竜の、追憶。
やっと、劇場版「シルバー仮面」を、渋谷のレイトショーで観た。
映画というより、3部構成のDVD向けオリジナル・ドラマなのが、「ミラーマンREFLEX」と同様だった。
ただし、その中身はクール&オカルトな「REFLEX」とは、かなり様相が違うのだった・・・。
案の定、ロビーと客席は濃い感じの男性客で、熱っぽく埋まっていった。ノーゲストの夜にもかかわらず。
(うーむ、むさい!の声)
白髪の紳士や、女性客もごく数名あり。
皆、旧作「シルバー仮面」や、「アギト」の話などを、知人どうしで楽しそうにしていた。
佐々木守&実相寺昭雄・原案、
中野貴雄&小林雄次・脚本、
実相寺昭雄・北浦嗣己・服部光則の昭和&平成ウルトラマン3監督で順に1話ずつ、
というメインスタッフでありながら、このオリジナル3話構成新作、円谷プロの製作ではない。
故・実相寺監督が70年代に創設したコダイ・グループの実質的制作である。
70年代に元祖・TV版「シルバー仮面」(注1)が円谷製作の「ミラーマン」(注2)と他局どうしでバッティング、視聴率争いとなった因縁は、いまだに深いのだろうか?
さて、映画はまず、ATG映画でもおなじみの、斜めに傾いた画面から始まる。
虚無僧とピエロが怪しげに、和服の女に迫る。
おお、やってる、やってる。
途中、急に挿入される、短い早回し画面、仏像をすっと縦に撮り上げるキャメラの動き。画面にささやかな運動性とサスペンスを加える。
鏡の間に、舞台上格闘、拍子木。
和洋折衷、ごちゃ混ぜワールド、万華鏡。
これぞ実相寺節、集大成。
舞台が大正9年、1920年なのが意外な設定。
レトロ調帝都の真ん中に、女性が黒い死体と化す怪奇事件が連続発生、陸軍機関の青年が内々に調査を開始する。
この辺は「怪奇大作戦」つながり。
助手役として、後に有名作家となる人物も、しっかり登場する。
この作家関連で実相寺組の映画化が多い、といえばお分かりだろう・・・。
科学実験と称した見世物舞台を構築、
空爆気球船を飛ばし神出鬼没、
宇宙人達や鋼鉄ロボット(どう見ても、「メトロポリス」のロボットそのまま)を従え、
時空間を自在に操り、
自ら<カリガリ博士>と名乗る白塗りの怪人が悪役。
石橋蓮司が飄々と、怪演。
オカルト魔人とマッド・サイエンティストを合わせたような能力を持ち、
人類に皮肉な笑い声と捨て台詞を吐く男。
強力エックス線、電磁波、サブリミナル心理効果、音響効果まで悪用して人心を惑わし、パニックを起こすのが得意。
メトロン星人や「帝都物語」の加藤保憲、「バットマン」のペンギン男あたりとは、ご親戚じゃなかろうか?
更に、対するシルバ-仮面に変身する人物が、女性。
変身道具は、<ニーゲンベルゲンの指輪>。
その出生の秘密には、森鴎外の小説「舞姫」のモデルとなった女性がからんでいる。
大正時代の文化爛熟、かつ騒然たる背景があるとはいえ、日本に、果たして来ていたのかどうか?と唖然とするような人物までが、唐突に登場するのだ!
米騒動とか、もう少し画面的に触れて欲しかった時代背景もあったのだが。
(長くなるから?の声)
特に第2話では、
空飛ぶ機関車、魔女信仰再燃と迫害、
ハンメルンの笛吹き、小人の怪物男(赤星氏!)など、
民話、伝承の類も材料に織り込まれている。
とある人物が頓智で指輪を手に入れるシーンなど、まるで、世界絵本昔話全集のよう。
この知恵比べが、後で又引っ張られて、
切迫した状況下に、とんだ珍妙さ、微苦笑を呼ぶことになる。
もう、何でもあり。
不思議なのは、1911年、ヨーロッパの母子放浪時代回想シーンで。
ドイツの村人達が皆、日本語の台詞でしゃべっている事。
吹き替えの無いシーンでも、日本語。なぜ?
(東京のシーンではドイツ人役は、ドイツ語使ってるのにな?の声)
日本国内の外国人俳優総出で、撮影されたためなのだろうか。
ドイツ語がわからない人も、多いんだろうな・・・と。
<民族優位>論者に反発し、
「差別も無く誰もが対等な、自由な世の中が来る!」事を願っている探査役青年を観て、
「あんな国家軍人がいるか!」などと怒るなかれ。
あれは作家の願望かもしれないよ。
それに当時だって一人位居ても、おかしくないんじゃない?
戦前、っていっても第二次大戦時じゃないんだし。
みんながみんな、大義名分だけで生きてたはずが無いじゃない?
普段は映画に行ったり、カフェーに行ったり。
広い世の中、そういうもんだよ。
横っちょで世間一般の思いもよらぬ事に関心持ってる、実相寺監督のような人も、結構居たんだろうなあ。きっと。あの時代も。
割に、おとなしい終わらせ方だったな、と。
主犯の事がなお未解決、気になる。
「世界の先はどうなるかわからない、でも、飛び込んでいくんだ・・・」
これ、今の僕らにとっても、そうなんだよな。
少なくとも、単純なレトロ回帰で終わらせない、
芯のある所を見せてくれたのは、大いによろしい。
良い意味での、勇気の言葉、ととらえておこう。
変身女性の台詞、じゃないが。
実相寺昭雄監督、長い間、僕らに<夢>を、ありがとう。
後の事はこのスタッフ一同に、様々な形でしっかりと、受け継がれてゆくことでしょう。
さて、もう1本の遺作公開を、静かに待つとしますか・・・。
日記、以上。
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- 2007/01/08(月) 02:00:24|
- 劇場用映画
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