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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

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シネマ人・温もる(共作生誕篇)

主水日記。


10/16(日)昼間の部。

<600秒>結果発表終了後、ただちにDASHで移動。道中軽く昼食、パンを2個ほおばる。

13時より京橋・映画美学校。
5人監督新作合同上映会
オール新作ということもあって、驚くべきほどの・・・大盛況。
出品の松田彰監督自ら入場整理に奔走していた。エネルギッシュ。
5人の監督とスタッフ、座席探しに上映に出演者・スタッフとの舞台挨拶に受付に、と大車輪。子役もいて可愛らしく挨拶あり。
補助椅子、座布団が出るほどの混雑。着席出来たのは幸運なり。
男女層半々、若々しい印象。知人・非知人入り混じり、休憩中のロビーでも皆、近況と映画談義に華が咲く。まさに秋の紅葉大集合。
(なお、この近代レトロで小粋なロビーは<刑事まつり>の一部作品ロケで、ほぼそのままの状態で使用されていた。)
また、この日は同校内地下ホールにおいて松田彰監督「お散歩」(既述)、および飯野歩監督「窓」(既述)のノンストップ上映も行われた。


Bプログラムより拝見す。

石倉慎吾監督「ALICE」(38分)

「不思議の国のアリス」の現代版、という触れ込みだが・・・
ど、どこが!?と戸惑う程に結構エロティックで深刻げな男女仲。
髭の8ミリ撮影アート青年とロングヘアー女性、ヨーロピアン風アパートメントにて共同生活する世界。性的興奮にこだわり心は二の次、みたいな事云いながらもそれなりに心も通じ合っている様子。
なんとなく御茶ノ水か日仏学院周辺にいそうな感じの2人。2人のため世界はあるの、の世界。要は寂しがり屋なのだ。
そこへ暫時の平和を乱すかつての男が女への支配欲むき出しで来訪、楽園に危機が。別れと再会のシビアな対話劇。
紅い照明、蝋燭、血糊、部屋装飾の美術が御茶ノ水系?アートっぽさをいよいよ強化する。クラシック音楽が急に切れる所など昔のフレンチ・ヌーベルヴァーグ映画そのもの。
全体的には芝居にやや硬さが残るが、画面は落ち着いてスタイリッシュ。その分、別れの予感に思いつめたある女性の荒れる形相を回想するモノクロ場面が逆に生々しく見える。
ヒロインが缶詰を落とすシーンの表情に何とも、切なさがこみ上げる。
ラスト、自分達だけの世界から外へ出てゆく2人だが、多分その先にも2人だけのALICEな世界があるのみなのだ・・・。
主演・田口志麻の微笑みながらも哀しげな、あの表情を観るためにある、といっていい映画。


松田彰監督「冬の幽霊」(43分)

出た!またしても<ゆうれい>シネマである。
(どこでも皆、撮りたくなるもんなんだねえ・・・の声)
但し、こちらは「海とユニットバス」にやや近い感じの設定で、かつずっとコミカルな状況の喜劇をも狙っている作品。そしてちょっぴり泣かせる小粋な味わい。
男の幽霊には靴を履いた足が付いているのだ。

主人公女性は自室内での非常にあほっぽいドジ(あるある、でちょっと笑える)で片足をくじき、ギプス付きで休んでいる。
かつて恋人をバイク事故で亡くしたヒロイン。その後別な男性と婚約、後は挙式待ちなのだが・・・
こともあろうにそこへ、元カレが幽霊として<なんとなく><自然に>出現し、ヒロインは大慌てする。そこらがまず笑わせる。
さあ、観ているあなたはそこから既に、この「ウルトラQ」な世界へと入ってゆくのです・・・。

彼が劇中の約2名にしか見えないし話し声も聞けない、という「もーれつア太郎」の八百屋親子的すれ違い状況がヒロインを大いに悩ませる。
彼の状況把握とその後の意思(遺志?)に理解を示してその母親や自分の今の婚約者を見せようと協力、奮闘するも、その残酷な状況が行く手をはばみ、悲喜劇が派生する。
しかも、気付けに一杯、と劇中人物が持ってくるスタミナドリンクの商品名を間違えるほどに動転しているのだ。
かくてヒロインは婚約者のある<きつーい>一言により、今までの自分は彼の事を、今の婚約者の事を、また彼は自分の事を、どういう方向性でもって想っていたのか、本当にちゃんと想いを理解しあっていたのだろうか?と一同の前で悩まされる仕儀に相成る。
物理的かつ心理的、二重構造のコミニケーション・ギャップ。それこそがドラマを形成し、ある浅からぬ感銘を与える。夕陽の美しさがその感銘をより補強する。
「餓鬼の季節」「鍋の中」のぐにゃぐにゃした人物の運動性や画面描写面は「お散歩」を境に大分薄れた印象だが、そのぐにゃぐにゃは人物心理描写の中においてはいまだに、ちらっと顔をのぞかせている様にも伺えるのだった。忘れたころに又ぬっと、正面から躍り出てくるのかもしれないが・・・。
場内反応で一番笑いが多かった作品。まずまず成功。


Bプロ、以上。
Aプロは後刻(予定)。
休憩。


引き続き、Aプロ。


内田伸輝監督「温もり」(31分)

監督自身が別れた元恋人のアーチスト嬢に再会し、インタビューを兼ねて彼女の個展をキャメラに収めにかかる。
会場は新宿ゴールデン街の某バー内、らしい。
Tシャツを多数吊るしてショップならぬ屋内を飾り付けるのも彼女にとっては一つのポップアート、なのだろう。正直よくわからないのだが。後はどう観ようとお客さんの自由、ということだろう。
(そういう意味だったらば駄洒落みたいな冗談フレーズ・プリントだらけの某Tシャツ店も既にある種アートの発生、なのかも・・・?)

