主水日記。
1/28(日)、午後、野方区民ホール。
岡本泰之監督「MILKMAN」(ただし修正版)、
金子大輔監督「MILKMAN B」上映、
および・・・
同じ岡本監督の新作、「MILKMAN2」御披露目上映の会。
ああ、あまりにも、長かった・・・。やっとこの日が来た。
思い起こせば、
今は無き池袋SCUM2000、<シネマキャバレー>上映会にて、
「MILKMAN(1)」の1本目を観て、あまりのすごさに仰天させられたものだ。
カルチャー・ショック、といっていい。
1990年に8ミリフィルムで撮り上げられたという、驚異の映像劇。
「MILKMAN(1)」は・・・
どのような解説、説明もむなしくなるほどに、強烈なホラー・シネマだった。
が、同時に、ホラーにしては、コメディともいうべき可笑しなシーンが目立ち、
又、単純なるパロディとも何か少し違う魅力さえも、随所に散見されるのだった。
ある男の陰謀で特殊薬物入りの牛乳を飲まされて、ありえない幻覚を立て続けに観た主人公(SCUMの主・加藤義勝氏、力演)が常軌を逸した行為に出る、というだけの筋だが。
とにかくその描写の連打は問答無用、やぶれかぶれ、
グロくて、ナンセンスで、美女が出て、
主人公は俗に云う、<ラリってる>状態。
痛くて、いたましく、かつ、ファンタジック。
いやさ、クレイジーそのもの。おそろしい。
むちゃくちゃな狂気と迫力と、めまぐるしい勢いと幻惑性に満ちた、
まさしく幻想短篇映画の王者であった。
(今回の修正版では数箇所、モザイクがかかっていた。)
その後、「MILKMAN2」の予告編を、バージョンを変えつつ、
繰り返し、繰り返し、SCUM2000で見せられ続けてきた。
もうすぐか、もうすぐか?と期待させられては、
その後もロケ参加者が増えて、シーン追加、編集が延びた、
と幾度と無く聞かされ、
ああ、また延びたのか、いったいいつ、本編が観れるんだ?
もしかしてこれも、どこかの映画同様に、
予告編のみで、中途でぽしゃってしまうのか?
と、ぼやく日々・・・。
その完成作をついに掛けぬまま、
SCUM2000は去年の正月をもって、きれいに消滅した・・・。
このときからはさすがにあきらめて、
「多分、もう、我が生涯中には本編観れないな・・・」
と、ぼやいてきた。
そして、半ば忘れかけていた。
かくてこの約3年、待たされに、待たされた。
突然、旧SCUMのHP上に完成の報告と案内が出たので、びっくりさせられた。
「今度こそ本当に、完成だろうな・・・?!」
と、心底はらはらしながら、映画としての出来栄えをいささか心配しつつ、会場へと向かったのだった。
ホールとロビー、打ち上げも含めて、
さながら、SCUM2000の同窓会?のごときメンバーの大集合とあいなった。
なにしろ、出入りしていたかなり多くの面々が、この「2」ロケに参加しているのである。
入場40人ほどの客席にも、舞台挨拶にも、一部出演者の方々の姿が見えなかったのは、残念なのだが・・・。
折角の機会なので、是非再会したかった。
あいにく小生は、出演していない。
1作目「MILKMAN」の再上映に引き続き、
岡本監督のご学友・金子監督がそのNGシーンとメイキング、プロモーション・ビデオを混ぜて<べストヒットUSA>調にした、
「MILKMAN B」なる作品も、併せて上映された。
こちらはややおとなしいポップアート、といった感じだった。
「B」の後、前作ミルクマン役俳優氏のお祝いメッセージビデオ(わりと普通だった)に続き、休憩をはさんで、
ついに17年ぶりの続編、公開。
上映状況に関しては、若干の不満が、なかったわけではない。
場内が旧SCUMより広くて、人垣が散らばったせいか、期待した凝縮感がやや薄れていた。客席、いまいち反応がおとなしい。
もしあの倍ぐらいの人数なら、と惜しまれた。
それと会場周囲への騒音対策からだろう、音楽のボリューム、グルーブ感?がやや低かった。
旧SCUM内だったら、音響効果と凝縮感を出すには、ちょうどよかったかもしれないのだが・・・。
とはいえ、デジタル・ヴィデオで完成された「MILKMAN2」は、やはりというか相当にイカレた、かつ、十分すぎるほどに、変な活気にみちみちた、恐るべき幻想・妄想奇談ワールドとなっていた。
オープニングでご丁寧にも、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」張りに<鑑賞上のご注意>を出す。
既にそこから笑わせておいて、おもむろに観客誘引・幻惑化にとりかかる。
前作の主人公(無論、加藤義勝氏演ず)が、過去のトラウマを克服すべく通院中。
(ドクターがシネマ愚連隊のあの方、というのがすでにSCUM風味のほんだし・・・の声)
しかし。
公園で謎の男(こいつも前作キャラつながり)の手により、
ホームレスに配られていたパンと一緒に、
つい受け取った牛乳がくせ者で・・・
そう、またしても・・・
後は、殆ど説明不要だろう。
仕掛けた男に囚われた主人公には、犯人に消されたとおぼしき人物達のゾンビ?も見えてきて、
切迫した状況はついに、「敵討ち!」の様相を呈する。
たっぷりの新撮シーンに一部前作シーンも織り交ぜて、
凝り性でグロくてサイケで細かいイメージカット編集、
映し出される人物達のエネルギッシュなクレイジーぶり、
洋画ロールへのオマージュ、等々・・・
飛躍・幻想・妄想・諸氏共演(狂演・饗宴ともいう)シーン、大集積。
無論、美女!も出る。
しばしば、斜めにかしいでは揺らぐキャメラワークが、全体の不安感・幻惑感をさらに加速する。
それらの果てに、情熱的猛烈ダンス、生xxの転がり運動、ゾンビのミュxxxル、などといった狂気のカーニバル・シーン群が襲ってくる。
前作を観た後だと、2倍味わえる。
グロでシュールな可笑しささえ噴出する。恐怖と交互に、だが。
そこでは、これはホラーだとか、コメディーだとかいうジャンルの固定化すらもはばむ、何か映画全体を、海岸の岩場に見かけるアメフラシのごとく軟体生物化するような力が、働いている。
監督が関西出身である事も、あるいは関係しているのかもしれない。
そして同時に、あくまでも劇映画中の話であるとはいえ、あんな薬物実験は絶対にやっちゃ危険だよね、と何となく納得させられもするのだった・・・。
以上。
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2007/01/31(水) 22:35:23 |
インディーズムービー
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旅人、覚書。
調布で鑑賞可能な作品を一通り観終えて、名残は惜しいのだが、もしかしたら初日にも入場の可能性が?と考え、あえて移動を決意。
シネマアートンへ、下北沢へと、草木もなびく。
30分位前に受付へ着いたら、幸いにして整理券、20番台あり。
後から続々、多数の来場者が大集合。
開始時刻の20時半にはたちまち満席、その後も補助椅子が目一杯出る大盛況。やっぱり公開初日は、にぎやかなほうがよろしい。
(ぴxの出口調査隊はどうした!の声も、一部・・・。この日は「どろろ」を始めとして初日作品がかなり、多かったための模様。これだけ観客がいるのに、勿体無い。)
川野監督&一同の挨拶トークを補助する福島監督、この人が勢いよくしゃべり出すと何故か聞いていて可笑しくなり、吹き出してしまう。天賦、とはこの事なり。
9本の短篇、最初は<近未来の設定><8ミリフィルムで撮影><デジタル・ヴィデオ(DV)で仕上げる>の3条件で企画されていたそうだが。
出来上がった作品には、未来なのかどうかあいまいなものや、時代劇まで含まれているので、「おいおい・・・!」なのだ。
(似たような製作状況下のオムニバス企画の成果を、去年もどこかで観たような・・・?の声)
宣伝チラシに細かく書かれている設定が、画面からは読み取りにくいシーンも、一部見受けれられる。(後述)
それに、休憩無しで一気に9本、というのは少々、長い感じなので、できれば前半5本位やってから5分か10分休憩し、残りの4本を見せたらどうだろうか?とも思ったのだが。
8ミリらしいくすみの掛かった映像の味、DV直撮りではまだまだ出しにくそうな、それぞれに幻想的空気を醸し出している。
ムードある弦楽器・雅楽等の音楽使用などもなかなかよろしく、まずはシネマアートン版「世にも奇妙な物語」風アラカルトに仕上がった。
作品、簡単に紹介。
「days of」(福島拓哉):再見。
サイレントで字幕も無いため、いきなり観たらば多分、近未来設定がよくわからないだろう。
が、何かに追われるヒロインの疾走と絶叫シーン、画面のめまぐるしくせわしない動き、彼女を眺める謎の男、などを観ているうちに、設定をあえて読み取らなくても十分、という気持ちになり、<映画>らしいテンポと躍動感が伝わってくる。そういう作品。
「Sole wa Sole ソレハソーレ」(川野弘毅):特撮ドラマのパロ。
これもサイレント、ただし字幕入り。
コイン・ランドリーで、黒い特殊スーツを洗濯する中年男性(おそらく再就職)、見るからに悪の組織らしき若手戦闘員に笑われ、パシられてる。悲哀。小銭が無い彼に手をさしのべた青年は・・・。
そして悪のお仕事中に、とんだ偶然が。
で、タイトルどおりの・・・。悲惨だ。苦笑。
同時上映、「ヒャクレンジャー」、だったりして。
「化け石」(桑島岳大):ウエスタン調。
ゴールドラッシュの化石発掘版。
荒涼たる山岳地帯の風音、ドライなタッチ。ムードは出てる。
オチに物欲競争の、むなしさが、じわ~。
「結晶都市」(品川亮):現代版、逆「春吟抄」
イタ~イ、男女交流哀話。
ヒロイン、声でわからないのか?と疑問。
信じられないラストにも、呆然。
なぜかミニチェア&人形付き。昔のNHK人形劇みたい。
「ラーメン」(前田弘二):日活ロマン風。
いきなり裸女が出る。けだるそう。
設定に<温暖化が進み・・・>とあるが、画面からはわからない。
別に只の暑い夏でもこの女は、脱ぐ。多分。
女の元彼氏に男がなりきる芝居、というのは前にも別な作品で観た気が。そりゃ、なりきれったって無理。
終わりのサインも唐突。もう、なるようになってくれ!
「ムゲントイスべス」(大野賢三):意味不明。
・・・一番、設定が何だか、よくわからない。
設定を読むとさらに・・・さっぱりわからない。評価保留。
「秋刀魚の日」(伊刀嘉紘):ご家庭ホラー。
きょうは秋刀魚(さんま)が安いのよ、という台詞の繰り返し、主婦なら夫に普通に言うだろうが、主人の異常なおびえ様からして、まず・・・・だな。
これまた、オチがどうもつかめない、あいまいな締め。困惑させられる。
「画龍点晴」(永野敏):
最初は地味で、セットも蜘蛛の撮影も肩がこる・・・ことだろう。
武士切腹、往生際に辞世の句をめぐる悶着と<解決法>。
点一個で、この騒動・・・。
なぜか山本浩司氏が浮かんだのは、小生だけ?
