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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

夜をいろどったのは8ミリシネマ

主水、回想。


2/3(土)夜、下北沢界隈。

息はいっこうに、白くならない。
雪はいまだに、関東には降る気配も無い。
東京西部では早咲きの梅が一ヶ月も前倒しで、咲き出しているという。
記録的大暖冬。

節分の行事?を終えた後、
22時30分、シネマアートン下北沢に入場。
夜通しの、秘蔵8ミリフィルム上映&トークショー。
<オーバーナイト・センセーション -八チミリハオワラナイ- >。

<over8>一同と、<フィルム文化を存続させる会>への賛同企画を行なう<FILMZM>チームの、共同企画。
2000円均一。

奇特なる?挑戦者男女客、20代に年配層男女が混じり、約40~50人。
司会・酒徳ごうわく監督。
トークゲストが篠原哲雄監督に、
山崎幹夫監督、8ミリ映画解説の雄・マディ折原氏、
自主映画の浅野優子・高遠瑛・守田法子・倉重哲二監督。
(内村茂太監督は欠席す。)
これだけのメンバーと作品はおそらく、そうそう、集まるものではないはず・・・だろう。(初対面の人も多いから)

さあ、一大耐久レースの始まりだ・・・!
80年代、90年代、2000年代のフィルム撮影作品群が、一同に会する夜。


<第一部 「感触的な刻印」>

「TOKYO LOCATION」(篠原哲雄、198?年/25分)

監督とカメラマンが交代で撮影しつつ、東京の街中をだらだらと散策するだけの記録フィルム。84~89年の間頃だろう。
途中で音声切れ、サイレント画面を今の監督自身が、生トークで解説す。
(こういう光景が、昔のフィルム上映会ではよくあったな・・・の声。)

何と、いきなり、京成上野~日暮里間、<博物館動物園>駅構内!
地下の薄暗い、常に人気の無いホームと改札、出口の丸屋根。
小学生時代、父に連れられてよく、上野公園に行くときにここで降りていたのだ。思わず、なつかしい光景。
銀色の補強財は後から組まれたものだろう。昔は無かった。
そこを抜け出るとあの、美術館地域が見えてくる・・・。

鶯谷(うぐいすだに)の線路下、水天宮周辺にあったというレトロな建物、廃墟内の窓と、ガランとした部屋・・・
8ミリフィルムの中に、<ぼやけ>のかかった、80年代の東京都市風景。
皆、取り壊された今となっては、当時を知るに貴重な映像なり。
一部建物のシーンには立ち入り禁止の札も写っていて、
「これ無かったら、ここの中も撮っときたかったなあ・・・」
と関係者が回想談。いわゆる<廃墟シネマ>のはしり。


<第二部 「映画ごっこをやり続ける」>

「散る、アウト。Chill Out」(山崎幹夫、1984年/24分)

冬の雪深き、札幌近辺で撮影。
自分は何者?と悩んでいるらしき少女。
なにやら相談事で怪しい識者?に会いに来た。
その識者の部屋経由で入り込んだ地下道は、人々の住む別世界、迷宮と化している。まるで映画「サブウェイ」。
こういう、アリスや宮澤賢治方面等に近しい、<迷宮>発想のシネマも昔、すごく多かった。
80年代や90年代前半のPFFにもよくあった、(デ・ジャ・ブな)光景が次々と展開。
又、地上では雪上を若者達が、山の向こうへと滑り、あるいは駆け出してゆく。
ただそれだけの8ミリ映画、当時で言うパンク、自問自答のアートめいた世界観が横溢。
これまでもが、まるきり<懐かしの風景>になる日が来ようとは・・・。ノスタルジーには勝てぬ季節が、小生にも訪れた。

続く「往復V」は山田勇男・山崎幹夫両監督、50分。
2人の間で相互に長年送りあってきた、ビデオレターならぬ8ミリフィルム・レター文通の、最終回。
もう、フィルムが無くなりそうだから2006年分で終わろう、ということになった旨。
ほとんどが普通の街路・風景移動撮影(録画、のほうが近いか)を交換しつづけているもので、部外者?のわれわれには、具体的メッセージもよく見えず。(まさか暗号とか・・・無いよね、の声)
今回一番、長く感じた・・・。

この時点で既に、午前一時を越えていた。
眠くて前方をにらむ?客もあった様子、司会達もちょこっと困り顔・・・。小生も休憩時間に、コーヒーで一服。


<第三部 「果てしない 粒子の鼓動」>

ここからはしばし、8ミリアニメーションのファンタジックな世界に。
各出席監督が映写室で、フィルムを扱いながらの上映。
丁度、上野の美術館でアート展に行っているような感触。

上映中に1箇所、フィルム切れが起こったが、
修復の間はごうわく氏が「こういうのも8ミリ上映会の中でよくあって、トラブル状況をも含めて楽しむんですよ!」と解説、
ゲスト席から「映写室、どうですか?」と生中継番組化、
ユーモラスに場をつないだ。呼ばれて正解の人、なり。