つきあっていた<あの頃>の事を回想して話し合ったり、「なぜ今頃撮ってるんだろ・・・」などと自問自答したり、「もうつきあうの無理かな?」などとモーションをかけてみたりする。
半ば男の未練をともなうセルフ・ドキュメンタリー。
監督自身の思い入れたっぷりに、主観を中心にしたキャメラ視点とナレーション。当然ながら接写、対象人物のアップが多い。
まあ、よくある定番パターンの撮り方だろう。
カメラを回している以上ああいう質問も、ある程度はあらかじめするつもりであったはずだろうし。全部かどうかはわからないが。

同じアート出身がきっかけで仲が始まって、結構長く続いて、でもお互いに自由時間の制約が出来てきて、ベクトルが別行動にシフトしていって・・・と、これもまた、よくある話。
案の定というか、アート嬢には既に新恋人がいて、男性サイドはそれを祝いながらもおそらくは複雑な心境・・・。
「兄弟みたいだね」という女性の言葉が時の経過を物語る。
この一言で、小生にはもう十分なり、大体わかった、という感じであった。温もり、いうよりはちょっと切ない。
内田監督の心理描写要素もまた、松田監督とはまた少し違った形でぐにゃぐにゃしているのかもしれない・・・。
その本質は次回作「かざあな」あたりでは、更に鮮明に示されるのだろうか。


飯野歩監督「キャッチボール」(20分)

ドラマも画面も一番シンプル、無駄なくすっきりしていて、かつ一番素直におもしろかった小品。

家具も何も無い広い部屋に赤いゴムボール一個、女が一人ゴロゴロ寝てボールを扱っている。戸口から男が湯の入ったカップそばを持って入ってくる。男にボールを投げて、半ば強引にキャッチボールを始めさせる彼女。
延々と続くキャッチボールの中、次第に女が引っ越す寸前で男が引き止めたがっている様子が見えてくる。やがて・・・。

男と女の心理的不安感、揺れ動きが弾むボールの移動にシンクロしてゆき、見えてくるドラマのすべてをキャッチボール自体に集約され、このきわめて小さな映画全体が心理的、かつ物理的運動性をはらむ。
ボールの運動それ自体が男性側、ヒロイン側双方の気持ちを暗示して垣間見させる。決意、未練、悩み、寂しさ、残る迷い・・・等。
(奥田徹の脚本による効果が大きい、と推測される。)
ヒロイン役・鈴木明日香嬢の微妙な表情変化とシーンの細かい編集、つなぎ方がその運動性にうまく寄与している。

たとえば石出裕輔監督の前作「ユウナのちいさなおべんとう」では、終盤のランニング・シーンと人物心理のベクトル、運動方向性がシンクロ(一致)するときにささやかな感銘がもたらされる。
一方この「キャッチボール」では、心理的不安を抱えた2人の表情変化とボールの往復運動とがシンクロになって一体化し、双方とも反復されるが故に観る側にとっての心の揺れと運動性とが同時に生じ、増幅されていく。

右へ左へ、外へ中へと揺れ動かされて、どうなるんだ、と眺めていたらば・・・
終盤の台詞にえっ!となる観客一同。で、さっと締める。お見事。
一本獲られた、という印象。


ラストはその石出裕輔監督、「母への手紙」(34分)。

かなり普通に、丁寧に、淡々と、住宅街で交流する女系家族の一日を描くドラマ。
主人と死に別れて以来、家事と趣味にますます没頭している母。(声楽家の人が、いかにもいそうな感じの母親役をやわらかい雰囲気で演じる。)
長年同居生活してきた母親に彼氏との結婚意思を告白しようとする長女。
先に結婚し子供を持っている次女。

この女系ホームドラマ的状況設定ならば、その後語り手である長女が経験する心理的葛藤や通過儀礼はおおむね、察しがつく。
親族に女系家族がいる人ならば心情は大体理解できることだろう。親への告白というものは概して思い切りとタイミングが必要なひと仕事、なのだ。
(後から石出監督に聞くと、その辺は多くの見聞からよく把握していて、後は各自でおもんばかれば、位に話を組み立てている、という。)
画面は小奇麗だし、ドラマとしても程よく手堅くまとまっている。

正直、これが5本中で一番体感時間が長く感じた。   
どちらかというとOL・主婦層向きで30分から1時間枠の地上波TVドラマで見せるべき内容なのと休日の昼下がりのごとく?ゆっくりゆるやかなテンポのせいだろう。意外性や驚き、運動性などに乏しいのだ。43分の「冬の幽霊」よりも長く感じる。
一般的ファミリー層のお客さん達が普通に感情移入するのには、一番入りやすい作品だとは思うのだが・・・。
でも、心温まるちょっといいお話なり。都心よりは市川イムイムや電丼佐倉等の上映会に適しているのではないだろうか。


Aプロ、以上。









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  1. 2005/10/23(日) 11:36:18|
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