「燃え上がる生物」(蔭山周):
引き裂かれた姉と弟、SF哀話。
せめて最期の幕は、夕日の中ひそやかに・・・。
「ブルークリスマス」思い出した。
以上。
2007/01/28(日) 14:30:00 |
劇場用映画
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旅人、覚書。
週末、1/27、土曜。
異常事態、発生。
たった一日で、短篇映画を計24本、観た・・・。
初訪問の調布グリーンホール、<おかしな監督映画祭・4>で5本X3コーナー、計15本。
シネマアートン下北沢、20時半よりのレイトショー、<over8>でぶっ続けに9本。
内、下北沢の1本は確実に1度観ているから、初見作は23本、ということになる。
他にも2、3本、過去に観たものがあるかも?としても、20本近くにはなるはず。
1本あたりの長さが3分から16分前後までの作品が殆どなので、可能だったのだが。
スケジュールの都合というのは、おそろしい。何て日だ。
<おかしな監督映画祭>から触れておこう。
自由闊達なシリーズ上映会が毎年一月頃、高円寺某ライブハウスにて継続中、という噂は聞いていた。
4回目は調布のホールに会場を移しての第四弾、とのこと。
トークの司会は、主催者・かわさきひろゆき氏と女優・里見瑤子。
里見女史とVシネマや映画・テレビ・音楽PVなどで活躍する10人の若手監督が中心になって、自主枠で映画を作ってゆく会、というのがそもそもの成り立ち。自主枠中心の監督も参加している。
したがって会場には必然的に、ピンク&自主映画双方の関係者やファンの姿が多い。
皆、熱心に作品に見入って、楽しんでいる。
この日も14時より昼の部がスタート。15時過ぎから入ったが既に、50人以上が集まっている。十分盛況といっていいだろう。
今回は3人のメイン女優、水原香菜恵・間宮結・里見瑤子が、監督と企画を自ら選択し、各人主演5本ずつの作品、三部構成で計15本が並ぶ、というもの。
元々、舞台女優なのだから、いろいろな役を演じてみたくなるのは至極当然。たまには自分で、好きな役を選んでみたくなるものだろう。
勿論、お色気シーン要などの縛りは無いから、作品企画は自由奔放、バラエティーに富んでいる。
一本始める前に入る<映画祭アイキャッチ>がたのしい。カラテ・バージョン「成敗!」篇には笑った。
華がある上映会&明るいトークは、見ていて心から気持ちのいいものだ。
時間の都合が無ければ、夜の部の表彰式まで居たかったのだが、まずは遅れて来ても昼・夜で全作品(しかも皆、初見作!)を、半日で一通り拝見できるよう組まれた時間割に、大いに感謝したい。
日頃多忙な人々を大勢呼ぶのならば、たとえばこの位の工夫、心遣いが大切なのだ。こういうイベントは、応援したくなるのが人情。
ごく短めに、そのラインアップを紹介してみよう。
(括弧内は監督名。なお、一部作品で予告とタイトルが変わったものもある。)
<1・水原香菜恵出演作>
「ての鳴るほうへ」(今村洋平)
実家から札束で別れさせられる男女、という定番哀話。市電車内でピエロのパントマイム、が空気を和らげる。
でも、あのミもフタも無いラストは・・・「俺の空」?
「もぐら」(マイト)
打ち上げで芝居褒められるも、生活ハード、ありがちな役柄にぼやく、ピンク女優の嘆息。グラスに落ちる煙草の灰が・・・泣けて、じわ~。
「とらわれの華」(高橋美季)
男から別れを告げられた女、ふっきろうとしていろいろやるが、なかなか忘れられない。
「とらわれないように、と、とらわれてる?」「がんばれ私!」と悩む姿がお元気体育系ながらも、いじらしい。
「東京Days」(前田万吉)
作家志望だが芽が出ず幾年、故郷に帰る男。その彼を見守って来た優しい女。思い出多きこの部屋を出て、今日は別れの日。普通にいい話。
短冊字幕がほんのり、一番女優の笑顔が多い。好感度アップ。
「crisper」(今泉力哉)
心の人じゃないとはいえ?折角いい女と下宿に2人きり、さあ今夜こそ男になるんだ青年!でもその優柔不断と弁解が・・・何たる弱腰、じれったい奴。用意は周到にしときましょう。チャンチャン。
<2・間宮結出演作>
「よろず屋Lちゃん」(磯英弥)
必殺・何でも屋のお加代みたいな助っ人稼業、威勢のいい女にある男をコテンパンに、と依頼あり。逃げ足の速いターゲット男に難儀する。
イケイケ、勢いはあるんだが、決戦が何で・・・公園で熱い鍋のハンペンを?どういう勝負なんだ、ルールがまったくわからん!
でも一応ハッピーエンド?だよね。
「ラクエン」(豊永伸一郎)
焚き火を囲む自殺志願男女4人のマジ対話。わりにNHK教育TV的?議論内容。
トークで知ったが台本も台詞も無く、すべて想定アドリブだそう。演技者達の日頃の人間性がにじみ出ていそうだ。
「DOLL」(RANKO)
ライブハウスで上京青年が出会ったマリコという女は、かつて人形展で見かけた人形にそっくりな人、だった。マリコと人形の、偶然な因縁。
シャンソン風の歌手とバーのマスター、女の部屋の人形、小粋で洒落た雰囲気。ちょっといい話。
「セイケン」(前田広治)
地味なお掃除会社仕事、ライバル会社同士の作業勝負合戦を、無理矢理ゲーム漫画同然にバージョンアップ。
床下からスッと出る助っ人、強引な必殺技、プロの誇りと友情。大オーバーにCGTOアクション満載、ナンセンスな歌までつけて、大いに笑わせる。場内もバカウケ。
今回、一番面白かった。あまりのおかしさに2度、観た。
「回転実験」(荒木憲司)
音楽プロモ風、空き地に鉄塔、防菌服に手製ロケット、ぐるぐる回るCG模様と風船いっぱい、イカルス星人も出そうな宇宙空間にもだえるヒロイン、幻惑世界で銀タイツ宇宙人化。
これだけの高度技術がありながら、なぜか、操演の糸はまるまる見えていた・・・。それも又楽し。
<3・里見瑤子出演作>
「暴霊の橋」(若林立夫)
夜、歩道橋の上で迫力のカンフー使い、通行人をぶちのめして路上へ落とす、こわーい女の幽霊役、里見。どつかれ役男性が気の毒なような、うらやましいような・・・?
なぜ都合よく歩道橋に鉄パイプが落ちていたのか、なぜ女の背中からも鉄パイプが出てくるのかは、定かではない。
「blue」(世志男)
ホームレス中年男と航空帽少年(少女?)が盲目の純粋少女を故郷へ送って、富士五湖へ向かう旅に出る。
そして奇妙な結末、別れと再会。
舞台調でボーイッシュになりきって動き回る里見、心弾む好演。
「あいのえいが」(宮野真一)
前作の延長上にある発想。女優の熱烈なファンが、女優と自分だけのために1本の映画を撮り、悟りきったような想いを告白する、切なきお話。
折角だからもう1本、対外的な作品、撮ってあげればよかろうに・・・。何だか勿体無い。
「エンザイ」(福島拓哉)
設定字幕だらけの始め方、ちょっと読みにくい。
戦争激化社会、亭主は義勇軍出兵、残された女房はいっそ楽になろうと狂ったフリをするうち、配達男と浮気し、近所の噂になり、やがて本当におかしくなってゆく。
次第に開放されてゆく、思いっきりな演じっぷりが、じわじわ恐怖を呼ぶ。こんな世界、こちとらも願い下げ、なり。
「Old Friends」(森山茂雄)
離婚して地元の街に帰っていた、煙草スパスパ、コワモテ態度のきっつい女。
昔の同級生でいじめられっ子だった男に自転車で町中追い回され、クサッてキレる。彼に暴言を浴びせ続けるが・・・。
煙草を渡されて泣き崩れる女が、切ない。
<over8>については、後日、別記予定。
この項、以上。
2007/01/28(日) 02:59:58 |
インディーズムービー
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主水日記。
さっきまでTV放映で、「赤い月」を観ていた。
海外大陸ロケらしい大作感こそ出てはいたものの、以前テレビ東京でやっていた高島礼子版ドラマに比べると、随分大雑把に跳ばしている。
数奇な運命に振り回されつつ、たくましい意志の強さと立ち回りで生き延びる人妻、
大陸での時局迎合商売でのしあがった夫、
罪の意識にさいなまれつつクールに任務を実行する男、
人妻の元の恋人である軍人、
人妻と夫の子である姉と弟、
というメンバーが、終戦時の混乱に翻弄される話だが。
生き延びるためとはいえ、人妻の言動が初めからあまりにも自由奔放かつ能天気にすぎるため、単に男好きで、ホイホイ男を乗り換える女にしか見えず、逃亡の苦労も何も、まるで胸を打たない。
こんな人、子供2人の言うとおり、さっぱり理解できない。
お色気シーンがきれいという以外は、腰砕けの一篇だった。
さて、先週、「犬神家の一族」以降観た、劇場用映画。
フィルムセンターで「ザ・タイガース 世界はぼくを待っている」。
GSサウンズ・ブームのアイドルバンド映画。軽めのドタバタ。
バンドの音響でUFOの運転が乱れて不時着!アンドロメダ星の姫様がジュリーにベタ惚れ、追い回す宇宙ロボット、ファン女性達、なべおさみの付き人、小沢昭一の刑事らと一悶着。小松政夫は追っかけお嬢様のお付き役。
<星の王子様>が案の定、円楽。ろくな星じゃないな・・・。
銀タイツの天本英世、珍しく情けない役。
<シーサイド・バウンド>でUFOから「さあ、皆さんも、ごいっしょに!」、でもフィルムセンターのお客はやっぱり、反応しなかった。
三軒茶屋で「紀子の食卓」(後述)。
シネヴェーラ渋谷、丹波哲郎特集で「怪談 累ヶ淵」、「お熱い休暇」。
片や「牡丹灯篭」そのままに、愛と嫉妬でおどろおどろ、半分はヤサ男の優柔不断が悪い。真冬なのに納涼向け。若き丹波は酷薄な陰謀浪人、ひでえ奴。因果応報・・・。
片や、三木のり平の観光客とと丹波哲郎のスパイがバンコクで珍道中、松岡きっこもガイド役で巻き込まれて、まるで「バーディー大作戦」。
ロケ自体がのんきに慰安旅行?な気分。現地へ行くよりは安い。
新宿で「007/カジノロワイヤル」。
華がない?筋肉質男、ダニエル・クレイグ起用のゆえに前評判が悪かったのだが、観たら意外に良かった。
脚本が原作寄りにリアルに、ハードになっているからだろう。
TVの「水戸黄門」が石坂浩二版で史実を入れて最初からリニューアルしたのと同様、原点回帰に徹したのがニュー・ボンドの渋い魅力につながった。
この筋なら、スターっぽくなくても大丈夫。
組織内部の裏切り者処分、お色気人妻口説き、きつめの台詞で挑発するヒロインを軽くいなし、カジノでの丁々発止、ブラフをかましあう心理戦、水没シーン、と見所のつぼはしっかり抑えている。
クールな新任ボンドがグラッ、とたじろぐ落差、人間くささがたまらないのだった。
特に心を揺さぶったのは、「紀子の食卓」。
新作「007」と並び、意外な出来の良さ、人間くさいドラマとしての、コクの深さがあった。
さて、どう語ったものだろう・・・?
