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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

スケバルQ <13> 「チャレンジャー・ゾーン」 

主水日記。


故・黒木和雄監督(享年75歳)を、まったく知らない人に説明するポイント、5箇条。


1・企業PR映画やドキュメンタリー映画演出に、劇映画の要素をしばしば加えてみせたこと。

岩波映画での監督デビューはたしか、電気機関車のメーカーPR映画。
ウール業界のPR映画では、歌手のぺギー葉山をメインにOL風女性達の会話とダンスを交えた、カラフルなミュージカルに仕上げてみせた。
(これ、好きで。アテネ・フランセとフィルムセンターで少なくとも2度観に行った。)
北海道庁のPR映画「わが愛 北海道」では、現地に赴任した男性が北海道のヒロインにあこがれ、「ああ、この子のいる北海道に住むんだ・・・」というドラマ仕立てを導入、お役所を戸惑わせた。
「あるマラソンランナーの記録」ではランナー(君原)の孤独さを強調、ナレーションと音楽でどんよりと重くして、注文した東京五輪関係者達の不評を買ってしまった・・・・。
(あれはちょっとやりすぎ、の声も。)


2・加賀まり子を<蝶々>役にして日本列島を長旅に飛ばす、初の劇映画「とべない沈黙」を撮ったこと。

あれほど、劇映画パートとドキュメンタリー・シーンがごちゃごちゃに入り乱れて、波打ってつながっている作品を他に知らない。
ジャンルの垣根を軽々と越境する面白さ。
魅力的な過渡期作品。


3・勝新太郎、原田芳雄との仕事が多い監督。

この2人が醸し出す男くささが、黒木映画の<顔>になった。
即興的演出論上で勝とは発想が合ったのだろう。TVの「座頭市」や「警視K」などでもよく組んでいた。
「老いたる座頭市」を撮る計画もあった。

黒木映画で原田芳雄といえばATG、「竜馬暗殺」の隠れ住みながらも反抗心旺盛な、ユーモアをまじえた竜馬像。ええじゃないか!が強烈。
続く「祭りの準備」の兄貴役、荒くれた存在感。駅のシーンが決定打になった。(あの映画で初めて、田舎の若者が上京したくなる気持ちをようやく理解した。)
以後も「スリ」「父と暮らせば」まで、長いコンビ。

原田・勝ともに出たリメーク版「浪人街」は、反抗メンバーの殺陣が共同集中式で無く、位置的にバラバラで、時代劇ファンの大半が望む殺陣とは違っていたのがやや不満だった。


4・劇映画「キューバの恋人」を殆ど脚本無しで?津川雅彦(船員役)とキューバ・ロケに行き、現地の素人少女をヒロインに起用して、突貫工事で撮り上げたこと。
セミ・ドキュメンタリー・タッチとはいえ、よくそれで、あんなにちゃんと仕上がったなあ・・・。

5・「TOMORROW 明日」「美しい夏キリシマ」「父と暮らせば」が<戦争レクイエム3部作>と呼ばれること。

暑くて青い空、あの終戦の日ってこんな感じ、という叙情入り風景画の「キリシマ」。
他の2作は大分、舞台演劇寄りになっていた。
ともあれ、生涯現役のまま、唐突に幕は下りたのだった・・・。


以上。
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  1. 2006/04/14(金) 01:58:35|
  2. 劇場用映画
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