「クレーターのなる木」(横須賀玲子、1987、3分)
実写シーン洪水上映の後なので、何だかほっとする、墨絵アニメ。シンプル、かつ、のびのびとやわらかい曲線。肩の凝りがとれる。

「木の中刺す魚の気」(浅野優子、1985、6分)
三角錐、万華鏡、ライトな色彩ながら、かなり厚みと立体感のある描きこみ。実相寺監督に見せたかった。

「阿片譚」(倉重哲二、2000、13分)、
漢文で章の区切りが入る。セピア色のフィルム画面、1930年代の上海、煙草を吹かす酔っ払った風な男の人形が、部屋で手足をゆっくりゆっくり動かしている。虫が大きくなって見えたり、変な幻想を見る。
孤独で静かな夜の情景。
こういう絵はDVよりフィルムのほうが、半分油絵みたいで合う。

「流転軌道」(昼間行雄、1984、20分/DV上映)
実写の暗い自室、一人裸で手首を切り自殺しかけた女性が、夢の中で謎の女性に導かれて、銀河鉄道のごとき小旅行を体験するミニ・ファンタジー。
手作りミニチェアや切り絵らしきアニメが、特撮式に使用され、実写フィルム画面に自然に溶け込んでいる。
畑の実写部分ではスモークも見える。
部屋のラジカセや電話も、ちょっと80年代風。やっぱり懐かしさが。

「わたくしの細胞に燐火を燃やし」(守田法子、1886、6分30秒)、画用紙にクレヨンで一枚一枚描いた、という女神のなめらかな動き。水色?の薄い、単純な曲線でゆったりと描かれたスケッチ画。


続いて、幻灯童話「星の葬 -ホシノマツリ-」(2004年、25分)、
および「ALBIREO」予告編(5分、天然色長編幻灯童話、現在本編製作中)。


<第4部 くつの中にダンゴ虫を入れられない為の「小型映画」>

酒徳ごうわく監督、8ミリ傑作選、とみずから?銘打つ2本は、過去にもシネマ秘宝館や芸社関連イベントで、大笑いさせられたものだった・・・。

「戦火を逃れた幻の百フィート」(1995、6分/DV上映)。
古い蔵から貴重な戦時中フィルムの発掘、みたいなシチュエーションを構成、しかし白黒フィルムには、まるで別な意味で貴重な、晴海のアレが・・・。予想通り場内、強引なナレーションにバカウケ。

そして、「恐怖の未知無知生物X(エックス)」(1998、10分/DV上映)。
有名人、ほxろのせいで、エイリアン・・・。ぐちゃぐちゃ。
<終>マークでえ~!!の笑い声が。そりゃそうだ。
オールナイト、長丁場のクッションには、ちょうどいいのだ。
(なんとまあ、ここのラインアップ中に、大胆な・・・の声)

引き続いて、内村茂太監督の<傑作集>。

「富士山とジョン・レノン」(5分)
「砂肝」(5分)
「おしゃれ29/29」(24分)

これらのフィルムはいずれもおおむね、主役たる男性(内村氏であろう)の果てしなき彷徨(ほうこう)を日記帳式で観客に見せつけ、軽く笑える状況や物言いを観察させる為にある。
彼が四六時中キャメラに向かって、歩きながら、あるいは車にて、アバウトに移動しながら、何やかやとナレーターかたがたぼやき、つぶやき続ける。
富士山の前で、五合目?で、ジョン・レノンの眼鏡姿を真似し、
仕事をほっぽらかしては日帰り旅行を敢行、帰りては妻に怒られ・・・。
行く先々でまるで子供のように遊び、はしゃぐ主人公。
ほんとうにたわいのない、記録ともバラエティーともつかぬのどかな光景が、微笑ましく感じられ、なぜか、いとおしい。
その行動のデタラメさ、無邪気さ、ええかげんさが、ちょっとだけ、うらやましい・・・。


<第5部 「見て触って感じる映画」>

ついに、午前4時を過ぎた。
さすがに、朦朧(もうろう)としてきたが。
最後の力?をふりしぼる。

監督にして演出家、ダンサーの万城目純、挨拶の後、映写室へ。
タイトル未定の、高台の屋敷、そこから見える浜辺、地上の森林や野山の草木を移したフィルム映像とともに、ミニ・ライブ演奏会。
ギターの増田直行、トュロールなる弦楽器を奏する<水・メビウス・佳>?による、澄んだというか弦をこするような、演奏。

何というか、絵やキャメラがあまり動かないジム・ジャームッシュの初期映像(以前、日比谷シャンテ・シネ会場時のPFFで観た)に、
小説<スーホの白い馬>の楽器が付いたような、
夜明け前には妙に心地よい・・・演奏空間だった。

明け方5時過ぎ、日曜。下北沢の空はまだ、暗かった・・・。


帰宅後、朝食のパン。
半日、熟睡す。


以上。


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  1. 2007/02/09(金) 20:32:59|
  2. インディーズムービー
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