恐怖のどぎつい、痛い血まみれ心理ホラー「自殺サークル」の続編的色彩の強い、園子温監督の「紀子の食卓」。
これまた、奇妙な快感とどぎつい不快感が交互に襲い来る、あなどれない秀作となった。
ただし前作よりは、その硬軟のさじ加減は多少、好ましい。
前作を知らなくても、そのねじくれきった青春心理サスペンスを理解することは十分に可能、なり。
友人の風俗嬢化、高校での広報部活動、ネットサイトでの同世代通信交流等を通じて<外の世界>に目覚め、親に反発、平凡な田舎の町から家出し上京した女子高生の長女・A、
そのネットサイトの仲間達を都会で受け入れ、奇妙な<仕事>を手伝わせて組織に引き入れていく、他人の<下手な演技>にひどく神経質な<演技派>女性リーダー・B、
後から同じサイトを見て、もし自分も家出したら親がどうなるかをシミュレーションしてみた上で、自らも姉を追って家出する次女C、
A・Cの家出に悩んだ母親の死後、新宿の集団飛び降り自殺事件の報道を足がかりに、新聞記者の勘で娘達の後を追って真相にたどりつく父親D、
という4人の視点から、各人によるいささか過剰なまでのナレーションとともに、時間を一部前後しながら、いつもの園監督流に年中揺れる画面と疾走するリズム感の中、ドラマがスピーディーに進行する。
変わっているのは、BがAやCをリードしている組織の仕事が、ある種の想定芝居、そのための<演技力>を必要とする仕事であること。
しかも、いささか自己啓発セミナーじみてもいる。
のめりこみすぎると、想定芝居中のまま、壮絶な死を迎える場合も・・・。
Bの時折見せる過度な苛立ち、逆ギレの一因も、その職業病ゆえに発している。
自らの過去をふっきり、あるいは人生の空洞を埋め、生活史すら<想定>で作って暮らしている仕事。
演技の才能を発揮して、相手の孤独感を一時埋めてあげる稼業。
見ていて何だか、涙ぐましくすら見えてくる。
しかし、<時間切れ>だからといって、感情芝居に移入しかけたお客様を「お前、大人だろ!」と怒鳴りつけるのは、ごひいきが必要な<接客業>らしからぬ失態ではないのか?
さて、押井守の漫画でも読まされている様な、それらの迷宮の延長上に・・・
Dはもう一人の人物Eを呼び、想定芝居の世界にのめりこみきったA・B・Cとの間接的コンタクトを仕掛ける。
かくて、A・B・C・D・Eが同席する、<マジ姉妹&ニセ母>VS<ニセ父&マジ父>という多重構造の、とんでもなく緊迫した猛烈演技バトルが展開する。
ここらで観客は、もう、頭がクラクラしてくる・・・。
そうした過激な状況の果てには、最早、何が本当で何が嘘かなど、何ほどの事でもなくなっている擬似世界がある・・・。
そして、更にそこからの逸脱を目指すべく、ある見事なる結末が用意される。
心理芝居にたっぷりと振り回された後、人と人のつながりって一体何なんだろう?と嫌でも考えさせられる、辛辣なる秀作。
この要領で園監督、十分、「Gメン’75」が撮れるだろう。
以上。
2007/01/26(金) 23:11:24 |
劇場用映画
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主水日記。
某洋菓子屋チェーンの品質管理低下発覚、
日曜の情報番組「発掘!あるある大事典2」の<データ捏造>騒動、
そのまんま知事当選・・・と、
今や映画なんぞより、現実のニュースのほうがわやくちゃ、ナンセンスだらけ。もう、ついてゆけない。
特に呆れたのが、某洋菓子屋チェーン。
売れ行きが落ちたのは、薄利多売の時代が終わっていた事と、他所の専門店の菓子のほうがうまいからだろう。
利益率アップのためだからといって、工場から手間と予算のかかるプロの職人を外して、あんな古い材料で手抜き工程で作れば、そりゃ、味は落ちるだろう。余計売れないに決まっている。
菓子屋の本分を外している。
一時は盗まれてオークションに掛けられてたXXちゃん人形も、泣いている・・・。
「あるある」、<納豆でダイエット>騒動もそう。
納豆を一日2パック食えばやせる?まさか。
そんな怪しげなデータが、どこにあるんだ?
納豆に限らず、何でも余計に食いすぎれば、カロリ-増になるに決まってるじゃないか。各人適当な量を、普通に食すればいい。
しかしまあ、外国識者コメントの字幕まで、いい加減だったとは。
信頼のある情報番組だからといって、あんなすぐバレるようなハッタリかまして、週刊誌につっこまれて、自ら築いた信頼を失くしている。
それに何で又、そんな番組を観て皆、あわてて納豆を買い込みに走ったのか?全然観ていなかった小生には、まるで理解できない。
そういう小生など、報道があってから後に、久しく食していなかった納豆を急に食べたくなり、買ってしまった・・・。
結構うまかった。
そういう意味では、芸人時代に培った巧みな話術が役に立った、真顔の新宮崎県知事、これからが信頼を一から築きあげるチャンスだ。
前都知事や、前大阪府知事、前長野県知事みたいな感じもしないではないけれど、シンクタンクもちゃんと居る様だし。
まずは、お手並み拝見といこうじゃないか。
以上。
[主水、納豆をそのまんま食べる]の続きを読む
2007/01/25(木) 00:16:40 |
TV
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政の日記。
「風林火山」第3話を観ていたが、
突然、OPにテロップで<そのまんま東さん、宮崎県知事に当選確実>と出た。
本当に、なっちゃった・・・。
かんじんの大河ドラマは、どうも・・・
軍師・山本勘助が武田晴信(信玄)と出会う、少し前の話だったが。
線が細い人が多くて、映像もぱっとせず、勢いが無い。
何だか、盛り上がらない・・・。
中井貴一主演の「武田信玄」は、<国営大映テレビ>と呼びたくなるほど、かなり強引でむちゃくちゃだったが、配役は皆、元気いっぱいで、イケイケな勢いはあったよなあ・・・。
今宵は、ここまでにしとうござりまする。
以上。
[政、晴信家臣時代を追想する]の続きを読む
2007/01/21(日) 22:33:33 |
時代劇
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ゼルディア、速報。
今朝、「仮面ライダーカブト」FINAL回が、終了しました。
人類・ネイティブ・ワームの相互種族生存戦争、落ち着くところに落ち着いてTHE END、という感じでした。
でも、真のクライマックスはサソード絶唱篇で、大体終わってた感じだから。
最後に隠されてた危険なスイッチ・オンでもう一丁ダメ押し、ってとこでしたね。
キメたぜ、ダブル・ライダー・キック!
大体が無理なんですよ、三島さん達。
共存共栄が難しいからって、何もかも無理矢理全部<一元化>しようっていう、その全体主義的発想自体が。
ワームでも人間でも、内部抗争や各人の個性、好き嫌いがあるのが、ある意味当然でしょ?よくも悪くも。
いずれ破綻するのは、目に見えてましたよ・・・。
世界情勢のパターンをまるごと反映したような、意義深い最終回でしたよね。
が、でも、しかし。
天道クン家のおばあちゃんは、ついに、姿を見せなかった・・・。
名言ばっかり残してたおばあちゃん、いったい、どんな風だったんだろう。
青島幸男の意地悪ばあさん・・じゃないよね。多分。
元ザビー・矢車も、出なかった・・・。
先週で旅に出たのね、やっぱり。
<弟分>クンと並んで、すごく前半と別人に。
今頃、アジアのどっかで、カラスと戯れてるのかしら?
ドレイクとゴンは、しっかり、出てたけど。
かんじんな時にはいったい、どこにいたの?
あ、ゼクターが来なかったから・・・?
ひよりと店長、終盤は出番と交流が増えて、ほっとさせられた。
ミサキーヌもサソード坊っちゃまの事、ちゃんと覚えていたんだね。えらいぞ。
田所さん・・・。変わりすぎ・・・。
でももともと、実家の商売だったしね。
強いリーダーも平和時はあれで、いいのかも。
加賀美クン親子、これでやっと本当に、父と男の子らしく、なったのかな。あれが一番うれしい。
そして、天道クン・・・なぜ、そこに?
もろ、マンガじゃん!
ずっこけた。やれやれ。ま、いっか・・・。
メビウスとボウケンジャーは終了、もうちょっとだけ先でしょうね。
ぼちぼち、新戦隊と新ライダー、予告編出てます。
中華カンフー・ダイレンジャー風味らしき「ゲキレンジャー」は、まだわかるとして。
あの、「仮面ライダー電王」、って・・・?
マスクのお目目がもろに、半切りした桃、なんだけど。
異次元列車みたいなのが、空中を走ってるし。
響鬼さんよりもダイレクトな、豆まきの鬼?が見えるし。
もしかして、桃太郎電鉄?銀河鉄道?ゲーマー&民話調?
そりゃ、たしかにもともと、子どものための番組なんだけどね。
ずっと、ハードな路線が続いてたから。
Aの後の、タロウみたいな、弟世代へのファン交代期、大幅イメチェンの予感が。
これは、ついていけるかな~?
そろそろ、つらいかな~?と。
さてさて?
なお、次回メビウスには80(エイティ)が、かつての中学教師として、同窓会的に帰ってくる模様です!
あれ、前半までで、路線変更で授業シーン消えちゃったっけなあ。
その辺、どうするんだろう?
それと、ユリアンや女性アンドロイド隊員の、その後・・・。
触れたくないか、あんまり?
ゼルディア報告、以上。
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2007/01/21(日) 13:57:03 |
特撮
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主水日記。
その余りのゆるみっぷりに、大いなる不満を、抱く。
しかしその一方で、確かなる豊かさの手ごたえをも、同時に得ることになる。
立若正昭監督の最新作、「DEAD AND ROLL」は、そんな妙なおもしろさを含み持った映画なのだった・・・。
白状すれば、この作品の案内チラシ(小さいほう)を某知人出演者から貰ったとき、ただちに戸惑いを覚えたのだった。
主演らしき青年が怒り、叫んでいるらしき写真。
「犯罪」「殺され」「人質」「拉致」「幽霊」「瀕死」「あの世」「暴走」「必死の救出劇」などの物騒な文句が躍る、ストーリー紹介。
しかも写真や予告編の様子だと、御存知宮川ひろみ嬢が、本格的冷酷悪女役になっている模様・・・。
うわー、何だか、コワそう。痛そうな映画だな。
よそうかな、観るの・・・?と悩まされたが。
いや待てよ、この筋だともしかしたら、「跳べ!必殺うらごろし」みたいな、泣かせる<霊魂ハードボイルド・ヒーロー>路線が期待できるかもしれない・・・。
結局、出来が気になって、土曜夜に観に行ってしまった。
毎度おなじみ、池ノ上シネマ・ボカンまで。
金・土の夜19時半、という分散型プログラムではあるが、出演者・関係者が結構集まっていて、客寄せもまずまずだった。
で、結論からいえば・・・。
期待の半分はどこか拍子抜けした映画内描写とともに、すぽん、とはずされてしまった。
こちらが勝手に夢想した、<霊魂ハードボイルド>とは程遠い。
勿論、鈴木明日香嬢の演じる、
最初は任務に忠実なだけのクールさを強調しながらも、
次第に<いつもの鈴木明日香>寄りになってゆくユーモラスな<お迎え人>役キャラもあいまって、
じつにユーモラスなファンタジーではあるのだが。
大筋は、現金強奪計画とその成り行きをめぐるサスペンス、それにからんだ者達の人間模様のドラマ、そこへ「ゴースト/ニューヨークの幻」や「14g」等のオカルト・ファンタジー世界を掛け合わせたもの、なのだが。
全体としては、画面自体のアクション性が、やや弱い。
各シーンの芝居がやや長めに採られているため、ストーリーと場面展開のテンポが、いささか、かったるいのである。
(また、来たよ・・・!の声)
殺されて幽体になったり、恋人の安否を心配したり、
あるいは金銭強奪計画をめぐるトラブルで追われていたり、
瀕死の重傷で成仏寸前だったり、
ライブハウスが閉鎖寸前だったり・・・
と、各人が皆、相当切羽詰った、余裕の無い状況下のはずなのにもかかわらず、互いに状況説明する各シーンの暢気な長め感が、それらのサスペンス要素を、やや希薄化している。
毎度毎度、この登場人物たちはいったい何をもたもたと、小田原評定まがいの議論や、心情吐露の芝居や、助っ人スカウトの会話を、こうも長々とやり合っているのか?
