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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

赤き夕映えに明日は消えたりなんかしない

旅人、覚書。


P-kraft10周年企画の翌日、2日(木曜)。
シネセゾン渋谷で、「ピクーニャ」の富永昌敬監督、商業デビュー作「パビリオン山椒魚」を鑑賞。
公開終了寸前で、セーフ。ほっ。
平日午後としては、普通の入り。オダギリジョーのファンらしき女性客が目立つ。

「犬神家の一族」よりは「トリック」にやや近い線の探偵冒険劇だが、文芸的ナレーションが長く付けられているのが特徴。
150年生きてる山椒魚の誕生会に、飼っている財団をめぐる一家の因縁、いざこざ。
呼ばれた探偵役がレントゲン技師、というむちゃくちゃな発端からして、ユーモラス。落語のような大ぼら話。
まるでゴダール映画さながらに<音楽切り>を多用、能天気なコメディータッチのドタバタ騒動が、ところどころで軽く弾けつつ、ゆるゆると綴られてゆく。
途中3箇所くらい、目前のシーンが劇中で事実なのか幻想なのか、一瞬理解不能になってしまった・・・。

技師役のオダギリジョー、前半と後半のキャラ、変わりすぎ。
突然猟師(と思ったが、イタリア風の義賊らしい?)とオダギリが静岡弁?しゃべりだすし。
たびたび意味が受け取れなくて、混乱。
その何もかもふっきれたような自由自在な演じっぷり、笑いつつも呆然・・・。
オダギリ、あんた、只者じゃねえよ!グレイト。
クライマックスで悪役をもみくちゃにする主人公達。
もう可笑しくて、腹が痛くなった。
いや-、観といてよかった。


翌3日(金)、池ノ上シネマボカン。
芸社イベント<高岡晃太郎監督特集>。
19時の開始に30分ほど遅れて会場着。

過去作品から上映の比較的少ないものをお蔵出し。
殆どが既に見たものだが、ナンセンスかつなやりっぱなしな展開、独特の画面の揺らぎ、一通り再見し終わる頃には、当方はヨイヨイ・・・。
盟友?ライバル?のどんぱちプロ総帥・小原茂樹監督との対談、解説付きでサクサク進行。
高岡監督からは「脚本途中で、オチを決めずに撮りに入って、後から爆破で締めたりしてた・・・」と、いう話が。
なるほど、予測不能なオチになるわけだ、と一応は納得。
それでもなお、あの奇妙なクレイジー風味は残るわけだが。
三軒茶屋の小劇場でかかった時には反応がいまいち、だった小津家庭劇調(なのか!?)「アリ家族」がどっとウケまくっていたのは、フグ刺し映画?ファンとしてはうれしい限り。
・・・え、と驚いたのが来年2月の<芸社14>(芸社VS芸者、だそうで)がらみ?で出た、次回作予告。
なんとあの、<ゲイモス>ゲームものの続きではないか!
これは楽しみになってきた。
同監督出演の「イチモツ」公開に先がけ、プレイベントの性格強し。
なお、上映作中ほぼ唯一?の新作、新婚監督ご夫婦のベネチア紀行ルポ映像にては、状況を目一杯楽しみつつくつろいでいる御二人の雰囲気を、羨ましく眺めていた。
国際映画祭でデヴィッド・リンチ作品を観損ねての監督落胆シーンの後、その翌朝本人との幸運なる遭遇状況シーンに、「嬉しかったんだなー!あれ・・・」と、眺めつつ微笑す。


連休中、土曜(4日)。
昼間は半日仕事の後、<早稲田祭>を見物に行く。
一部学生映画上映会を見学す。
跳びぬけたものには当たらなかったが、一部脱獄ゲーム作品?のミモフタも無い<技>、刑期の<千年単位>等に、暫時、爆笑す。
夕方、赤黒ステージ・パフォーマンス集団<踊侍>のエネルギッシュなソーラン節踊りと出初式的宙返りアクロバット集団の人気対決合戦に酔いしれる。
開催されなかった数年間を覚えているので、やはりちゃんと開かれていることは、喜ばしい。


その後、中野経由で野方へ直行。

山本拓監督、制作の河野女史らにより6年越しでようやく完成、めでたくお披露目の日を迎えた、約90分の8ミリ超娯楽大作・・・
「イチモツ」を観んがためである。

同時上映は芸社イベントでおなじみの「2001年宇宙の旅」パロCG短篇、「スペースデンキネコ」。
中村犬蔵監督が今回、「イチモツ」の字幕などを担当・協力された縁であった。

