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シネマ旅の途上にて

自主映画ウォッチャー、アWorkerのブログ。

日常内の疾走 

主水日記。


先週やっと、洋画を観た。
多分「カンフーハッスル」以来?の封切外国映画。
で、なぜか・・・「ミリオンダラー・ベイビー」。

予告編である程度は予感していたが。
ボクシング界ヒロイン伝説だった。
ヒラリー・スワンクの弾む動き、のびのびとした演技とリズム、躍動感。圧倒される。
それとモーガン・フリーマンの人間くささを観るための芝居。
元ボクサーとして育てるイーストウッドのたくましさと脆さ。
成長、師弟愛、快進撃、恋愛、挫折、最後の誇り。そして痛切な幕引き。
定番ながらもかなりのヘビー級。ノックアウトなり。
なんだか<花道>って邦題付けたくなった。
こうした人間くささがちゃんと描かれてる作品を、ハリウッドはもう少し増やしていただきたい。リメーク作品より先に。


で、邦画はどうか?

羽住英一郎監督「逆境ナイン」

これはその面白さの大半を原作野球パロ漫画の展開に負っているので筋は書かないが、いかにも嘘っぽいキャラ設定に<偶然>と<勢い>と<もののはずみ>が加わり、それだけで万事が転がっていく。
あえて言えば少しわかり良すぎて沸点の低い、ゆる目の笑いなのが難点だろうが、結構笑える。これは笑えた者勝ち。
CGのでかい文字やスロー合成などコミカルシーンに大いに腕を振るっている。(そういえば羽住監督、TVドラマで「できちゃった結婚」やってなかったっけ?「海猿」の水槽シーンとか、ああいうのが得意みたい・・・)
しかも。
なぜか年中泣き顔のキャプテンがガオ・シルバー。
なぜか校長が仮面ライダー1号。
なぜか選手の中に「仮面ライダー響鬼」の少年。
なぜかドラマ版「電車男」の妹役がマネージャー。
でも田中直樹のにわか監督先生が、サブキャラ一、目立つのだった。
「それはそれ!これはこれ!」言いきっちゃうのが潔い・・・か?
観ないよりは観といたほうがいいよ、と。
で、目下のライバルは・・・もしや「クロマティ高校」?



三木聡監督「亀は意外と速く泳ぐ」

これも、笑いの沸点をやや低目の位置に見立てている印象。
軽いコント劇調芝居の羅列が客席の女性層中心にクスクス笑いを呼ぶ。

ロケ中はおそらく受けてたんだろうけども笑いがやや上滑りしてるシーン(<ぬるぬる>の一景とか)も無きにしもあらず、喜劇的イメージの飛躍が思っていたよりもかなり淡いのだが、まあ全体的には<そこそこ>笑える内容。

台詞中にも<そこそこ>感がいっぱいで、いろいろとくすぐっている。
ただ<目立たない>ためにのみ涙ぐましい程の精力を集中する自称<某国スパイ>たちの滑稽な行状ぶりが見どころ。もう気の毒な程。日常のお買い物が視点を変えただけで妙に新鮮だったりする。そこから可笑しさと若干の哀しさ風味が生じる。ラーメン食べる哀しい気持ち、という昔の英単語暗記法のごとく。

何しろ上野樹里の主婦(もう主婦なの?ついこないだまで女子高生役だったのに・・・の声)が主役のライト・コメディなので、スパイ小説的設定にもかかわらずかなりのどかな空気、のんきな世界。ストローで遊ぶ、などの暇つぶしネタが場つなぎ的に散りばめられる。(結構ウケている。)
蒼井優(蒼井そら、ではない)のやたら派手でファッショナブルな友人との対比もユーモラス。この対比の可笑しさとコンビネーションがもう少し展開上広がりを見せてくれれば、と惜しまれる。
芸達者俳優同士の掛け合いは概ねノリがよく、温水洋一のパーマ屋、岩松了&ふせえりの夫婦漫才風会話、水道屋のトイレ詰まり騒動、福引き、地引き網、伊武雅刀と嶋田久作の駄洒落、岡本信人のお湯、などなど、それぞれのコント・シーンにそれ相当の舞台劇、ないしはバラエティー的面白さを認めつつも、映画としては画面全体の動きにリズムが無く、のっぺりしているのにやや不満が残る。部分部分はおもしろく観れるだけにちょっと勿体無い。
部屋の内装や小道具、亀の甲羅など美術が明朗なのは気持ちが良い眺め。
ラストにもうひとオチ、と望むのは欲張りすぎだろうか。


園子温監督「夢の中へ」

(勿論、相川興太監督の同名短篇とは別個の、劇場公開長編なり。念の為)

上京して劇団活動、苦労の甲斐あってようやくテレビドラマ等で知られ出した主役俳優氏。故郷の父からは「<釣りバカ>早く出ろ!」などと電話が来る。
だが当人は都会で俳優仲間や演出家(ここにも岩松了と温水洋一が!)とお酒呑んだり、華麗なる?女性遍歴やイターい病気の疑い、などなどで女優達と大モメしたり、と大忙し。気の休まる暇が無い。
しかも最近、二重三重の夢を見る。その夢の中で彼は刑事が取調べ中の容疑者だったり、出発を待つ集団テロ実行犯一味のメンバーだったり。周囲の者達もどこかで観た者ばかり、という押井守風ワンダーランド。三つの世界の間で時折、各人の役割がめまぐるしく入れ替わり記憶も混濁してくる。
そんな中で現実?の彼は同窓会のため故郷へと向かうのだが、夢の中でもうつつでも、怪しげな男女乗客やら酔っ払った水道屋やらがからんできてわやくちゃに・・・。

登場人物たちが俳優・女優役だらけとあって皆、騒がしくなりふり構わぬ演技合戦、酒宴シーンも加わって終始、アドリブ放し飼い状態持続。猛烈なエネルギー発散の連続に押され呑み込まれクラクラに。
謎の乗客役・オダギリジョーと演出家役・村上淳が特にものすごい。あれは誰にも止められない。水道屋の「チ00ーン!!」連発にはさすがに気恥ずかしさが。
彼らの芝居を受け続ける主人公は周囲の喧騒に振り回されつつ延々、自問自答を繰り返す。じたばたどたばた。
主人公と妹の対話なども「自転車吐息」その後、という感じで原点帰りの印象。
おなじみのギタギタ男性像、風景イメージをも巻き込むエネルギッシュな疾走感も健在。
騒々しい中にいい歳になった男性俳優の哀歓がにじむ。
男・マラソンランナー園子温監督、いまだ猛驀進(ばくしん)中ナリ・・・。


以上。 [日常内の疾走 ]の続きを読む
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  1. 2005/07/22(金) 23:41:26|
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