と、愚にもつかぬ疑問を観る側に抱かせてしまうのだ。
例を挙げれば、ライブハウス(ああ、なつかしの池袋・SCUM2000!今や貴重だ)を運営する、
金欠だが行動力があって、人間性としては非常にいい奴であるところのマスターが、
一時は現場での騒動に巻き込まれて逃げながら、
その後の時点で唐突に、元のライブハウスまで戻ってオーディション?を行なっているシーンを観て、
なんて時間に余裕を持ったのんきな人なんだ、と思わない観客がいるだろうか?
なぜ直接、現場周辺から携帯で助っ人候補達に緊急連絡・召集をしないのか。そのほうが早くないか?
そうやって長々、しゃべっている時間中になぜ登場人物たちは、
犯人達や恋人の行方を追ったり、あるいは追っ手の警官や組織から逃げ隠れしたり、そういう具体的な行動・アクションをしないのか。
なぜ彼らは、移動しながらアクションして、画面にリズムを与えようとしないのか?
それになぜ、追っ手たる組織の一味(3人)が途中に現れて発砲しただけですぐに消え、それから最後まで、全く姿を見せないのか?
かんじんの現金を、取りに現れないはずがあろうか?
・・・などという素朴な疑問と不満が、次第に生じてくるのだ。
主役のはずの青年2人とヒロインに、若々しさや映画内での存在感がやや希薄なのも、気にかかる。
もっとも、射殺された男の幽体と、瀕死のバンドロッカーと、縛られて動けない人質役なのだから、いきなり生き生きしすぎて見えても、困るのだろうが・・・。
3人とも各場面には、情感芝居が概ね、しっくりはまっているから、まずまず、手堅い好演といっていいだろう。
で、肝心の、幽霊がらみでのいわゆる<オカルト的現象>だが。
ごくごく必要最小限、限定条件化で省エネルギー仕様、とでもいうべき小規模のものに限定されているため、
目に見えて派手な飛躍シーンは殆ど、皆無に近い。
やるのに集中力が必要で大変そうなのは伝わってくるが、
情念とアクション性の入り混じった画面の飛躍への期待感は、大幅にしぼまざるを得ない・・・。
(スプーン曲げで30分間特訓、とかできないか・・・?の声)
好感度など振り捨てて?猜疑心深き悪女役で終始気を吐く、
宮川ひろみ嬢の見事な力演と、やや張りのある弾着シーンが無かったなら、
この映画は一歩間違えれば、たちまちサスペンスの支柱を失って、空中分解しかねなかったことだろう・・・。
じっさい、幽霊役自体よりも、コワく見えるくらいである。
(勿論、本人じゃなくて、役が、だよ!の声)
よくぞ引っ張ってもたせた、というべき功労者なり。
では、この映画はまったくつまらないのか?と問われれば、
とんでもない、そんなことはないよ、随所で面白いよ、と答えざるを得ない。
妙な映画、というのはここなのだ。
どこか一本、ねじのゆるんだ?コミカルな登場人物たちの魅力もさることながら、
この映画の中には、ありがちの凡庸な表現を越えかけた、とある興味深いシーンが、挟み込まれているのだった。
好例が中盤、2大(!)自主映画女優が画面上で初めてはちあわせする、自動車内外と<浮遊する物体群>のシーンに見られる。
<見えざる手が見える物を動かし、車内の人物を驚かす>というミニ・オカルト・シーンの撮り方が、おもしろい。
もしありふれた凡庸な表現選択だったら、撮るにあたってその物体を棒と糸か紐ででも吊り上げ、左右に振って動かして撮り、後からCG処理で紐を画面から消す、という作業を行なっていることだろう。
しかし、立若監督、その手法はあえて使わなかった。
代わりに選び取った撮影法とは・・・
まず、車内の人物が、窓の外から飛んで来る物体と、そのぶつかる音を不審に思う。
じきに周囲の奇妙な現象に気づき、車内の一人を見廻りに行かせる。
その直後、外から別な人物がある意図を持って訪れ、車窓の前で物を動かしてみせる。
しかしその人物は車内に残った者には姿が見えず、物体の動きだけが見えるため、車内の者は戸惑わされる。
さて、ここのシーンには、前述のような釣り糸・CG等の加工や、今ここでは外の人物の姿は消えているよ、という解説のためのお約束的フラッシュバック描写等は一切、見当たらない。
するとどうなるか。
外に居る人物の嬉々とした表情と、車内の人物の戸惑った表情が丸見えのまま、観客だけが、その状況を理解できる画面になって、
ああ、きっとあの人には現象だけが見えるんだな、
という想像力を、観客の側に喚起させ、笑いすら生むのである。
すなわち、<車窓の外-車内の人物-観客の視界>、という、視覚の二重化・三重化が起きるのである。
そこらが、大変に面白い。
<映画>を観る楽しみの核、とは、たとえばこういう発見を促されること、なのではないか?
こうした視覚を多重化する仕掛けが、善悪対峙のクライマックス・シーンでは、若干合成入りではあるが着実に、その実を結んでいる。
又、概ねハートフルな決着を一同が見い出しながら、
フッ、キマったな、と思った次の瞬間、
ラストで叫ぶ人物の決め台詞には、いわば自己パロめいたおちょくり加減の可笑しさを、食らった。
見事にすべてをさらわせる、したたかさ。油断ならない。
立若監督チーム、だてに「FB2nd」の鶴岡みゆき組やR-1グランプリ系列の現場に、かかわってきてはいない。
更なる面白さを生成しうる何かを、既につかみかけている。
後は、鶴岡組の構成・編集の妙からも、もっとキレを学び取って、より面白いエンタメ・シネマへ向かって、技を磨いていっていただきたい。
その萌芽は、たしかに見届け、受け取った。
以上。
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2007/01/21(日) 00:44:45 |
インディーズムービー
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主水日記。
リメイクは是か?非か?でカンカンガクガク。
洋画でも、邦画でも。昨今は多い。
興行上の大ゴマが、いずこもネタ切れなのだろうか?
中でも、監督自身による30年ぶりのリメイクとあって、一番気にかけていた、あの作品が・・・
ついに、目の前に。
ようやく、シネコンで観た。
市川昆監督、「犬神家の一族」を。
平日の夜なので、客、男女で6人位。
フジ系の稲垣版ドラマを観て来た、という人達もいた。今の人にはそうだろう。
(古谷一行版、片岡鶴太郎版も、あったっけな・・・の声)
正直に言えば小生は、30年前に<角川映画・第一弾>として製作された旧作を、劇場公開では観ていない。
観たのは公開一年以上経った後の、TV放映であった。
その後なぜか、ビデオでもDVDでもBSでも、無論名画座でも、この映画をちゃんと観ていない。
とはいえ、観ればおそらく、絵的に目立っていたシーン群はたちどころに、ああ、あれだな!と思い出すことであろう。
それくらい、あの毒々しい画面と、女優達の演技は、強烈なものだった。
色っぽいシーンにも慣れていなかったので、結構ドキッ、としたものだ。
それと、ああ、人間って誰でも皆、
欲得がからむと金・女・権力とみんな欲しがって、内輪で醜く見苦しい争いをしてしまうもんなんだなあ、
嫉妬に狂った女性もコワいんだなあ、
という人間への哀感、あきらめみたいなものを、あの作品から強烈に感じ取り、
その後長らく、植え付けられる原因?のひとつにもなってしまったようだ・・・。
続く「人間の証明」のブームが、それに追い討ちをかけた。
当時は中学生で、まだ自分の小遣いで劇場のスクリーンに向かう習慣は無かった。
(「人間の証明」や「獄門島」あたりは父親に連れられて、劇場公開を観に行っているのだが。)
だから、劇場公開で「犬神家の一族」を観るのは、実は、今回が初めてなのである。
さて、どの程度、旧作のシーンを記憶しているのやら?
ノスタルジーというよりは、いわゆる脳トレ、かつ<答えあわせ>に行くようなもの、だった・・・。
思っていたよりはいい出来で、とりあえずは安心した、という感じだった。
少なくとも、某TV女優のベスト・ジー二ストぶりが浮いて「しまった~!!」な、同監督のリメーク版「八ッ墓村」よりは、数等出来がいい。
筋は、長老の若年時代解説が大幅に省かれたのと、ラストシーンが若干違うのを除くと、シーンも構図も概ね前回と同じで、贅沢な再現VTR、といっていい。
どこもかしこも、そっくりそのまま。
ただ、全体に時間がゆったり流れているせいか、毒々しさは前作よりやや薄れた印象。
こちらも年齢的なものがあり、又、エロなシーンなど大分、他の映画群で見慣れてきているせいもあるだろう。
(水中からザバー、のシーンも、何故か音楽が無く、控えめだった・・・。)
一応、推理映画なので詳細はあえて書かないが。
大抵の人が言いたそうな感想から、小生もおそらく、そうはみだしてはいないはず、なのだ。
前作を知っている大抵の人はまず、やや丸っこい感じになった金田一探偵、旅館女中役の叫び声のベタさ、本家や三姉妹役の一部芝居のTVドラマくささ?などに、ちょっとゲンナリさせられることだろう。
そこいらに目をつむれば、まずまず、といったところだろうか。
富司純子と奥菜恵は、割に<映画女優>らしい演技になっていたのが、救い。
この二人の演ずる前では、他の女優達の存在感はいささか、かすんで見える。
神主・大滝秀治の台詞、平成の今日では使っている言葉が、若い人にわかりづらいかもしれない。
<生卵>、<食べなさい>、<よーし、わかった!>には今回も、
微笑した。
そのうちに<あの~、ちょっとよろしいですか?>も出そうだ・・・。
それと近年、どこもかしこもやたらに真っ暗く写した中での、観ずらい芝居が多かった市川演出において、珍しく?広々とした青空が見れる映画であることは、何だか妙にほっとさせられるのも事実。
ラストは少しばかり変えてあるが、やはりほっとするもので、好感が持てた。
あれは金田一の、というよりは市川昆監督の、ファンへの<御挨拶>なのではないか。
余韻が残る形で、締めた。
以上。
2007/01/18(木) 00:14:09 |
劇場用映画
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主水日記。
そういえば確かに、ここのところ、作られてなかったが・・・?
「遠山の金さん」(テレビ朝日系)新作が、始まった。
そろそろやらんと、後の世代が知らない、てなことになりそうだし、やらないよりはいいんだろう。が・・・。
こないだまで将軍吉宗公だった人が入れ墨のお奉行様、というのはどうも、おとなしすぎる印象で・・・。困った。
冒頭江戸城内の茶坊主達とチンチロリン、と賭け事やってるシーンが一番不良っぽく見え、
逆に市中やお白州の見せ場シーンでは不良っぽさが足りず、やや不満が残った。
「ザ・サムライ」の中村繁之がせこい金貸し兼業の岡っ引き、というのも半端な印象で、どうも似合わない。
もっと、せこいワル向きの人は居ないのだろうか?