そして、メインディッシュの「イチモツ」は・・・
よくぞ、完成にこぎつけたものよ、とまず感心する。


壮烈なる、近頃の自主映画においてはまれに見る凝縮度、エネルギッシュな弾みと勢いに満ちた、「ジョーズ」「エイリアン」等の延長ともいうべき、痛快娯楽ショックシネマに仕上がっていた。
それを都会で爆弾魔が頻発し子どもはギザギザ模様のセーターを着用する<70年代>風の意匠、設定を背景に、モノクロの8ミリフィルム・タッチで見せきる。
しかも、核になる物とエネルギーの集中される焦点が、きわめて明快。
静謐で内向的に、平坦な画面をさらっと流す新作DV映画が多い現代では、こういうエネルギーの凝縮と爆発を、8ミリ画面で真正面から見せるエンタメ作品は、最早貴重ですらある。
昔は結構多かったんだが・・・。

熊本の田舎村、学校新聞班らしき小学生女子達の登場から、映画は始まる。
明らかに大人の女優達なのと、一部に<中目黒>の地名が見えるのは、ご愛嬌。
舞台劇ならばありそうなパターンであるし、白黒画面がファンタジー性のミストを掛けているので、さして気にならない。
そんな些細な齟齬は、以後展開されるダークな饗宴の前に、軽く吹っ飛ばされてしまう。
若手の漫才師氏が老人役になりきって演じてみせていても、自然に受け入れられる位だから、当然だろう。(注1)

東京。マイペース派のはみだし刑事。
(高岡晃太郎その人が、飄々と、かつ汗臭く人間くさく好演している。)
<社会革命>爆弾魔一味を追い詰めながら、説得できず、先輩刑事は大怪我、犯人の一人は爆死。
内臓までのぞく現場シーン、もしカラーだったら耐え難いかもしれぬ。
煙草をけだるそうにふかす一味の長髪女性が、幾分かの印象を残す。

このはみだし刑事が責任をとらされて左遷、くだんの田舎村に赴任。
早速、現場検証と報告書の仕事が来る。
沼の周辺で、集団死亡災害。
しかも、どうやら普通の災害ではない状況。
何かを知りながら隠し、おびえを見せる、地元のある警官。
奇怪な遺留品、糞尿、白骨。
捜査を妨害する、村長の息子達。
キャメラに映った、老人兵士。
隠蔽工作をする地元の衆。
はたまた、その状況を自分達の利益の為に利用しようとする者達。

そして、伝説の怪物・・・
逃げる人間を、襲う。
食らう。消化する。
容赦なし。

ギューン、という音響、マッハのスピード感。
画面のささくれだった質感。
横溢する絶叫。
心理描写、疾走のアクション、相乗。
波打つ。ハイテンジョン化。

すっ頓狂な服装ながら事件究明には生真面目すぎる位のはみだし刑事。
トラウマを抱え人食い亀伝説を恐れ怯える、警官。
戦時中の戦車に迫られる記憶を引きずったまま生きてきた老人兵士。
3人のはみだし人間達・プラス協力者1名が、さらに警察機構や村落社会からさえはみだしてゆき、怪物退治、共闘へと向かうベクトル。
更に、途中参加の一見して能天気な擬似ファーブル博士でさえも、そのベクトルの勢いに当てられて、渋りながらもやがては、彼なりに駆け出す。が、その動きは無念にもせき止められてしまう。
(ブラックな笑いをもともなうが。)
かくて、残った者達がそれを引き継ぎ、臨界点に向かって順次疾走、爆走する。

逃げつつ討つ。壮烈。
彼らは戦地の兵士なのか、木枯らし紋次郎か、はたまた革命戦士か?
否、彼らは一人一人が、おのれの中にくすぶる<何か>をエネルギーと化して、一気に燃え上がらせたいのだ。
それが、主人公達にとっての、<イチモツ>。
クールダウン・タイムや後日譚抜きで、ぶった切る終幕が、むしろ潔い。



上映終了後の舞台挨拶で、生の出演者一同を見たときは、え、あれが子ども役?あの人が老兵役?と、びっくりさせられた。
やはり映画は、玉手箱。マジック、マジック。
打ち上げの酒が、ことのほか旨かった事は、云うまでも無い。



以上。


(注1)0林N彦監督「女ざかり」という、極端な失敗例もあるが・・・。








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  1. 2006/11/05(日) 20:03:50|
  2. インディーズムービー
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