、
弁護士らしき男(渡辺哲)の、豪快さとコワモテぶりも、
社本の娘(梶原ひかり)の、
父母に対する、徹底した冷めっぷりも、
それはもう、皆、大したものだが。

村田役・でんでんの、表裏一体な怪演、
自信過剰でむちゃくちゃな悪役ぶりが、
全篇を見事に、食いまくっている・・・!

ようするに周囲が皆、彼を中心に、
ピッチャーとキャッチャーの関係に、なっているのだ。
すべては彼の、手のひらの上。

行方不明者を追ってきた訪問者達を、
必死でごまかす、芝居のシーンなど、
じつに空腹絶倒もの、なり。

吹越の後妻役・神楽坂恵の、
愛しさと、エロと、切なさと・・・の好演も、見逃せない。
ほぼ終始にわたり、夫の前で、困り顔をしている、
その表情には、なぜか、惹かれるものがある・・・。

吹越と神楽坂の、2人だけで語らうシーンは、
殺伐とした悲喜劇の中では、何だか、ほっとする。
娘を気絶させるシーンなどは、
可笑しささえも、感じる・・・。

それだけに、あの終末は、
何とも、哀しいものがあった・・・。
そこまで彼は、すべてを、突き放してしまうのか・・・と。


父親と子、家族の崩壊と再構築、という、
いつもの園流ギタギタ節が、
またしても、リミッターを取っ払い、爆発した。

猛毒・猛牛の名にふさわしい、暴れん坊映画、なり。
とにかく、おっちゃん達が、強烈。
(諏訪太郎も、いるでよ!の声)

これから観に行く者は、
自らを、お毒見役だ!と思って、覚悟めされい。



以上。


 




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  1. 2011/03/06(日) 10:04:16|
  2. 劇場用映画
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<第2部>若干追記篇・その9「陶酔」

はぐれ仕事人・壱の、日記。


3月4日・土曜、午後。



14時頃より、上野オークラ。

今週も、過去作中心ながら、
竹洞哲也監督特集・3本立てで、
舞台挨拶&トークショー付き。


トーク前に、うどん屋映画(後述)の、
ロケ時回想、一部関係者インタビュー映像が、流された。
映画と逆で、スタッフ側を女優が撮影、
そこちゃんとコメントしなきゃ、等々言われているのが、
ちょっと面白い眺め、なり。

竹洞監督自身は、あまりしゃべらず、
撮りが済んだものはいいから、次をどうするか?という感じで。
司会のイ幸田李梨・サーモン鮭山氏、女優の沢井真帆らが、<翻訳>している風だった。
岡田智宏・岩谷健司・津田篤ら男優陣も、集合。

又、この日の挨拶は、公開準備中の次回作に出演の女優、
<櫻井ゆう>の御披露目も、兼ねていた。
まあ、健康的な感じだった。

企画の脚本家・小松公典氏が、大車輪で活躍、
これは「たまの映画」PRか?という位に、
薄着シャツ姿で、目立っていた。

場内には、イ幸田ファンらしき若年女性客も、
ちらほらと、見受けられた。



「妹のつぼみ いたずら妄想」。
これは以前、観たかもしれない。


最初、暗所で吊られてお仕置きされてる、青年登場。
な、何だ~?

未体験者キラー、と異名をとる、豹柄水着の風俗嬢が、
またしても、イ幸田李梨。
青年と事をいたす場所候補に、ランキングを付けるくだりが、笑える。
いくらなんでも、そこはヘンだろう、という場所も、出る。

だが、青年の周囲には、彼の掟破りを許さない、
ショッカーみたいな、奇妙な組織があった・・・。

ある写真の女性を、女神としてあがめ、
トップに帝王をいただく、
頑固にチェリー第一主義!の、地元男性達の組織。
だが、この青年は、主役ではない。

唐突に、同じ地元在住らしき、中年スーツ男性と、
その若き再婚妻が、いちゃいちゃしながら登場。
その男性の、息子たる気まじめ公務員(岡田智宏)、
そして、その妹である女子高生(赤西涼)も、現れる。

この公務員兄貴、ところ構わず、
女性に対しての妄想癖が、ついつい出てしまう男。
かなりテンジョンが高い、岡田の怪演、
興奮動作連発に、笑わされる。

受験生である妹のそばに、
家庭教師の眼鏡青年が、やってくると、
不安からお兄ちゃんは、さらに興奮。
二人が、仲睦まじくならぬ様にと、
あれやこれやと、妨害工作に出るのだが・・・。  

お察しの通り、このお兄ちゃんこそが・・・なのだが。
女優達より出番が多く、完全に主演、といっていい。
「場所が違う」!とイ幸田を、足から引っ張りだすシーンなど、爆笑ものである。

無理やりな、ほのぼのエンド(なのかな~?の声)にも、笑えた。




さて。
なかみつせいじ扮する、頑固そうなうどん屋店長に、
「ざます~!」連発・吉沢明歩が、
ケロケロ・カエル娘を演じて好評の、
「悩殺若女将 色っぽい腰つき」(既述・検索可)。
実はその続編が、今日の上映にあった!のだ。

それは・・・


「桃肌女将のねばり味」。


ケロケロ娘は今回、ちょっと旅行中で、
うどん店の一同は、お留守番。
サーモン扮する男おネエ様?が乱入、前作のパロをやっている。

なかみつ店長に、娘(青山えりな)が、
若き日の修行旅時代にあった、エピソード・ゼロを訊く。

やや不良っぽい兄ちゃん風、
赤い上下スーツに腹巻、まるで別人・・・。
(このキャスティングに、
ごく一部で疑問?の声も・・・でも面白いぞ)

イ幸田李梨は、その頃下田で出会った、うどん屋の店員。
いずれブードキャンプ・ダイエットで、世に出る!
と言ってる、陽気なお姉ちゃん。
研究でインドに行く、と言って水着のまま、海へ。
(おいおい、泳いでゆくのか~?の声)

その回想ドラマに登場する、下田のうどん屋の女将が、
今回の主演・沢井真帆。
涼しげな浴衣が、よく似合う。
出会ったばかりで、いきなり?お床入り・・・早いよ!

そこにいる、うどん職人との間で、
うどんや塩にぎり作り、
秘めたる恋などを巡り、丁々発止に・・・という話。

和風ロマンス、徐々にいいムードになる。
なかなか、心温まるお話、だった。



さて、所は移動して。


19時過ぎより、テアトル新宿。


このとき小生は、ロビーで入場時間を待ちながら、
かなり、ナーバスになっていた・・・。

熟慮に熟慮を重ねて、自ら決意した事とはいえ、
その映画を観る、という事は、
そのときの小生にとっては、
「空手バカ一代」の飛鳥拳が、猛牛との決闘に赴くような、
緊張する心境が、あったのだった・・・。 

その、映画の名は・・・
 


「冷たい熱帯魚」。



つづく。

  1. 2011/03/06(日) 00:27:14|
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