若村麻由美をゲストに呼んだ、泣きの芝居は良かったんだけど。
ああいうのは北大路版の、越前様のほうが、もっと映えそうな気がするし。
このシリーズ、過去にも中村梅之介や杉良太郎など、数々の俳優が演じてきたが。
奉行としての上品な振る舞いと、大オーバーで「おうおうおう!」なべらんめえ調との落差こそが、ドラマ最大の見どころではなかったか?
それ抜きの、薄味な金さんなど・・・。何だかなあ。
臆せず、むちゃくちゃに、荒れてみせてくれないと、ねえ。
しかし、後ろで淡々と、裁判を筆記しているのは、やはり同じであった!
「おおよ、見せてやろうじゃあ、ねえか!」まで、後世に書き残されるんだろうなあ・・・。
あ、「白虎隊」(テレ朝系)と大河版「風林火山」、観てなかった・・・。
以上。
2007/01/17(水) 01:16:53 |
時代劇
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政の、日記。
日曜は「こほろぎ嬢」のトークが終わると、ダッシュでトリウッドへ向かった。
土日のみの上映となっていた、「キヲクドロボウ」の最終回に入場す。
一般有料入場も可、の試写会なので関係者らしき人々の比率が高かった。
何しろ、タイトル以外知らず、トリウッドの前で配っていたチラシすら、読まぬままに来たのだ。内容はまったく不明。
約1時間半、果たしてどんな映画なのやら・・・?
と、はらはらしながら着席す。
ひとことでいえば、まったく、タイトル通りの内容だった。
CGたっぷり、アクション・カンフーたっぷり、近未来SF設定の、<記憶泥棒>達の話。
「JM」などが比較的、近い線だろう。
近未来社会、どこかのアジアン戦線で激突する、最強兵士の対決。
その、少し後の大都会。おそらく東京。
セキュリティー部隊との銃撃戦の中でばったり出会い、ハイテク・ビルに隠された機密情報データを狙ってコンビを組み共同作戦、チャレンジャーとなる、2人の男性。
彼らこそが、<記憶泥棒>。
人口高齢化、痴呆症患者増大時代に即した形で某大企業が研究・開発を始めていた、脳内記憶の保存・再生を扱うバンク・ビジネス。
介護が必要な家庭には、予算がかかるとはいえ、朗報だろう。
しかし、その人間からデータバンク、別な人間への記憶移植・再生の特殊技術部分にかんしては、未だに、機密状態のままだった・・・。
とくれば、産業スパイがその情報入手と転売を狙うのは必定、なのだ。
しかもこのチャレンジャー2人、それぞれに、特別なチャレンジの理由を抱えていたのだった・・・。
テンジョンの適度に高い演技。
ルパン3世と次元大介のごときパートナー同士の会話、コーヒーの飲み方一つで性格が見えてくる。
テンポの良い画面展開、
CGによる空中カーチェイス(しかも、オール電動じゃない・・・!)、
トラブルとハザードだらけ、ハラハラものの潜入とデータ・ハッキング作戦、
張り詰めた状況下での派手な銃撃戦、
敵対する元軍人の記憶を持ったカンフー達人との回し蹴り対決、
思わぬ裏の真相、
と、見どころは盛りだくさん。
十二分に、<ガンアクション・コンテスト>出品レベル。
(もう出してるかも?の声)
人はデータばかりじゃなくて、心で理解してやれ!という主人公の発言シーンは、ドラマの展開上からすれば、至極もっともな事である。
万事お見事、キマッたな、という他は無い。
スカーッとする事、請け合い。
ただ一つ、かんじんの痴呆症対策としての応用技術・ビジネス方面の話が、本筋からいつしか外れて、終盤にはすっかり立ち消えてしまった事のみが、気になった。
ハリウッド調の対企業集団アクションゆえに、案の定な帰結とはいえ、そこいらがいさかか、不満となって残ったのだった・・・。
以上。
2007/01/16(火) 23:05:19 |
インディーズムービー
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秀の、日記。
木・金・土・日の、映画鑑賞。
特に行く予定の知人イベントも無いので、名画座プログラム・ファンとしての自己を思いっきり、開放した。
必然的に、シネヴェーラ渋谷・ユーロスペース・シネアートン下北沢・トリウッド、などを行ったり来たりになる。
旧作が丹波哲郎特集、
「霧と影」に「女奴隷船」、「裸女と殺人迷路」に「脱獄者」。
(やっと来れた!)
新作公開が、
マリー・クロード・トレユ監督「合唱ができるまで」、
瀬々敬久監督「刺青 堕ちた女郎蜘蛛」、
浜野佐知監督「こほろぎ嬢」、
山岸謙太郎x石田肇監督「キヲクドロボウ」。
日時の都合で並んだとはいえ、イメージ、てんでんばらばら、なり。
ニュープリントの「霧と影」(1961)はニュー東映のモノクロ映画、水上勉原作、北陸と東京を往復する推理サスペンスで、あの石井輝男監督作品にしては?筋、展開がきっちりと運ばれていて、複雑な正統派構成。
主役の丹波哲郎は友人の不審死を取材、調査する記者。若い頃は声が1.5オクターブ程?高い。
コンビを組む梅宮辰夫が若々しい。
デジタル・ベータカム上映、「女奴隷船」。
主役は菅原文太の軍人だが、実質、悪役・丹波のワルノリぶりと新東宝女優達のキャット・ファイトを観るための映画。
とても後に「鬼平犯科帳」を撮る小野田嘉幹監督の映画とは思えないほどに、筋も演出も粗雑・・・!
丹波はやたらとムチを振るう暴力的な海賊船長。誰も止められない。
三原葉子の女ボスともう一人がコロコロ裏切るもんで場内、失笑続出。
あれだけ居た海賊がいつの間にか、たった5人に・・・呆然。
島で「ワイルドバンチ」やってたり、もう、むちゃくちゃ。
エネルギーだけはあり余っていた。おおらか、というべきか。
同じ監督の、「裸女と殺人迷路」。
4人の男たちが某洋画よろしく大泥棒作戦、途中から一人にからむダンサー女が三ツ矢歌子。若々しい!
犯罪者ばっかりが隠れ住んでる街が舞台で警察捜査はてんてこ舞い。奥の方、ミニチェアがちとしょぼい。
にわかチームのポス、割と人情家だが、仲間と女の手を切らせ、札束を巧妙に運び出すなど、ワルはワル。
丹波が一番、はねっかえりで短気でワルだ。とても後のGメン警視には見えない。
だが詰めが甘くて一同、なかなか囲みを破れない・・・。お気の毒様。
野球場の廊下シーンに、若干サスペンスあり。
池広一夫監督の大映映画「脱獄者」。
丹波は主役の鬼警部、弟であろうとワルは容赦しない。だが罠にハメられて・・・。
悪ボス、またしても金子信雄。日活から出稼ぎ?状態。
徹頭徹尾、終始持続、みなぎるサスペンス。
これぞ真打ち。これぞハードボイルド。相当な傑作。
ラストの歌が、泣かせるぜ。
これらの毒々しき丹波出演作を観た後では、フランスのスタンダードなお稽古ドキュメンタリー「合唱ができるまで」はまったくの、癒し系。
賛美歌の中高年パート、少年少女パートが徐々に仕上がってゆく様を、交互に淡々と写し取ってゆくだけの、タイトル通りの内容。
ちょっと、眠い。
最初、2チームを交互に映しているので、別々なチームかと思っていた。先生も別々なので。終盤で合流している。
先生達の教え方やしゃべり方、生徒達の表情や笑い声を見るためのもの、だった。
レイトショーの「刺青(しせい)・・・」はご存知、谷崎潤一郎原作、都合4度目の映画化だそうな。
上映前の監督・出演者トークによると、去年、ピンク映画で先輩の監督に映画化されてヒットしたので、自分も是非!と制作会社(なぜか円谷)に御願いした、とのこと。
(いいのか、そんなんで・・・?の声)
かくてできあがった映画は、現代の新宿周辺にてロケされた現代版。
子連れ女房に逃げられた、自己啓発セミナーの泣き虫・入れ込み屋勧誘員。
出会い系サイト事務所の仕事にハマって、いろんなニセ人格を演じてるサクラ女。
喫茶店の勧誘シーンで、やたらにキャメラが揺れる。女の心理動揺を表現か。ちょっと目が疲れる。
松重豊、うさんくさいエロ上司勧誘員を、いかにもそれらしく演じる。
女の肌に惚れる古風な刺青師には、またしても、嶋田久作。
女の蜘蛛の刺青を見て、かつての浮気相手や、情交相手がビビる。
場内、含み笑いのさざ波が起きる。
後半、まるっきりボランティア目的?のカツアゲ、美人局、かっぱらいの類が始まる。
そら、むちゃや・・・犯罪じゃん・・・。
女優のイロっぽさもそれなりに出てるが、むしろ居場所の見つからない現代人の孤独感が浮き立つ芝居、なり。
「こほろぎ嬢」は、鳥取県でも<幻の作家>と呼ばれている、尾崎翠(おさき・みどり)なる女流作家(1896~1971?)が遺した、最後の短篇3本、「歩行」「地下室アントンの一夜」「こほろぎ嬢」が原作。
・・・・だそうだが、あいにくこの作家のこと、な~んにも、知らぬ。
以前、同じ監督の手になる伝記映画「第七官界彷徨-尾崎翠を探して」を、<日本インディペンデント映画祭>にて観たのだが、あのときは正直言って、困った。
原作者・尾崎翠の秘められた晩年(かつての文壇仲間達も、帰郷後のことはよく知らなかったらしい)についてのゆったりしたドラマが、尾崎に関する展示会会場?のシーンを織り交ぜて、淡々と描かれるのだが。
大正から昭和初期の女性作家・文壇にかんする予備知識が殆ど無い上に、ゆっくりゆっくりなテンポと女性文学者達の台詞についてゆけず、終盤で唐突に出てくる<ロッカー乗り>シーン(監督の趣味?)も取ってつけたようで乗れず、全く映画の内部世界になじめずに終わった。
もっとも、現代においても、知る人ぞ知る作家・・・だったようなので、当然といえば当然、なのだが。
しかしながら・・・
今回の「こほろぎ嬢」は、小説内から持ってきた<まるで鳥取県の旧家周辺のような、空想世界>を中心に展開するので、尾崎翠を知らぬ一般の人々にもなじみやすく、わかりやすく軽いユーモア・ファンタジー映画と相成った。
田舎の旧家に祖母と住む、15才位の娘。
訪問者である分裂心理研究の青年医師に恋愛戯曲の朗読を薦められ、読んでいるうちにどぎまぎし、自らも青年に心ときめいてゆく。
やがて、青年とのお別れの日が来る・・・。
彼女の近所に住む、詩人青年。
年中、薬(胃酸や睡眠薬らしい)を飲み、
「カラスは白い・・・」などと想像力を屋内でふくらませ、
実物の生物や女性を見ると今度は想像力が働かず、
それについての詩が書けない、とぼやくいささか神経質な詩人。
そのすぐそばで実証的動物実験を続けて本を出している、動物学者。
詩人氏の妄想癖がさっぱり理解できず、苦笑の連続。
で、詩人青年と学者の、ささやかな珍問答合戦が展開。
図書館で、ヨーロッパのとある女性詩人についての本を読む、近代的洋服女性。(戦前ですョ、の声)
その女性詩人を知る、とある白髪男性。
友人たちが彼女の詩に感激し、「是非彼女に紹介してくれ」と頼むが、男性はいっこうに聞き入れない。
やがてそのまま、彼は病没してしまい、葬儀の朝、唐突に真相が明らかになるのだが・・・。
そして、いつしか医師・詩人・動物学者が、とある地下室で同席し、後から洋服女性も加わって、夜の雑談と相成る・・・。
ゆるいといえば、なお、ゆるい展開ではあるのだが・・・。
年配主婦層などには、この位のテンポでリラックスでき、理解にもちょうどよろしいのではないか。
前作よりはずっと、すっきりしている。
ヨーロッパのシーンが「シルバー仮面」同様、またしてもオール日本語。いずこも事情は同じよ、と微笑。
本の中のヨーロッパ女性が読者の洋服女性に向いて語りかける、地下室の明かりが星空に連なるなど、ちょっとした<時空間越境>のおもしろさが、随所に現れる。
その辺に、ささやかであるが、<映画>らしさを認める。
イケイケで情熱的、いつも黒眼鏡のオノ・ヨーコみたいな浜野佐知監督と、静かで涼やかなる男性脚本家・山崎邦紀。
上映後のトークによると、現場での印象もまったくそのまんま、なのだだそうな。
このコンビといえば、相当な本数存在するピンク映画のコンビ、というのがまず浮かぶが、そちらでも当たりはずれがある模様。
そのバランスが今回は、結構いい方向に作用しているようだった。
なお、トークゲストの外国人男性俳優(2名)によれば、今回のヨーロッパ・シーン(勿論日本国内撮り)では脚本の台詞がちゃんと、日本語書きだったとのこと。
「5年日本で生活していれば、日本語は覚えますよ」
「もう、他所でもカタカナで台詞、書かないで欲しい・・・読みにくいですよ」
・・・だそうである。
微苦笑す。
残った「キヲクドロボウ」については、別記予定なり。
以上。
2007/01/15(月) 00:27:32 |
劇場用映画
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鉄の助っ人・正八のぼやき。
え~、ただいまっ。(お初だろ!の声)
帰ってきた、<閑話休題>コーナーの時間でございます。
<はみだしシネマぼやき旅>も最近、やってませんねえ。
(旧過去スレ見てない人にゃ、わからねえよ・・・の声)
しばらくぶりに、芸社スレを拝見したならば。
え・・・?
かよさんが、あの銚子電鉄の犬吠(いぬぼう)駅でDVD売ってる、「鉄道物語3」に出ている、って・・・!?
しまった~!もう売ってるとは知らんかった!不覚。
あの駅、大分昔、なんとなく犬吠崎灯台を見に行って、降りたことあるんだよね・・・。
割とライトで小奇麗な、かもめが似合う感じの駅舎で。
フジ系のサバカレー・ドラマが終わって、しばらく経ってた頃だったかな。
終点の外川にも行った。駅から坂をまっすぐ降りると、もう、すぐ漁港が見えて。
無論、銚子駅前の商店街で、サバカレー1缶、みやげに買って帰りました。うまいよ、なかなか。
(そういえば去年、某昼ドラで、終点の外川駅が映ってたような。)
・・・と、いうわけで。
(どういうわけだ!の声)
<インディーズ向上委員会>方面においても、インタビューを受けておられる、かよさん。
100才まで女優、いいじゃないですか。
是非、お呼びのかかる限り、続けてくださいますように!
次のお目見えの日を、いつでも、楽しみに待っておりますよ。
それと、ミナミユー監督、
まずは「ヒャクレンジャー3」完成、おめでとうございます。
多分まだ観てないんで、恐縮ですが。
この場を借りまして、森の詩(うた)もよろしく、ということで。
(ナボナの王さんじゃん・・・!の声)
さて、シネマ旅に戻るとしましょうか・・・。
では、又。
2007/01/12(金) 19:54:03 |
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旅人、覚書。
下北沢トリウッドも、このところ、ついぞご無沙汰していたが、やっと戻ってきた。
何のために?
「虹色★ロケット」(伊藤峻太監督)を観るために。
去年観れなかった同所の<高校生映画祭>作品から、セレクトされたもの、と聞く。
トリウッドのロビーが星占いでもするかの様に装飾されていて、あれっ?と驚く。
モギリも看板が、学園祭のブースみたいで、いつもと少し変わっている。
貼ってある新聞記事によると、かなり真面目なテーマの青春映画らしい。
千葉市・幕張の高校生一同(当時)が<命>という、学校のテーマ表現課題作品として制作した1本、とのことだが、さて・・・?
ありていにいって・・・
展開上少々ご都合主義なところも散見するとはいえ、あれだけ真面目なテーマをよくぞ、エンタメ路線にきっちりまとめあげきっているな、との印象を受けた。
しかも台詞が概ね、はきはきして安定感があるので、良質の単発1時間TVスペシャル・ドラマを観ている感じになる。
編集もメリハリがいい。
これはミニ・ハリウッド調、と呼んでもいい。
オペ音声と、謎のむさいヒゲ男の「まだ生きるの?」発言で始まる、この劇映画。
そのデスノートめいた?黒い衣装の男はどうやら<死神>の類らしい、と次第にわかってくる。
前向きで明るい印象の女子高生が、とある高校の新設学科に転校してくる。
ただし、素振りこそ見せぬものの、ある難病を抱えていて、薬を呑んでいる。
そして、気まぐれな<死神>様から与えられた、ある小さな能力を持っていた・・・。
6人のクラスメート男女と担任に迎え入れられる主人公。
割に脳天気な雰囲気の中で、授業が始まる。
臆面も無き、ライトなギャグ&ポーズの数々にまず軽く笑わせておいて、保護者は女医一名以外オミットされた、少年漫画のごとく比較的のんきな世界観を構築。
自主時間(なぜかやたらと多い)にゴミ集め、昆虫集めのゲームをするシーン。
特に、それっ、と一同が両側へ散るシーン。
前半は生徒7人の動きが躍動感にあふれ、画面が弾む。
それらのコミカル・シーンと平行して、次第にクラスメート7人の各キャラクターが紹介されてゆく。
学科クラスが新設された理由と、各人参加までの回想エピソード。
薬物依存と自殺未遂のエピソード、人物の<揺らぎ>表現がハマる。
他にも、いじめられっ子が転じて順繰りでいじめっ子に、それが又別な人物に負けて、という村八分経験談、
<命>を考える授業への、周囲の無関心からくる不満・・・
など、かなり深刻なものもある。
クールに高校生同士を分析する目と、叱咤激励する台詞。
かなり痛いところを、突いている。
しかし、それらのエピソードの大半が長くは引きずられず、学科クラス新設へ向けて、回想内での状況は、次第に<プラス方向>へと軌道を転化されてゆく。
そこにはかつてクラスに居た、彼らの人生観を変えた、ある人物についてのエピソードが加わる。
触媒となったのは、この人物の言動なのだった。
更に、今の時点でなお、自殺しようか?と悩んでいる女子1名の存在。
その理由たるや・・・単純に個人的なものではない。
最早、人類への絶望、ともいえるレベルなのだ。
彼女の心の救済が出来ないか?と主人公とクラスの青年が奔走する。
ここで、主人公のジレンマの一因でもある、特殊能力が示される。
そして、主人公に課せられていたある<掟>と、涙の別れ・・・。
と、一通りのミニミニ・フルコースが、ピリリとスパイスの利いた名台詞の数々とともに、堪能できる構成。
エンディング・テーマと映像も、ライトでカラフルに、凝っている。詰めを怠っていない!
主人公役・松永祐佳、<当たり!>な女優。
結論。
同じトリウッドで観た<子どもの青春映画>たる「ゴーグル」よりは、肩のこらない劇映画。
東宝系のイメージ。
<準・明朗青春映画>として、気負わずにリラックスして観れる。
あなどれない出来。一見をおすすめする。
以上。
[順之助、青春の日々に泣き笑いする]の続きを読む
2007/01/11(木) 00:45:07 |
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旅人、覚書。
正月休みも、成人の日も、ひと通り終わった。
が、今もなお、年賀状が次々と届く。
出してなかった人からも、数通届いていて、あわてた。
かくて今日も、まだ返事を書いているのだ。
<トンマッコル>葉書には笑った!お見事。
今年最初の自主上映イベント巡りは、1/8(月)、成人の日、19時過ぎから始まった。
昨年同様、池ノ上シネマボカン、<アウトマン福袋>の会になった。
新年会かたがた、初笑いをしたい。それが最大の理由。
(銀座でほぼ同時間帯にやっていたはずの、<モダンレコーディング>上映会は、どんなだったろうか?)
司会・N氏(仮名)の「え~、かつてない入りですが」に場内全員、笑う。
でも後から段々、いつものメンバーズが増えてきた。
作品は皆再映、その大半は既に観たもので解説済みなので、詳細は略すが。
型破りすぎてやばい捜査官が裏家業の男を助手に、妙に人なつっこい?捜査を強行する探偵ホラー「満月の真下で叫ぶ狼男」、
民話と肉体強化系通販をいっしょくたに料理した「こぶとりじいさん(1&2)」、
暗躍スパイの同性愛?世界を月9ドラマ・パロ同然にしてしまった「ファイナル*パス」、
強引かつスピーディな展開が「おもしれえじゃんかよ!」な「地獄のピカチュウ」、
風俗マッサージのぼったくり秘話?「エンジョイ」、
・・・などは又しても、馬鹿笑いをしてしまった。
「kitchen」のハードさや「灼熱のバレーボール」の出会い話、「ローラ」の猫探し探偵、「ほしのかけら」の軽いファンタジー等にも好きな部分はあるのだが。
ホームレスやギャンブラーの生活感一杯な、歌入りドキュメンタリー「落ち葉と赤ちょうちん」、今観ると、何だか哀感、切なくなってくる・・・のだった。
(しまった、略せなかったじゃん!の声)
客席に当会常連のD氏や常連客H氏、女優さんなどの姿が無く、男祭り状態になってしまったのは、正直、少し寂しかった・・・。
以上。
2007/01/11(木) 00:31:17 |
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竜の、追憶。
やっと、劇場版「シルバー仮面」を、渋谷のレイトショーで観た。
映画というより、3部構成のDVD向けオリジナル・ドラマなのが、「ミラーマンREFLEX」と同様だった。
ただし、その中身はクール&オカルトな「REFLEX」とは、かなり様相が違うのだった・・・。
案の定、ロビーと客席は濃い感じの男性客で、熱っぽく埋まっていった。ノーゲストの夜にもかかわらず。
(うーむ、むさい!の声)
白髪の紳士や、女性客もごく数名あり。
皆、旧作「シルバー仮面」や、「アギト」の話などを、知人どうしで楽しそうにしていた。
佐々木守&実相寺昭雄・原案、
中野貴雄&小林雄次・脚本、
実相寺昭雄・北浦嗣己・服部光則の昭和&平成ウルトラマン3監督で順に1話ずつ、
というメインスタッフでありながら、このオリジナル3話構成新作、円谷プロの製作ではない。
故・実相寺監督が70年代に創設したコダイ・グループの実質的制作である。
70年代に元祖・TV版「シルバー仮面」(注1)が円谷製作の「ミラーマン」(注2)と他局どうしでバッティング、視聴率争いとなった因縁は、いまだに深いのだろうか?
さて、映画はまず、ATG映画でもおなじみの、斜めに傾いた画面から始まる。
虚無僧とピエロが怪しげに、和服の女に迫る。
おお、やってる、やってる。
途中、急に挿入される、短い早回し画面、仏像をすっと縦に撮り上げるキャメラの動き。画面にささやかな運動性とサスペンスを加える。
鏡の間に、舞台上格闘、拍子木。
和洋折衷、ごちゃ混ぜワールド、万華鏡。
これぞ実相寺節、集大成。
舞台が大正9年、1920年なのが意外な設定。
レトロ調帝都の真ん中に、女性が黒い死体と化す怪奇事件が連続発生、陸軍機関の青年が内々に調査を開始する。
この辺は「怪奇大作戦」つながり。
助手役として、後に有名作家となる人物も、しっかり登場する。
この作家関連で実相寺組の映画化が多い、といえばお分かりだろう・・・。
科学実験と称した見世物舞台を構築、
空爆気球船を飛ばし神出鬼没、
宇宙人達や鋼鉄ロボット(どう見ても、「メトロポリス」のロボットそのまま)を従え、
時空間を自在に操り、
自ら<カリガリ博士>と名乗る白塗りの怪人が悪役。
石橋蓮司が飄々と、怪演。
オカルト魔人とマッド・サイエンティストを合わせたような能力を持ち、
人類に皮肉な笑い声と捨て台詞を吐く男。
強力エックス線、電磁波、サブリミナル心理効果、音響効果まで悪用して人心を惑わし、パニックを起こすのが得意。
メトロン星人や「帝都物語」の加藤保憲、「バットマン」のペンギン男あたりとは、ご親戚じゃなかろうか?
更に、対するシルバ-仮面に変身する人物が、女性。
変身道具は、<ニーゲンベルゲンの指輪>。
その出生の秘密には、森鴎外の小説「舞姫」のモデルとなった女性がからんでいる。
大正時代の文化爛熟、かつ騒然たる背景があるとはいえ、日本に、果たして来ていたのかどうか?と唖然とするような人物までが、唐突に登場するのだ!
米騒動とか、もう少し画面的に触れて欲しかった時代背景もあったのだが。
(長くなるから?の声)
特に第2話では、
空飛ぶ機関車、魔女信仰再燃と迫害、
ハンメルンの笛吹き、小人の怪物男(赤星氏!)など、
民話、伝承の類も材料に織り込まれている。
とある人物が頓智で指輪を手に入れるシーンなど、まるで、世界絵本昔話全集のよう。
この知恵比べが、後で又引っ張られて、
切迫した状況下に、とんだ珍妙さ、微苦笑を呼ぶことになる。
もう、何でもあり。
不思議なのは、1911年、ヨーロッパの母子放浪時代回想シーンで。
ドイツの村人達が皆、日本語の台詞でしゃべっている事。
吹き替えの無いシーンでも、日本語。なぜ?
(東京のシーンではドイツ人役は、ドイツ語使ってるのにな?の声)
日本国内の外国人俳優総出で、撮影されたためなのだろうか。
ドイツ語がわからない人も、多いんだろうな・・・と。
<民族優位>論者に反発し、
「差別も無く誰もが対等な、自由な世の中が来る!」事を願っている探査役青年を観て、
「あんな国家軍人がいるか!」などと怒るなかれ。
あれは作家の願望かもしれないよ。
それに当時だって一人位居ても、おかしくないんじゃない?
戦前、っていっても第二次大戦時じゃないんだし。
みんながみんな、大義名分だけで生きてたはずが無いじゃない?
普段は映画に行ったり、カフェーに行ったり。
広い世の中、そういうもんだよ。
横っちょで世間一般の思いもよらぬ事に関心持ってる、実相寺監督のような人も、結構居たんだろうなあ。きっと。あの時代も。
割に、おとなしい終わらせ方だったな、と。
主犯の事がなお未解決、気になる。
「世界の先はどうなるかわからない、でも、飛び込んでいくんだ・・・」
これ、今の僕らにとっても、そうなんだよな。
少なくとも、単純なレトロ回帰で終わらせない、
芯のある所を見せてくれたのは、大いによろしい。
良い意味での、勇気の言葉、ととらえておこう。
変身女性の台詞、じゃないが。
実相寺昭雄監督、長い間、僕らに<夢>を、ありがとう。
後の事はこのスタッフ一同に、様々な形でしっかりと、受け継がれてゆくことでしょう。
さて、もう1本の遺作公開を、静かに待つとしますか・・・。
日記、以上。
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2007/01/08(月) 02:00:24 |
劇場用映画
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鉄の日記。
1月6日。土曜。
けっ、どうも正月から、いろいろついてねえよなあ。
おまけに土曜の午後がせっかく空いてるってのに、ひでえどしゃぶりじゃねえか。おお、冷てえ。
どこ行って、何してこの憂さ、晴らすね?
こんな世界、ほんの一時でも、脱走してやる!ってな気分よ。
・・・そうだ、東中野行こう!ポレポレ東中野。
あすこで暮れから、年またぎでやったたよなあ。
虫プロ<アニメラマ>3本特集。
それと、レイトショーが活弁士・山田広野監督のビーチコメディ新作、ときたもんだ。
行こ!すぐ行こ!
で、行ってきた。
丁度いい按配に、昼からの回が終わるとこ。しかも席は十分ある。
今からなら、4本、全部観れる。
雨宿りには最適だ。コーヒーも300円で飲めるし。
よし、決めた!半日ここに居よう。
5回券6000円、一丁!
一枚余った分は、今月中にもう1本分、使うことにしよう。
てなわけで、観たさ。
いや~、お色気とボリューム、たっぷりだねえ。4本とも。すごいよ。
余は満足じゃ、ってなもんよ。ほんと。
女性もアート・ファンも、観なきゃ損だよ、これ。
まず、「千夜一夜物語」。
3時間もあるけど、ハリウッド洋画のテクニカラー大作のつもりで眺めてりゃ、結構面白い。
音楽が富田勲だから、オーケストラが壮大なる冒険気分をそそるんだ。
めでたいお正月興行に一番ふさわしい、一大娯楽活劇だぜ。
大砂漠、一介の水売り男が歩いてくるシーンの反復運動からもう、はまちまったね。
水売りの声、なんと、青島幸男。
お調子者の好色、成り上がり野郎をにくい位、なりきって吹き込んでる。やられたね。大正解。
で、この主人公が奴隷の女と逃亡して、デスラーの若い頃みたいな警察幹部やら、盗賊の娘やらとからんでって。アリババとか、おなじみのお話が次々と出てくる。
なぜか、テレタビーズ?みたいな倦怠夫婦妖精まで出てくる。
後半は若い男女の恋物語に、豪華でど派手な秘宝比べに、バベルの塔まで引っ張ってくる。
イロっぽい暗示シーンも、盛りだくさん。
抽象化曲線、くにゃっくにゃっ。
塀の落書きみたいに、いびつな、肥大化した曲線だらけで。
ところどころ、笑っちゃう位、しつこく一杯出てくるんだよ。
バクダッドの都が実写ミニチェアだったり、荒波のシーンがフィルムだったり、<アニメラマ>というだけあって、いろいろ実験、工夫を凝らしてる。
技術は30年前のだし、粗雑な感じの絵も入ってるけど、なんていうか、情熱が絵と勢いに出てるんだよな。
今のなめらかなアニメに無い、何か別なものが見えてくる・・・そんな感じがするなあ。
娯楽系・アート系双方、映画ファンが観る価値は十分あるぜ!
あれに比べると、次の「クレオパトラ」は・・・
ちょっと、いただけねえなあ。
オープニングで未来都市特撮、でタイムマシンならぬ魂移動装置作動、まではいいんだけど。
実写人物の胴体に、ペタンコなアニメの首乗っけて日本語で口パク、って・・・何だか、間抜けだ。
外国人俳優呼んで吹き替えた方が、早い気がするんだけど。
とにかく大雑把すぎるんだよ、絵柄が。
人物芝居パートが学研の<ひみつ>図解漫画シリーズみたいで、ゆるいの。製作予算と時間が無かったのかな。
筋も、エジプトの秘術?で整形変身したクレオパトラ(声・中山千夏)がシーザー(ハナ肇!)やアントニウス(なべおさみ!なかなかに好演)をエジプト国のために余儀なく色仕掛けで篭絡(ろうらく)して、でもシーザーの正妻には負けて、なんて話じゃねえ。
こっちは、さっぱり盛り上がれない。
でも、笑いの部分は結構愉快。
ピンクパンサーみたいな豹がドジやったり。
他の人気漫画キャラが脈絡無くゲスト出演したり。
(なぜこんな所に、xxイやxxx男やxxxノ介が!)
ローマの凱旋シーンが古今東西の美術絵画だらけになってたり。
ブルータス、お前もか!シーンが歌舞伎になってたり。
東宝クレージー映画みたいなドタバタの部分は面白くて、つい吹きだしちゃうんだけど。
その笑いの効果がお色気シーンの繋がりを寸断してて、中途半端な印象になっちゃった。
両方一度に、はちょっと欲張りすぎだったかな?
迫力が違って、びっくりしたのが「哀しみのマラドンナ」。
前の2作からがらっと雰囲気が一転、アダルト少女漫画?調で。
ヨーロッパらしき中世の貧乏村、税金取りがキビし~い鬼領主夫妻。
彼らに主人ともども、いたぶられまくった、村の新婚娘ジャンヌ。
荒れた魂を欲する悪魔にも夜な夜な蹂躙(じゅうりん)・誘惑された挙句、引き換えに金銭や人心を操る力を受け取り、徐々に領主をもしのぐ<魔女>的存在と化してゆく過程を、密度濃厚に渦巻くアニメ描写、スペクタクルな動きの中に、それこそあられもなく、勢いづいたまま、なだれ込むように活写してゆく。
・・・としか、言いようが無いね、これは。
話は暗いけど、相当な秀作だよ。いや、暗いからこその秀作、っていうか。
人間の抱く心の闇に、じっくり、じんわりと迫ってるんだ。
濃密でない、明るめの渦の所だけ、ちょこっとふざけて見えたけどな。
勿論、裸女とイメージ乱交?シーン、満載だ。
ああ、もう、観てるだけで、満腹じゃ!だったよ。
欲情先導型の悪魔と、封建的秩序支配にこり固まった重税領主。どっちもひでえワルだぜ、まったく。
それにしてもまあ、悪魔の力を身に付けた悲劇の女が、その力で領主よりも恐れられたり、逆に人助けをして、村人達に感謝されたりするというのは・・・何とも、皮肉なもんだな。
一体何なんだろうね、<正しい人間>って。わかんなくなってくるよ。
しかしな、それをそのまま、フランス革命の女傑につないじゃって、いいのかなあ?
じゃ、もしかして、あいつも・・・デビルマン・レディー!?なんてね。
で、レイトショーのビーチ・コメディー、「山田広野のサバイバル・ビーチ」。(注)
大入りの初日舞台挨拶でいきなり、イエロー・ビキニ姿の女優3人とキンキラドレスの女優?が、山田広野監督やライフセーバー姿のホリケンさんと一緒に出てきた。後、ゴリラ役?の男優一名。
(まあ、これで大体、どういう企画かはわかるよな・・・?の声)
監督にとっては初の、トーキー長編だそうで。
沖縄のある島で、真夏に2週間ロケしたらしい。監督は一時ぶっ倒れるわ、虫は出るわで、それなりに大変なロケだった模様。
ご苦労さんです・・・。
「今回は毎日しゃべりに来なくていい作品だから、気が楽ですよ」とは、活弁士らしい監督の弁。
しかし、翌日のトリウッド活弁予定はしっかりと、PRしていた・・・。
第一話、と出た時点で、客席は既に爆笑の渦。
で、映画の内容は、まさしく、たとえようもなく、無内容という内容!
なぜ、一同が流れ着いた無人島の海岸に、歩き回るためのサンダルが、もう置いてあるんだ?
なぜ、メッセージ・ボトルに、七夕(たなばた)みたいなお願いを入れるんだ?それがなぜ、あっさりとかなうんだ?
なぜ、互いにワxxを取り出すと、そんなに長いんだ?
なぜ、ごく一部だけが、立体3D化してるんだ?!
(配られた3D眼鏡をどこで掛ければいいのか、わかりにくいな~、の声)
虫を集めてくるのも、単にヒロイン達、からかってるんじゃないの?
などなど、意図されたいい加減さ、いたずらっ子精神にみちた、冒険というよりはきわめてのんびりくつろいだ、バカンス的内容。
金ぴか美女(!?)を観て、一人だけ舞台挨拶でキンキラ衣装の意味が分かった。あのシーンには大笑いだったな。
浜辺でラリって、ハイスクール・パーティーしてるような、のどかなサバイバル・コメディーだった。マル。
じゃ、又な!
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2007/01/07(日) 15:23:12 |
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秀の、ぼやき。
第28回<ヨコハマ映画祭>の前売りチケット、取れなかった。
昨日の午前10時より発売で、即、売り切れ・・・
この様子では当日行ったとしても、すぐ完売だろう。
がっかり。早すぎる。例年よりもずっと。
帰宅して検索してみたら、<YAHOO!チケット先行販売詳細>という項目があって、
<先行抽選販売受付中,20067年12月28日(木)6:00PM~2007年1月5日(金)9:00AM. アラートに登録・・・>云々、とある。サイトは既に<終了または削除>となっていた。
要するに、一般向け解禁以前に、一部サイトで抽選を行なうような人気沸騰状況だった、ということである。
そこへよくある<土曜の集団おさえ>が加わった、とみた。
おそらくは、「フラガール」「ゆれる」出演者一同の人気によるものだろう。
ああいう、ストレスのたまりそうな映画は、あまり、上映会のトリにしてほしくないのだが。
かつての<洋高邦低>時代にも、「Love Letter」のヒットと主演コンビ受賞で、前売りチケットが異常な早さで売り切れていたが、多分それ以来ではないか?
あのときは、代わりに会場近くの劇場で「Shall We Dance?」を観て、ヒロインの冷たさにこっぴどく打ちのめされ、不快な思いをして帰った。
上映前の予告編コーナーではリメーク版「八つ墓村」の予告が出ていて、場内の女性客達が一斉に、「え~、あれはトヨxツさんには似合わないよ!」とつぶやいていたのを聞いている。
以来、話題作・ヒット作であることと、自分にとっていい作品、面白い作品であることとは必ずしも一致しないのだ、という前提を常に踏まえつつ、すべての映画を見つめる決意をより強く固めたものだった。
(それも又当時の、若さゆえ・・・?の声)
邦画の良質作が見直されているのはありがたいのだが、スクリーンで観て舞台挨拶も、と望む一映画ファンとしては、複雑な心境である・・・。
今年前半期の楽しみが、これで確実に一つ、減った。
さて、一観客としての選択権を行使しに、今年も又、出かけるとするか・・・。
以上。
[秀、年頭でがっくりする]の続きを読む
2007/01/07(日) 10:02:44 |
劇場用映画
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今日より、仕事始め。
主水日記。
1/3(水)夜、むちゃくちゃなドラマを観た。
フジ系、「明智光秀 神に愛されなかった男」・・・。
民放ドラマでブレイク後に、大河ドラマを経験した人気俳優達を配したキャスティングは、着想としてはなかなか面白い。
元・前田利家が光秀役、元・山内一豊夫婦ドラマの<くの一>が妻・ひろ子役、その元・山内一豊が信長役、元・「北条時宗」重臣役の秀吉・・・。
バイオ・フィードバック、してやったり、と言うべきか。
しかし。
光秀役が40代、妻・ひろ子役が20代の入り口、息子役が<どうでしょう>大泉・・・というのは、さすがに無理があった。
子役も居るとはいえ、これでは養子縁組か、再婚一家の兄弟姉妹にしか見えない。
(戦国版「役者魂」一家?の声)
全体に、細い印象の武将が並ぶので、重量感にやや乏しいのも難点。
筋立ても、信じられないほど、無茶。
信長が断行させた叡山焼き討ちへの違和感、仏を救いに崇める妻が泣く、あたりまでは理解できるのだが。
農民出身の出世頭たる秀吉が、光秀に「わしも戦争はいやじゃ」「田畑が荒れる」「早くいくさを終わらせたい」と言ったり。
おいおい、あんた、そのいくさで功名立てまくってきてるじゃないか!しかも信長の指示と作戦に従って。
じゃ、いったい何でその後、明国進出計画や朝鮮出兵を行なったの!?
(信長と同じじゃん、結局・・・の声)
一方、主役の光秀は戦場で、「刀抜け!向かってこなければ斬る!」と叫んだりする一方で、敵味方問わず兵の怪我を手当てさせたり、まるで赤十字。
信長に利用されてばかりで敵将たちに密書を送る、神経質でキレ気味の足利義昭にまで「きれいごとを申すな!」と言い放たれる、光秀。
戦国時代の武将にしてはちょっと、博愛的すぎる?印象。
海外進出優先で国内事情を軽視しはじめて暴走、周囲も止められない信長。
部下にバイオレンス振るいつつ、重臣達や森蘭丸の前でオルガンを弾きながら戦略・攻略の指示。
片手間仕事でいくさが出来れば、苦労は無い・・・。
もう信長の暴走についていけない、誰かに後を継がすしかない、と思いつめた生真面目さのあまり、とんでもない捨て身の策(!)に出る光秀。
これじゃ、まるっきり民話の<泣いた赤鬼>・・・。
主人の奇策と説教?につきあわされた兵や、本家の家族や部下はいい迷惑だ。
「敵は本能寺にあり!」の前に、「逃げたい者は逃げよ!」「生きて世を作れ!」って・・・。
あんな説教をしたら、主人をほっといて大挙、逃げ出しかねない。作戦がすぐ漏れる。
山崎の合戦もろくに描ききらず、いきなり鉄砲で決着。
そんな・・・むちゃくちゃでござりまするがな・・・。
秀吉の台詞にあった想いの果てに連結しているはずの<太閤検地><刀狩>等の字幕も、この展開の後では、とってつけたようにしか映らない。
琵琶湖畔や海岸を写した流浪シーンなどが美しく撮れているだけに、この設定・展開の不徹底さが、残念でならない・・・。
以上。
2007/01/04(木) 21:07:53 |
時代劇
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仕事人・銀平の日記。
さて、毎年恒例、1月2日14時より、テレビ東京系の10時間時代劇。
(かつては昼より12時間、だった・・・の声)
これ、半日で全部観てる人って、どの位居るの?
今年は「忠臣蔵 ヨウ泉院の陰謀」。
(ヨウの字が出ない!ぶつぶつ・・・の声)
人形浄瑠璃を鑑賞する、浅野の殿様の未亡人登場シーンより始まって。
なんと、最初の15分間で・・・
浄瑠璃ナレーションと縦字幕入りで討ち入り、一同切腹まで全部やっちゃった。
大筋全部終わった。早い!
で、いわくありげな女性3人が再会。
これが赤穂浪士の吉良邸討ち入りより、10年後。
どうやら彼女達が、赤穂浪士の討ち入りに際し、その準備段階で、様々な根回し、裏手回しを行なっていたのでは?という設定のドラマらしい。
つまり、お上の不十分なる御裁断、政策に対する復讐心から妻が動く、という視点で回想に入り、ドラマは進行する。
と、裏技「巧名が辻」みたいな着想はユニークなのだが・・・
いかんせん、討ち入り以外では目立ったアクション・シーン、泣かせるドラマ・シーンが少なく、かったるいのが難点だった。
主要人物達の手による、かなり遠大なる作戦遂行劇であるにもかかわらず、どうも、心にひっかかるものが少なく、感銘が思っていたよりも、薄い。
まず気になるのが、浅野の殿様の設定。
周囲の子作り要望等からくるストレス説、を強調しすぎ。
あれでは感情移入が、やや難しい。
どうしてもヨウ泉院の市中触れ回り作戦、大石内蔵助・大老柳沢吉保らの腹芸的御対面、策謀、等のドラマが、全体の中心になるから、そういう<定番>移入型の芝居にはなりにくいのだ。
そして何とも、全体的にドラマとしてのカタルシスが薄い。
いまひとつ、ここぞ、という所でどうも盛り上がらない、そんなもどかしさを感じさせられた。
ヒロインの二役・入れ替わり芝居も、同じOL(?)が二面性を見せているように見えていて、あまり効果を挙げていない。
おそらくこの辺にも、情感を十分に喚起しきれないでいるもどかしさの一因が見え隠れしている・・・。
演じ方の問題が、あるのではないか?
しかも、有名エピソードの省略が目立つ。
脱退組・煩悶自決組などの話も、時間内にもっとちゃんと描けるはず。
堀部安兵衛・弥平らの血気にはやる様と、ユーモラスやりとりとを随所に入れているので、何とか<やる気>らしさを維持してはいるのだが・・・。
(あまりのかったるさに一時中座し、近所で初詣を一つ済ませてきた。こんなことは異例である。)
更に、メイン・イベントたる討ち入り、切腹の後も、ドラマはなお一時間程あるのだ!
大石の<軍略>がいかに正しかったか、がここで又判明するのだが、どうしても後日譚、尾ひれの印象が強い。
その分、火山噴火や地震、大オーバーな将軍母子らのやりとり、左とん平の大工一家と同心の<お犬様騒動>シーンなどが、わずかに、ケレンと見せ場を形成していた・・・。
ラスト近くから、初めと殆ど同じシーンが繰り返されたときは、「番組内再放送だ・・・」とつぶやき、いささか苦笑させられた。
<大人のドラマ>としては、決してつまらなくはないんだれけども、このままだと、ちょっとな・・・という、困った気分になる。
かくて、世にも奇妙な?10時間は終わった。
以上。
2007/01/03(水) 17:10:46 |
時代劇
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今、短い文章しか、一度に送信できない。
よって、特別企画。
一部字余り、季語省略、季節順前後あり。参ります。
<雨あがる ルビーの指輪を 歌う武士>
<フラガール フラフラフラフラ フラガール>
<せきしても ひとり寂しき 京成関屋>
<本八幡 下総中山 西葛西>
<江戸川を 東京川とは なぜ呼ばぬ>
<こわい暮れ 地震 税金 テロ 親父>
<ピグモンと ざしきわらしを 会わせたい>
<依存症 メトロン星人 警告し>
<大渋滞 クレージーゴン 呼んどくれ>
<ごみ袋 マリアカラスは 突つかない>
<紅葉(もみじ)枝 拾うと必殺 政ポーズ>
<葛飾や 両津寅さん あばれ旅>
<スーパーの 袋と矢切の 渡し舟>
<柴又に コスプレ寅さん 見る正月>
<「ひよこ」にて 商標だめなら チャボにせよ>
<やけかじり マロングラッセ 食(は)む聖夜>
<本は本 「只野仁」も 有料だ>
<ごうわくさん 探せば見つかる? ブックオフ>
<株バブル 泡とついえて あわただし>
<パチンコに ムツゴロウなど 合いもせず>
2007/01/02(火) 12:54:39 |
日記
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当ブログをご覧の皆様、あけましておめでとうございます。
本年も多分に、マイペースで行きます所存ですので、何卒よろしく御願い申し上げます。
ところで、大晦日の夜、
紅白の時間にテレビ東京の恒例、<年忘れ歌まつり>の中盤で、
藤田まこと御大が<必殺メドレー>プラス新曲を、
渋く通りのいい声で熱唱していたのを、何人くらい気付いてたんだろう?
冬の花、旅愁、夢ん中・・・。名曲です。
2007/01/01(月) 14:33:45 |
TV
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